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ターゲティングとは?意味と3つの手法、6Rを使ったやり方を解説Column

2025.09.18

ターゲティングとは?意味と3つの手法、6Rを使ったやり方を解説

「世界中の人に必要とされる製品を提供したい」こんな企業キャッチコピーを見たことはないでしょうか?

志が高く素晴らしいキャッチコピーですが、この企業理念を自社のマーケティングに落とし込むのは賢明ではないといえます。その理由は「ターゲットが不明瞭だから」です。

不明瞭なターゲティングは自社製品のマーケティングの方向性を見失う危険性を含むほか、顧客側からしても「なぜそのブランドから製品を購入する必要があるのか」が分かりづらいというデメリットがあります。

そこで本記事では、マーケティングにおける「ターゲティング」の意味とメリット、3つの手法、6Rを使ったやり方、BtoBでの例や注意点までを解説します。

この記事のポイント

  • ターゲティングとは、細分化した市場(セグメント)の中から、自社が狙う顧客層を選ぶこと
  • 手法は「無差別型」「差別化型」「集中型」の3つ。経営資源が限られる企業は集中型から始めるのが基本
  • どのセグメントを狙うかは、6Rで市場の魅力を評価し、3C・SWOT分析で自社が勝てるかを確かめて決める

ターゲティングとは

マーケティングにおけるターゲティングの意味

ターゲティングのイメージ

(出典:Search Engine Journal)

マーケティングにおけるターゲティング(Customer targeting)とは、自社製品を購入する可能性のある潜在顧客をそれぞれの特性により分類し、分類した中から自社製品にマッチすると思われる層に狙いを定め、その層に最適とされる方法や戦略を用いてアプローチすることを言います。

英語の「target(的・標的)」が語源で、文字どおり「どこに的を絞るか」を決める活動です。

ターゲティングを行うメリット

ターゲティングを効果的に行うことで、以下のような効果が期待できます。

特定層の潜在顧客へ深く刺さるアプローチができる

自社のブランドに対する見方や、必要とする価値観は顧客によってさまざまです。特定の人が共感を覚えるストーリーやスローガンに対して、別の層は全く違った共感の仕方をすることもあるでしょう。かといって、全ての人に好印象を与えることを目的とした「広く浅い」アプローチでは、顧客一人一人に与える満足度も低くなってしまいがちです。

より細かくターゲティングを行うことで、特定の層のニーズを正確に把握し、その層を十分に満足させられるような効果的なアプローチ方法の策定が行えます。

より見込みの高い潜在顧客へアプローチが可能

ターゲティングでは、そもそも自社製品を購入する可能性の高い潜在顧客に狙いを絞ってアプローチを行います。そのため広い層に向けたマーケティングと比べ、より見込みの高い潜在顧客へのアプローチが可能です。

自社製品にマッチする見込みの高い潜在顧客に絞ってアプローチを行うことで、コンバージョン率や受注成約率のアップに繋げることができます。

自社ブランドの差別化ができる

他社が目をつけていない、もしくは苦手とする層にターゲティングすることで、同じ業界にいるライバル企業との明確な差別化を図れます。

例えば、「同じ〇〇でもよりスタイリッシュなのは□□」といったように、特定層に刺さる明確なブランドイメージの構築も、ターゲティングに期待できる効果のひとつです。

顧客ロイヤルティを高められる

より明確なブランドイメージの構築と他社との差別化ができれば、それらに共感する一定の顧客層の自社ブランドに対するロイヤルティを高められるでしょう。

特定層の顧客の満足度を高め、「〇〇を扱うブランドは多数あるけれど、自分の価値観に合うのは□□」と感じてもらうことができれば、自社製品を再度購入してもらう可能性が高まり、結果として顧客維持率を高く保つことにつながります。

自社製品の改善や新製品の企画につながる

より細かいターゲティングを行い、特定層の満足度を向上させるようなアプローチを模索していると、その層が抱える「悩み」や「課題」を新しく発見できることがあります。

新しく発見した課題を解決できるように製品の改善もしくは新製品の開発を行うことで、その層の顧客をより一層満足させられます。ほかにも、同じ課題を抱える別の層に向けたアプローチが可能となることにも期待ができ、結果としてより広い層への売上げ拡大につながるかもしれません。

セグメンテーション・ポジショニングとの違い

STP分析(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)の流れ

(出典:Oxford College of Marketing)

ターゲティングは、「近代マーケティングの父」とされるPhilip Kotler(フィリップ・コトラー)氏が提唱したマーケティングのフレームワーク「STP分析」の2つ目のステップです。3つのステップは、次のように役割が異なります。

  • セグメンテーション(Segmentation):市場や顧客を、共通するニーズや属性で細分化する
  • ターゲティング(Targeting):細分化した市場(セグメント)の中から、自社が狙う市場を選ぶ
  • ポジショニング(Positioning):選んだ市場の中で、競合と比べた自社の立ち位置を決める

つまり、セグメンテーションは「市場をどう分けるか」、ターゲティングは「分けた中のどこを狙うか」、ポジショニングは「狙った相手にどう見られたいか」を決めるステップです。順番に進めるのが基本ですが、ポジショニングを考える中でターゲットを見直すなど、行き来しながら精度を高めていきます。

各ステップの詳しい進め方は、セグメンテーション、ポジショニング戦略、ポジショニングマップの記事で解説しています。

ターゲット・ペルソナとの違い

「ターゲット」はターゲティングによって選ばれた顧客層そのもの、「ターゲティング」はその顧客層を選ぶプロセスを指します。

混同されやすいのがペルソナです。ターゲットが「従業員50〜300名の製造業の企業」のように属性で表した集団であるのに対し、ペルソナは「その企業で情報システムを担当する40代の課長、〇〇さん」のように、名前や役職、悩みまで設定した具体的な1人の人物像です。ターゲットを決めた後、施策のメッセージや内容を具体的にするためにペルソナを作ります。違いはペルソナとターゲットの違いの記事で詳しく解説しています。

ターゲティングの3つの手法

ターゲティングの手法は、狙う市場の広さによって大きく3つに分けられます。

無差別型マーケティング

市場をセグメントに分けず、すべての顧客に同じ製品・同じメッセージでアプローチする手法です。生活必需品など、顧客によってニーズの違いが小さい商品に向いています。大量生産・大量広告で効率を上げられる一方、多額の予算が必要で、ニーズが多様化した市場では埋もれやすいというデメリットがあります。

差別化型マーケティング

複数のセグメントを選び、セグメントごとに製品やメッセージを変えてアプローチする手法です。例えば、同じ業務システムでも大企業向けと中小企業向けで料金プランや機能、営業体制を分けるといった形です。幅広い顧客を獲得できますが、セグメントごとに施策を用意する必要があり、コストと手間がかかります。

集中型マーケティング

特定の1つ、または少数のセグメントに絞り、経営資源を集中させる手法です。「〇〇業界専用」「中小企業向け」のように、狙う市場で専門性やブランドを確立しやすいのが強みです。経営資源が限られる中小企業や新規事業では、まず集中型で特定の市場の顧客を確実に獲得し、その後に隣接するセグメントへ広げていくのが基本の進め方です。ただし、狙った市場が縮小すると影響を大きく受ける点には注意が必要です。

ターゲティングのやり方4ステップ

ステップ1:市場をセグメントに分ける

まずは、市場や顧客を共通する特徴で分類します(セグメンテーション)。よく使われる変数は次の4つです。

  • 地理的変数(Geographics):国、地域、気候、文化など
  • 人口統計的変数(Demographics):性別、年齢、職業、収入、家族構成など
  • 行動変数(Behaviorals):購入頻度、買い換えのタイミング、情報収集の方法、購入決定の要因など
  • 心理的変数(Psychographics):好み、価値観、関心ごと、ライフスタイルなど

BtoBビジネスにおいては、顧客を一人単位で考えることを難しく思ってしまうかもしれません。その場合は、業界や従業員数、売上規模といった企業の属性(ファーモグラフィック)で分けたり、購買担当者などキーマンとなる人物一人に焦点を当てたりする方法が有効です。

行動変数と心理的変数は、顧客の行動原理や需要を評価、予測するのに適している指標です。自社製品の購入に至るまでの顧客の行動プロセスをマッピングする「カスタマージャーニーマップ」を作成するのにも役立つため、HubSpotではこれらの属性情報に重点を置くことを推奨しています。

ステップ2:6Rで各セグメントを評価する

分けたセグメントのうち、どこが狙う価値のある市場かを評価します。評価の観点としてよく使われるのが、6つの頭文字をとった「6R」です。

観点確認すること
Realistic Scale(有効な市場規模)事業として成り立つだけの市場規模があるか
Rank(優先順位)自社の事業にとって、どのセグメントを優先すべきか
Rate of Growth(成長性)市場は今後伸びるか、縮小していないか
Rival(競合)強力な競合がいないか、競合と棲み分けられるか
Reach(到達可能性)広告や営業、販売チャネルで顧客にアプローチできるか
Response(測定可能性)施策に対する顧客の反応を測定・分析できるか

すべての観点で満点のセグメントはまずありません。各セグメントを3〜5段階で評価して並べ、総合的に魅力の高いセグメントを候補として絞り込みましょう。

ステップ3:3C・SWOT分析で自社が勝てるかを確かめる

6Rで候補を絞ったら、そのセグメントで自社が勝てるかを「3C(市場、競合、自社)」の視点で確認します。

3C分析(市場・競合・自社)

(出典:123RF)

市場(Customer)

分類したセグメントを業界や市場規模、成長の見込み、収益可能性などの視点から評価します。業界がマッチしているが市場の規模がそもそも小さく売上げが期待できない、もしくは現在の市場規模は小さいが今後急成長する可能性があるなど、市場の分析から得られる情報はさまざまです。市場参入する際の方向性を間違わないためにも、市場の分析は綿密に行いましょう。

競合(Competitor)

そのセグメントの中にどのような競合企業がいるかの分析も、ターゲティングの際に重要な視点のひとつになります。すでに数多くの競合がいる、とても敵わない強力な競合がいるなど、すでにレッドオーシャンと化しているセグメントをターゲットとするのは賢明ではないかもしれません。逆に一見するとレッドオーシャンでも、競合を分析した結果、自社にしかない強みを活かし棲み分けが可能と判断できる可能性もあるでしょう。

自社(Company)

最後に自社へ目を向けて分析を行います。自社や自社製品の強みは何かなど、他の2つのC(市場と競合)と見比べ、そのセグメントにアプローチするための材料が揃っているかを確認します。

自社の分析を行う際には「SWOT分析」が有効です。SWOT分析では、自社を取り巻く環境を「内部環境」と「外部環境」に区分し、さらに内部環境を「強み(Strength)」と「弱み(Weakness)」、外部環境を「機会(Opportunity)」と「脅威(Threat)」の計4つに振り分けて分析を行います。

SWOT分析

(出典:Capital.com)

SWOT分析については、当ブログのSWOT分析の記事で詳しく取り扱っております。併せてご確認ください。

ステップ4:ターゲットを決め、ペルソナに落とし込む

6Rと3C・SWOT分析の結果をもとに、狙うセグメントを決めます。決めたターゲットは「従業員50〜300名の製造業で、情報システム部門の人手が足りていない企業」のように、社内の誰が読んでも同じ顧客像を思い浮かべられる言葉で書き出しましょう。

さらに、ターゲットの中の代表的な人物像をペルソナとして設定すると、広告のメッセージやコンテンツの内容、営業トークまで具体的に考えやすくなります。

ターゲティングの例

BtoB SaaSの例:業界と企業規模で絞り込む

例えば、勤怠管理のクラウドサービスを提供する企業がターゲティングを行う場合を考えてみましょう。

  • セグメンテーション:業界(製造業・小売業・IT・医療など)と従業員規模(〜50名・50〜300名・300名以上)で市場を分ける
  • 6Rで評価:シフト勤務が多く勤怠管理が複雑な「小売業・医療」は市場規模・成長性ともに魅力が高い。一方、300名以上の企業は大手競合のシェアが高い
  • 3C・SWOTで確認:自社はシフト管理機能に強みがあり、導入支援の体制は中小企業向けに最適化されている
  • ターゲット:「シフト勤務の多い、従業員50〜300名の小売業・医療機関」に集中する

このように絞り込むと、「シフト作成の手間を〇割削減」といった、ターゲットに刺さる具体的な訴求を打ち出しやすくなります。

段階的にターゲットを広げる

集中型で特定の市場の顧客を獲得できたら、ニーズが近い隣接セグメントへ段階的にターゲットを広げていきます。上の例なら、小売業・医療で導入実績を積んだ後に、同じくシフト勤務の多い飲食業や介護業界へ展開するといった流れです。最初から広い市場を狙うよりも、実績や事例を武器にできるため、効率よく市場を拡大できます。

実在の企業がどのようにターゲットを選んでいるかは、STP分析の企業事例や、スターバックス、ユニクロのSTP分析の記事も参考にしてください。

ターゲティングの注意点

絞りすぎ・広げすぎに注意する

ターゲットを絞りすぎると、市場が小さく売上が伸びません。反対に広げすぎると、メッセージがぼやけて誰にも響かなくなります。6Rの「Realistic Scale(有効な市場規模)」で、事業として成り立つ規模があるかを必ず確認しましょう。

自社の都合でターゲットを選ばない

「売上が大きそうだから」「自社が売りたいから」という理由だけで選ぶと、顧客のニーズや競合の強さを見落とします。市場・競合・自社の3つの視点で、客観的に勝てる市場かどうかを判断しましょう。

定期的に見直す

市場環境や顧客のニーズ、競合の状況は変化します。受注・失注のデータを定期的に振り返り、ターゲットが今の市場に合っているかを見直しましょう。

ターゲティングと併用したいバリュープロポジション

バリュープロポジションとは、顧客が求めているが競合他社では提供できず、自社だけが提供できる、いわゆるオンリーワンの価値のことです。アメリカの大手コンサルティングファームであるMcKinsey & Company社のMichael・Lanning(マイケル・ラニング)氏とEdward・Michaels(エドワード・マイケルズ)氏による論文で使用されたことがきっかけで世に広まりました。

バリュープロポジション

バリュープロポジションは、同一セグメント内に存在するライバルたちから自社を明確に差別化するポイントとなります。ターゲティングで「誰に売るか」を決めたら、その相手に対する自社だけの価値を明確にすることで、マーケティングの方向性がぶれにくくなります。

バリュープロポジションを導き出すステップは、ターゲティングひいてはSTP分析のステップとよく似ています。顧客が求める価値はセグメンテーションで、競合他社や自社が提供できる価値は3C分析やSWOT分析で把握できます。両方を併用することで、さらなる相乗効果が期待できるでしょう。詳しくはバリュープロポジションの記事で紹介しています。

まとめ

フィリップ・コトラー氏はマーケティングの本質を説く一文として、このような言葉を残しています。

“Marketing is the ability to hit the mark(マーケティングとは、的に当てる技術のことだ)”

的を「知る」ことから始まり、当てられる的を「選び」、その的に当たる手法(他が真似できない方法)で「射る」。マーケティングにおけるターゲティングはそう言い換えることができるかもしれません。

市場をセグメントに分け、6Rで魅力を評価し、3C・SWOT分析で自社が勝てるかを確かめる。この手順でターゲットを決めることで、限られた予算でも成果の出るマーケティングにつながります。ぜひ自社製品のマーケティングにご活用ください。

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

※ この記事はLEAPTブログから移行されました。詳しくはこちらをご覧ください。