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ポジショニングマップとは?作り方4ステップと軸の決め方・例を解説Column

2025.09.12

ポジショニングマップとは?作り方4ステップと軸の決め方・例を解説

「ビジネスはポジショニングが8〜9割」「ポジショニングこそが重要」と言われるほどポジショニングは重要です。特にマーケターの方なら、ポジショニングの重要性は、日常の業務で体感することが多いのではないかと思います。

しかし、どのようにポジションをとるのか? そのオンリーワンのポジションを普通の中小企業の商品がどうやってとるのか? というのが悩ましいところでしょう。

マーケティング施策をたてるときや、新製品を企画するときに必要な手順のひとつに、ポジショニングマップ作成があります。ポジショニングマップを作成する目的は、自社の差別化のポイントを把握するためです。

本記事では、ポジショニングマップの基本から、作り方4ステップ、失敗しない軸の決め方、BtoB・BtoCの例までを解説します。

この記事のポイント

  • ポジショニングマップは、自社と競合の立ち位置を2つの軸で可視化し、差別化のポイントを見つけるための図
  • 作り方は「KBFの洗い出し→競合調査→比較表で評価→2軸でマッピング」の4ステップ
  • 成否を分けるのは軸の選び方。顧客が実際に比較している、互いに関係しない2軸を選ぶ

ポジショニングマップとは

ポジショニングマップとは、その名のとおり、市場での自社やプロダクトのポジション(位置)を表すマップ(地図)です。ポジショニングマップに自社の位置と他社の位置をマッピングすると、自社を相対的に判断できるため、自社の独自性、とるべき戦略が見えやすくなります。

一般には2軸の指標で作成します。以下は、最もよくある「価格」「機能」のポジショニングマップなので、見たことのある方も多いでしょう。

「価格」×「機能」のポジショニングマップ
ポジショニングマップの例(価格×機能)

ポジショニングマップでわかること・作る目的

ポジショニングマップを作る目的は、大きく3つあります。

  • 自社の差別化ポイントを把握する:競合と比べて、どの軸で優れていて、どの軸で劣っているのかが一目でわかります。
  • 競合が手薄な市場を見つける:マップ上で競合が少ない領域から、新しい商品やサービスの機会を見つけられます。
  • 業界の構図の変化をつかむ:競合が新商品を出したときや、新しい企業が参入してきたときに、自社の位置がどう変わったかを確認できます。

ポジショニングマップは、本来はコンセプトストラテジー(製品戦略)のひとつであり、新規事業企画の初期の段階で活用するものです。日本では製品やサービスを作った後に取り組む企業が多いのですが、市場に新たなサービスを送り出すときから差別化を意識し、オンリーワンのポジションのプロダクトを作ることができれば、事業の成功率はより高くなるでしょう。

もちろん、オンリーワンの商品を出してもライバル企業が必ず真似してきますし、市場が飽和することもあります。業界内のポジションは常に変化していくので、定期的にマップを作り直し、自社のポジションを把握しておくことが重要です。

STP分析におけるポジショニングマップの位置づけ

ポジショニングマップは、マーケティング戦略を立てるフレームワーク「STP分析」の最後のステップ、ポジショニング(P)で使う代表的なツールです。

  • セグメンテーション(S):市場を共通するニーズや属性で細分化する
  • ターゲティング(T):細分化した市場のうち、自社が狙う市場を決める
  • ポジショニング(P):狙う市場の中で、競合と比べた自社の立ち位置を決める

ターゲティングが「誰に売るか」を決めるのに対し、ポジショニングは「その相手から、競合と比べてどう見られたいか」を決めるステップです。ポジショニングマップは、ターゲットとする顧客の目線で競合との違いを可視化し、ポジショニングを決めるために使います。ポジショニング全体の考え方は、ポジショニング戦略の記事で解説しています。

作る前に押さえたい「バリュープロポジション」

ポジショニングマップを作成するには、まず自社のバリュープロポジション(自社だけの独自性、価値)を知ることが大切です。

バリュープロポジションとは、自社が思う自社の強みではなく、「顧客ニーズがある」「競合他社ではできない、あるいは非常に弱い」「自社だけが提供できる」という3つの条件を満たす価値のことです。

いわば相対的な自社の価値を、まず知る必要があります。バリュープロポジションを明確にすると、製品企画、マーケティング、サービスのクオリティなどで競争上の優位性を確立しやすくなります。

バリュープロポジションの図

ポジショニングマップの作り方4ステップ

ここでは、基本的なポジショニングマップの作成ステップを、BtoBのSaaSを例に解説します。

ステップ1:顧客が重視する購買決定要因(KBF)を洗い出す

まず、自社の顧客像が、商品を購入するにあたって重要視するポイント(KBF:Key Buying Factor、購買決定要因)を列挙します。おそらく、ほとんどの業界で「価格」は重要なポイントでしょうが、それ以外もたくさんあるはずです。業界やプロダクトによってさまざまですが、SaaSなら以下のポイントがあげられます。

SaaSの購買決定要因(KBF)の例

  • 価格(安い⇔高い)
  • 機能(シンプル⇔多機能)
  • 操作性(簡単⇔難しい)
  • エコシステム(拡張性)
  • サポート体制(セルフ⇔充実)
  • 顧客層(大企業向け⇔SMB向け)
  • セキュリティ

KBFは社内の思い込みで決めず、受注・失注した顧客へのヒアリングや、営業担当者が商談でよく聞かれる質問から洗い出すのがポイントです。

ステップ2:競合が選ばれている理由を調べる

次に、ライバル企業の製品サービスの重要ポイントを列挙します。自社で買ってもよさそうなお客様が、なぜ他社を選ぶか? 思い込みではなく、競合他社サイト、レビューサイトなどを活用してポイントを探し出しましょう。自社の営業スタッフのヒアリングも重要です。SaaSなら、レビューサイトG2、日本のITReviewなどが参考になります。

競合企業の重要ポイント例

  • 高価格である
  • 大手企業が望む機能を満たしている
  • 大手企業の顧客満足度が非常に高い
  • 営業(コンサルタント)が優秀である
  • ブランド力がある
  • セキュリティが堅牢、他

ステップ3:KBF比較表で自社と競合を評価する

顧客の重要視するポイント、競合他社が持つセールスポイント、などを参考にして、市場から見た自社のレベルを把握する指標をいくつかピックアップします。指標はできるだけ数値で測れるものがベストです。

以下のように比較表を作ります。3〜5段階評価くらいで数字をつけてもよいですし、図のように◎〇△×をつけて差をつけてもよいでしょう。

KBF比較表の例(自社と競合の評価)

ステップ4:2つの軸を選んでマップに配置する

比較表の指標から2つを選んで縦軸と横軸にし、比較表のスコアをもとに自社と競合を配置します。

例:「価格」×「エンタープライズ⇔SMB」

ポジショニングマップの例(価格×エンタープライズ⇔SMB)

軸の組み合わせは1パターンで終わらせず、何パターンか作成することが大事です。機能や価格では他社と差がなくても、顧客満足度やサポート体制などでは差がある可能性があります。軸の選び方は、次の章で詳しく解説します。

失敗しない軸の決め方

ポジショニングマップの出来は、軸の選び方でほぼ決まります。よくある失敗は、「自社が勝てる軸を後から選んでしまい、顧客にとっては意味のない差別化になる」ことです。軸を選ぶときは、次の3点を確認しましょう。

顧客が実際に比較している軸を選ぶ

軸は、ステップ1で洗い出したKBFの中から選ぶのが基本です。顧客が購入時に気にしていない軸で差をつけても、選ばれる理由にはなりません。商談の比較表や、失注理由で挙がった項目を優先しましょう。

互いに関係しない2つの軸を組み合わせる

「価格」と「品質」のように、一方が高ければもう一方も高くなりやすい軸を組み合わせると、すべての商品が斜めの線上に並び、違いが見えなくなります。「価格」×「サポート体制」、「機能の多さ」×「導入のしやすさ」のように、なるべく関係の薄い2軸を組み合わせましょう。

軸の組み合わせを変えて複数パターン作る

1枚のマップだけで判断すると、たまたま選んだ軸の印象に引きずられます。3〜4パターン作り、どのマップでも自社が独自の位置を取れる軸の組み合わせを探しましょう。その組み合わせが、自社が打ち出すべき差別化のポイントになります。

よく使われる軸の例

業界によって適した軸は異なりますが、よく使われる組み合わせには次のようなものがあります。

分野軸の例
BtoB(SaaS・ITツール)価格(安い⇔高い)、対象企業規模(大企業⇔中小企業)、機能(シンプル⇔多機能)、サポート(セルフ⇔伴走型)、導入のしやすさ(すぐ使える⇔要カスタマイズ)、汎用型⇔業界特化型
BtoB(サービス・受託)価格、対応範囲(部分支援⇔一気通貫)、専門性(総合型⇔特化型)、スピード、実績の業界
BtoC(飲食・小売)価格、品質・こだわり、利便性(立地・スピード)、利用シーン(日常使い⇔特別な日)、滞在型⇔テイクアウト型
BtoC(アパレル・日用品)価格、デザイン(ベーシック⇔トレンド)、機能性、ターゲット年齢層、ブランドイメージ

ポジショニングマップの例

BtoBの例:SaaS(価格×対象企業規模)

作り方のステップ4で紹介した「価格」×「エンタープライズ⇔SMB」のマップは、BtoBのSaaSでよく使われる組み合わせです。例えば、自社が「低価格・中小企業向け」の領域に位置し、競合の多くが「高価格・大企業向け」に集まっているなら、中小企業向けに導入のしやすさやサポートの手厚さを打ち出すことで、競合と正面からぶつからずに戦えます。

BtoBの例:レビューサイトのマップを活用する

他社の顧客満足度、機能などがわからない場合はレビューサイトを活用しましょう。例えば、以下はレビューサイトG2の「CRM」のグローバルマップです。ジャンル別に検索し「Grid」をクリックすれば表示されます。しかも、最新情報が反映されているので便利です。

■CRMの「市場での存在感」×「顧客満足度」

G2のCRMのポジショニングマップ(市場での存在感×顧客満足度)

(出典:G2)

日本の水平型SaaSベンダーでも、もっと小さい市場を対象にしていると思いますが、大枠な市場の構図を理解していると、感覚がつかみやすいかと思います。海外勢が入ってこない国内SaaS領域なら、日本のレビューサイトからスコアを拾ってもよいでしょう。

BtoCの例:カフェ業界(価格×利用スタイル)

BtoCのカフェ業界なら、「価格(安い⇔高い)」×「利用スタイル(テイクアウト・短時間⇔滞在・くつろぎ)」の2軸がわかりやすい例です。

  • 低価格×短時間:立ち飲みスタイルのコーヒースタンド、コンビニコーヒー
  • 低価格×滞在:セルフサービスのチェーン系カフェ
  • 高価格×短時間:豆や抽出にこだわるスペシャルティコーヒー専門店
  • 高価格×滞在:空間や居心地を価値として提供するカフェ

このように整理すると、新しく出店するカフェがどの領域で勝負するのか、競合と何で差をつけるのかを考えやすくなります。実際の企業のSTP分析の例は、スターバックスのSTP分析やユニクロのSTP分析の記事で紹介しています。

マップからポジショニングコンセプトを決め、テストする

ポジショニングコンセプトを固める

ポジショニングマップで、おおよその自社の特徴が見えてきたら「ポジショニングコンセプト」をまとめましょう。

例えば、以下の特徴が出たとします。

  • 他社より機能が少ない
  • 価格が安い
  • サポート体制はセルフサービス
  • 顧客満足度はSMB領域で意外に高い

このような特徴が出たなら、いわゆる「身の丈SaaS的コンセプト」で中小、フリーランス領域に強いポジショニングかもしれません。「その機能、必要ですか? 」なんてキャッチコピーがあう商品かもしれません。ポジショニングマップを見ながらポジショニングコンセプトをまとめます。

コンセプトテストで顧客の反応を確かめる

ポジションのコンセプトがおおよそ決まった時点で、顧客に受け入れられるかをシミュレーションするテストをします。コンセプトテストは、ターゲットとなる顧客層のモニターに製品コンセプトを提示し、その反応を見るテストです。

  • プロトタイプ
  • 商品のデザイン
  • パッケージデザイン
  • ブランド名
  • 価格(高、中、低)

などを評価してもらうことができます。項目ごとにスコアをつけてもらい、「この商品を買いたいと思いますか? 」と入れる場合もあります。

コンセプトテストは適切な人に回答してもらう必要があります。自社のペルソナとかけ離れていてはまったく意味がありません。SaaSでも中小企業と大企業の担当者は望んでいることが大きく異なります。テストをしてくれる層がペルソナに近似していれば、その反応は市場での反応と限りなく近くなるでしょう。ユーザーコミュニティから集う等、適切な人に協力してもらいます。

参加者に、複数の仮コンセプトのサンプルを見せてスコアをつけてもらいます。参加者が最初にコンセプトを知ったときの反応は、市場での反応に近いため、そのコンセプトで進めた際の売れ行きが想像できます。

また、新製品企画の場合は複数のコンセプト案(価格、機能、名称も仮設定)をランク付けしてもらい、コンジョイント分析を行うことで、それぞれの項目などの購入にどのくらい影響があるかを分析できます。さらに、各要素を、どの程度の水準まで引き上げれば顧客が支持するかをシミュレーションできるため、最適なコンセプトにまとめることができます。

一連の手順を図で表すと以下の流れです。

コンジョイント分析の流れ

ポジショニングマップを作るときの注意点

自社目線で配置しない

自社の製品には思い入れがあるため、つい良い位置に置いてしまいがちです。配置の根拠は、顧客アンケートやレビューサイトの評価、商談での評価など、顧客から見た事実に基づかせましょう。

空白地帯に需要があるとは限らない

マップ上で競合がいない領域が見つかっても、そこに顧客がいるとは限りません。「誰も参入していない」のは、ニーズが小さいからという場合もあります。空白地帯を狙うときは、その領域を求める顧客が十分にいるかを必ず確認しましょう。

一度作って終わりにしない

競合の新商品や新規参入、顧客ニーズの変化によって、業界内のポジションは常に変わります。ポジショニングマップは一度作成しておわりではなく、半年〜1年に1回など、定期的に作り直しましょう。

まとめ

ビジネスは、市場の陣地とり合戦のようなもの。いちはやく有望市場を見つけてビジネスを進めることも大事です。相手が陣地を変えたなら、こちらも変えなければならないことが多いでしょう。

ポジショニングマップは、比較的手軽に作成できる手法ながら、市場での自社の現在位置を把握でき、新規製品開発の際も、新たな市場を見つけたいときにも、他社が新商品を出してきたときにも役立ちます。成果を左右するのは、顧客が実際に比較している軸を選べるかどうかです。

まずは、現在の市場での自社プロダクトのポジショニングマップを作成して、今後の市場戦略を考えていく習慣をつけるとよいでしょう。STP分析全体の進め方は、STP分析とは?やり方3ステップとテンプレート、BtoB・BtoC企業事例8選で解説しています。

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

※ この記事はLEAPTブログから移行されました。詳しくはこちらをご覧ください。