サジェストキーワードとは、検索エンジンの検索窓で特定のキーワードを入力した際に表示される検索ワードの候補です。普段、ユーザーはGoogleなどのWeb上のサービスを利用するにあたって、何かしらの提案を受けながら作業効率化の恩恵を受けています。サジェストキーワードその機能のひとつです。
さらに、サジェストキーワードはSEO対策上で重要な役割を担っています。サジェストキーワードを基にしてコンテンツ作成を行うことで、よりユーザーニーズを捉えた情報発信・価値提供が可能です。
本記事ではサジェストキーワードの概要と、SEOにおける重要性を解説します。「トピッククラスター」の考え方にも言及しつつ、体系的なコンテンツ制作について論考しますので、ぜひ参考にしてください。
サジェストキーワードとは
サジェストキーワードとは「検索エンジンによって提案される検索候補」のことです。インターネット検索ではGoogleやYahoo!、bing(Microsoft)などを使用するのが一般的でしょう。さらには、サジェストキーワードはYouTubeのような動画配信プラットフォームでも採用されています。
検索エンジンの検索窓に何かしらのキーワードを入力すると、それに応じた検索候補がリスト形式で表示される機能があります。そうして表示された検索候補がサジェストキーワードです(下の画像ではChromeのシークレットモードを使用しているため、検索履歴は反映されていません)。
各検索エンジンには、異なる点が多々あります。それぞれについてまとめると、以下のとおりです。
Google、Yahoo!、bingは、それぞれ表示されるサジェストキーワードが類似する傾向があります。検索エンジンが違うからといってユーザーの検索傾向が大きく変わるわけではないからだと考えられるでしょう。
YouTubeに関しては動画プラットフォームとしての特性から、時事性や商標キーワード、お悩みキーワードが重視されると推測できます。
サジェストキーワードと誤解しやすいキーワードとの違い
ここで、サジェストキーワードと、誤解・混同しやすい言葉を3つ挙げて、それぞれの違いを解説します。
- 「共起語」との違いについて
- 「関連キーワード」との違いについて
- 「オートコンプリート」との違いについて
サジェストキーワードと共起語の違い
共起語とサジェストキーワードは、どちらもSEO戦略に役立つものです。しかし、その利用方法と意味合いには、互いに明確な違いがあります。
意味 |
主体 |
SEO戦略上の役割 |
|
共起語 |
特定の文脈で、ある単語とともに言及されることが多い、他の単語のこと。 |
「人」が会話・思考などの中で想起(共起)する言葉 |
コンテンツ作成時の 補助的役割 (ユーザー視点でより分かりやすく、自然なコンテンツづくりに役立つ) |
サジェストキーワード |
検索エンジンが、ユーザーの検索意図を分析し、関連性が高いと判断して検索ユーザーに向けて提案するキーワードのこと。 |
「検索エンジン」が分析・提案する言葉 |
ユーザーの検索頻度などを反映していると言われている。 したがって、コンテンツ作成時、ユーザーの検索意図を把握するうえで役立つ。 |
「共起語」とは、特定の文脈で、ある単語と一緒に言及されることが多い他の単語を指します。以下がその一例です。
<「CRM」という単語と、共起語の例 >
- CRM マーケティング
- CRM 導入
- CRM システム
(出典:ラッコキーワード)
共起語は、人々の自然な会話から思考の中で生まれる言葉の組み合わせ、と考えると分かりやすいでしょう。
たとえば「CRM」という言葉を誰かに向けて説明しようとする際、「マーケティング」「システム」といった単語がセットで関連付けて語られることが多いといえます。これが「共起語」です。よって、これから何か1本の記事を書こうとする際には、共起語を適度に記事内に盛り込むことで、ユーザー視点で内容がわかりやすくなり、彼らが求める情報を適切に提供できるでしょう。
一方、サジェストキーワードは、検索エンジンがユーザーの検索意図を分析し、関連すると思われるキーワードを検索中のユーザーに向けて提案するものです。ユーザーにとって有用な検索結果へと導くために使われます。
(出典:Google)
サジェストキーワードと関連キーワードの違い
関連キーワードは、検索エンジンが特定の語句と連携して表示させるキーワード群です。たとえば「CRMツール」と検索した際に、その検索結果の中央や下部に表示される「関連性の高い検索」のことを指します。
(出典:Google)
関連キーワードは、ユーザーが特定のトピックについて初歩的な知識しか持っていない場合に、追加情報へのアクセスを促し、理解を後押しします。
サジェストキーワードとの違いは、「(検索過程の)いつ表示されるか」という点です。サジェストキーワードは、ユーザーが検索語句入力中にリアルタイムでキーワードを提案します。それに対し関連キーワードは、検索結果ページにおいて既に検索した単語に基づいて提供されます。サジェストキーワードは検索の手助けをし、関連キーワードは情報の深堀りを助けているといえます。
サジェストキーワードとオートコンプリートの違い
サジェストキーワードとオートコンプリートの違いについて説明します。
サジェストキーワードは、ユーザーが検索を開始した際に、検索エンジンが提案する関連キーワードです。この機能によりユーザーは、目的の情報に迅速にアクセスする手助けを受けられます。
一方、オートコンプリート(ブラウザ側の機能)は、ユーザーが過去に入力したデータを基に、フィールド(検索窓など)入力時に予測テキストを表示する機能です。これは主にテキスト入力の効率化を目的としていますが、プライバシーの観点から注意が必要です。
オートコンプリート機能は、過去の入力履歴を基にして予測候補を表示するため、第三者がデバイスを操作した場合には、持ち主が「過去に何を検索していたか」など、個人情報が漏洩するリスクがあります。そのため、オートコンプリートの機能の使用には注意が必要だといえます。
両者は、ユーザーのタイピングを助ける点で共通していますが、その使用目的が異なります。前者は情報の検索を効率化するため、後者は入力作業の効率化を目的としているといえるでしょう。
Googleサジェスト(オートコンプリート)とは
SEO対策をしていく中で、サジェストキーワード関連で最も意識すべきなのは「Googleサジェスト(オートコンプリート)」でしょう。Googleサジェストは、Google検索エンジンの検索ボックスにキーワードを入力している最中に、それに関連する検索キーワードやフレーズを自動的に提案するサジェスト機能です。
検索エンジンの世界市場において、Googleは80%以上のシェアを誇っており、必然的にコンテンツマーケティングにおいても、最優先で対策するべきプラットフォームとして挙げられます。
そのようなGoogleで用いられているサジェスト機能は、ユーザーの実際の検索クエリを反映しているため、「ユーザーが実際にどのようなニーズを持っているのか」を理解するのに役立つのです。
ただし、後述するGoogleサジェストの仕組みを知れば明らかなのですが、Googleサジェストは必ずしもユーザー全体のニーズを正確に表しているわけではありません。とはいえ、自社のコンテンツ作成における方向性を定義する上では、とても重要な要素です。
GoogleとYahoo!、bingのサジェストの違い
日本における検索エンジンのシェアはGoogleが大半を占めており、Yahoo!、bingと続いています。
(出典:「statcounter」Desktop Search Engine Market Share Japan Mar 2023 - Mar 2024)
実は、Yahoo!は検索エンジンのアルゴリズムにGoogle製が取り入れられているため「ほぼGoogleと同じ仕様」といえるでしょう。しかし、bingはMicrosoftが独自に開発している検索エンジンであるため、GoogleやYahoo!とは違った特徴があります。例えば「中古車 z」と入力すると、Googleとbingとでは次のような違いがあります。
Googleで「中古車 z」と入力すると「z」で始まる日本語キーワードがサジェストとして表示されるのに対し、bingでは「z」をローマ字認識でサジェストが表われています。つまり、Googleの方が曖昧性に対して高い認識機能が備わっているのです。
Googleサジェスト(オートコンプリート)の仕組み
では、Googleサジェストにはどのような仕組みがあるのでしょうか? 代表的なものを挙げると、以下のとおりです。
- 仕組み1:Google上で行われた実際の検索を反映する
- 仕組み2:ユーザーごとの検索履歴データを参考にする
- 仕組み3:ユーザーの使用言語や居住地を参考にする
- 仕組み4:ポリシー違反の無用なサジェストを表示しない
- 仕組み5:Google OneBoxとの連携
ここからは、それぞれについて解説します。
仕組み1:Google上で行われた実際の検索を反映する
Googleのサジェストキーワードは、Google上で実行された検索結果を反映する仕組みになっています。WIREDに投稿された記事によると、Googleが1日に処理している検索数は30億回とのことです。
「 The statistics remain staggering. Google accepts over 3 billion search queries a day.」
「驚異的な統計が続いています。Googleが1日に受け入れる検索クエリは30億回を超えているのです(筆者訳)」
(出典:WIRED「How Google Search Dealt With Mobile」)
Gogoleサジェストは、世界中の検索を反映して「入力されたキーワードに対して最も検索率の高い別のキーワードを組み合わせる」のが基本的な仕組みなのです。
仕組み2:ユーザーごとの検索履歴データを参考にする
サジェストキーワードを表示するためには、ユーザーごとの検索履歴データも参考にされます。これは単に、検索履歴を表示するということではありません。サジェスト機能として表示するキーワードを、ユーザーごとにカスタマイズしているのです。
例えば、以下のGoogleサジェストのスクリーンショットは「筆者が日頃使用しているChromeブラウザ」上で「Google」と入力した結果です。
Googleサジェスト関連のキーワードが多いのは、当記事を執筆するにあたり、Googleサジェストに関するキーワードを多く入力したためです。
対して、普段使用しないSafariブラウザにて、Googleの検索窓に「Google」と入力した際に表示されたGoogleサジェストは以下のようなものが検出されます。
上記をみれば、Googleサジェスト関連のキーワードが1つもないとわかるでしょう。これは「検索履歴データがほとんどゼロに近い状態」でGoogl検索を使用したためです。
Googleサジェストはユーザーの検索履歴データを反映しているので、ユーザーによって表示されるキーワードが異なります。
仕組み3:ユーザーの使用言語や居住地を参考にする
仕組み2の「ユーザーの検索キーワード」に加えて、ユーザーごとにカスタマイズされているのが「使用言語」と「居住地」です。
例えば、仕組み2でも登場した「Google」と検索した場合のサジェストキーワードは、英字を入力しているにも関わらず、日本語キーワードを組み合わせたものが多分に含まれています。これはGoogleがユーザーの使用言語に合わせて、表示するキーワードを変更しているためです。
ユーザーの居住地に関しても、Googleは情報を収集した上でサジェストキーワードに反映させています。例えば、東京在住の筆者がGoogleの検索窓に「SEO会社」と入力すると、以下のように地域名を含むサジェストキーワードが表示されました。
上記は、普段使用しないSafariブラウザで検索した場合の結果であり、居住地情報に関しては特にGoogle検索を利用しなくても収集される仕組みになっているのです。これは、端末ごとに振り分けられたIPアドレスから特定していると推察できます。
このように、Googleでは検索履歴のデータに加えて、使用言語や居住地などの情報を反映させながらユーザーごとに最適化されたサジェストキーワードを構築しています。
仕組み4:ポリシー違反の無用なサジェストを表示しない
Googleサジェストにおける、もう1つの重要な仕組みが「ポリシー違反に該当するサジェストを表示させない」ことです。主なポリシー違反は、以下のとおりです。
- 危険なコンテンツ
- ハラスメントコンテンツ
- 憎悪に満ちたコンテンツ
- 露骨な性的コンテンツ
- テロリストのコンテンツ
- 暴力と流血
- 下品な言葉と冒とく的な言葉
仕組み5:Google OneBoxとの連携
Google OneBoxとは、Google検索の機能のひとつです。ユーザーが情報を検索した際に、特定のWebページに誘導するのではなく、直接的で具体的な回答や関連情報を検索窓のすぐ下に大きく表示させます。
たとえば、天気予報、スポーツのスコア、短い定義、地図、株価などの情報が素早く表示され、ユーザーは迅速かつ効率的に情報を得ることができます。
(出典:Google)
この機能は、検索体験を向上させるためにデザインされており、ユーザーが求める情報に直接、安全にアクセスできる利点があります。
Google OneBoxは、Googleサジェストと相互に関連しています。両者は共に、ユーザーがより迅速かつ効率的に情報を得られるように機能していますが、それぞれが提供する情報の種類やタイミングに違いがあります。サジェストが検索過程をスムーズにする手助けをするのに対し、OneBoxは検索結果を具体化し、直接的な情報提供を行うことで、検索体験全体の価値を高める役割を果たしてるのです。
Googleサジェストの一般的な用途
Googleサジェストは、一般的には以下の用途で使用されます。
- ユーザーの検索ニーズを推定する
- コンテンツ化するべきキーワードかどうかを判断する
- サジェスト汚染の調査
次項より、それぞれ個別にみていきましょう。
ユーザーの検索ニーズを推定する
前述したように、Googleは全ユーザーごとの検索キーワード・属性情報を反映させて、検索候補となる「最大公約数的な」サジェストを表示しています。つまり、Googleサジェストを確認すれば「直近での検索者のニーズを推定すること」が可能です。
例えば、2023年5月時点のホットトピックのひとつである「インボイス制度」について、後述するデバイス使用者の検索履歴の影響を受けない「シークレットモード」で調べてみましょう。Googleの検索窓に「インボイス制度」と入力すると、「フリーランス」「いつから」などが組み合わさったサジェストキーワードが並んでいます。
上記のサジェストキーワードを見る限り、当該キーワードの検索者はフリーランスの割合が多く「制度に関する概要を詳しく知りたい」ニーズが高いようです。このようにすれば、Googleサジェストは検索ユーザーのニーズの推定に役立てられます。
ただし、前述のとおり上記は筆者自身の検索履歴が反映されたものです。ユーザーごとのパーソナライゼーションを反映させない検索方法は後ほどご紹介しますので、Googleサジェスト活用の際にはお役立てください。
コンテンツ化するべきキーワードかどうかを判断する
Googleサジェストにて上位表示されるキーワードの組み合わせは「比較的検索ニーズが高いキーワードである」と考えられます。
SEO対策やコンテンツマーケティングでは「ロングテールSEO」と呼ばれるテクニックがあります。
ロングテールSEOとは、検索ボリュームが多い「ビッグキーワード」で自社コンテンツの上位表示を狙うのではなく、複数の検索キーワードを組み合わせた「ミドルキーワード」「スモールキーワード」と呼ばれるロングテールキーワードを充実させて上位表示を狙い、自社サイトへの流入増を図る施策です。
BtoB、SaaS系企業のSEOは「そもそも狙うべきビッグキーワードの数が少ない。あるいは存在しない」というケースも多々あるため、ロングテールSEOが有用な選択肢として挙がります。
BtoBやSaaS系企業のマーケティング戦略につながるミドル/スモールキーワードを探す上でも、Googleサジェストが役立ちます。例えばGoogle検索で「PEST分析」と入力すると、次のようなGoogleサジェストが表示されます。
この結果をみれば「PEST分析の意味や目的、具体的な事例」「PEST分析とSWOT分析の違い」などについてのニーズがあると分析できます。
さらに「PEST分析 2023」と入力すると、別のGoogleサジェストが確認できます。
これをみると「PEST分析 2023」というキーワードは、製造業の方や政治に関心があるユーザーが検索しているようです。
もし、自社ビジネスが製造業を見込み客としていないのであれば、「PEST分析 2023」でのコンテンツ作成はスコープアウトとなるでしょう。
このようにして、Googleサジェストを活用すれば「検索ニーズの有無」に加え、ロングテールSEOを戦略的に実行する際に必要な「効果的なコンテンツの見極め」も可能なのです。
サジェスト汚染の調査
SEO対策やコンテンツマーケティングにおける一般的な用途からは少し逸れますが、サジェストキーワードは「サジェスト汚染の調査」にも役立ちます。
サジェスト汚染とは「商標 + ネガティブキーワード」で構成されるGoogleサジェストのこと。例えば、特定の企業名をGooge検索で入力すると、以下のようなサジェストキーワードが表示されるケースがあります。
上記に表示されている「やばい」「ブラック企業大賞」はネガティブなキーワードであり、明らかに「サジェストが汚染されている」といえるでしょう。
自社の商標でサジェスト汚染が確認される場合、対策として前述の「不適切な検索候補の報告」にてGoogleサジェストの削除要請を行うという選択肢があります。
しかし、Googleサジェストのポリシーに違反していない限り削除はされないため、必ずしも要請が通るわけではありません。
とはいえ、サジェスト汚染は販促活動や採用活動など、商標イメージが重要な取り組みの効果を著しく下げる可能性が高いため、なるべく削除要請を行いましょう。
Googleサジェスト汚染時の削除申請の方法
Googleに削除リクエストを出す方法を紹介します。
「不適切な検索候補の報告」を選択すると、次のようなポップアップが表示されますので、不適切と判断したサジェストを選びその理由にチェックを入れることでGoogleに対してフィードバックを送ることができます。
Googleはフィードバックを受け取ったら、「Googleのプライバシーポリシーや利用規約に鑑みて、リクエストに応えるかどうかを判断する」としています。よって、リクエストを送信したから必ず削除されるとは限らない、ということもあわせて理解しておきましょう。
Googleサジェスト(オートコンプリート)のSEOへの影響
GoogleサジェストのSEOへの影響について、要点をまとめます。
プラスの面
ユーザーが求める検索キーワードを知ることが可能です。Googleサジェストは、ユーザーが検索窓にタイピングを始めると、関連する検索語を提案します。
よって、企業内におけるコンテンツ立案・SEO担当者は、このサジェストを理解することで、ユーザーにとって価値のあるロングテールキーワードの発見につながるでしょう。ターゲットユーザーの検索意図をより深く理解し、それに基づいたコンテンツを作成することが可能になります。
マイナスの面
サジェスト汚染されてしまう可能性がある
ブランドや製品・サービスに関連するキーワードがサジェストされることで、それらに対する人々のイメージ(ポジティブなのか、ネガティブなのか)を把握できます。しかし、ネガティブなサジェストが増えてしまうと、