マーケティング担当の方は「レベニューオペレーション(RevOps)」という用語をご存知でしょうか?日本ではあまり知られておらず、2023年6月にバーチャレクス・コンサルティング株式会社が行った国内初の「RevOpsに関する実態調査」でも認知度1割くらいのワードです。
レベニューオペレーションの意味は「Revenue(収益)」という単語を見ればある程度ご想像がつくかと思います。企業の各部門がスムーズに連携する体制を整えることで、お客様に素晴らしい顧客体験を提供し、組織全体の収益を最大化していく考え方です。
ボストン・コンサルティング・グループの調査によると、米国BtoBのハイテク企業では成長を加速させるためにレベニューオペレ—ションを実施した結果、営業の生産性が10?20%向上したという結果が出ています。
米国では、収益向上に貢献したレベニューオペレーション担当者が毎年100人選出されメディアで紹介されるなど、ポピュラーな職種にもなりつつあり、2022年に公表された統計では48%の企業が収益オペレーション部門を設置しています。
本記事では、レベニューオペレーションの概要、レベニューオペレーションが普及してきた背景、レベニューオペレーションに取り組むメリットや導入事例などを解説します。
レベニューオペレーションとは、「組織全体の収益増加」のための総合的なアプローチです。
アプローチの手法はビジネスモデルによって異なります。
SaaS企業で言えば、マーケティング、セールス、カスタマーサクセスなどの収益向上に影響を与える部門が連携し、お客様にシームレスで一貫性のある良質な顧客体験を提供することで収益拡大を目指すことを指します。
(参照:HubSpot)
企業の利益拡大を阻むものは何でしょうか? 競合他社の存在、製品・サービスの品質、人材の能力など実際の理由はさまざまです。
しかし、多くの企業で部門間のセクショナリズム、連携不足など社内体制が影響していることが大きな原因と思い当たる人は多いかと思います。
組織が大きくなればなるほど部門間の壁は大きくなり、情報は分断され、セクショナリズムがはびこります。また、その解決は簡単ではありません。「協力しあおう」と言い合うだけでは無理なのです。
レベニューオペレーション導入とは、単に概念を浸透させることではなく、実際にマーケティング、セールス、カスタマーサクセスが連携して動けるように、バックアップするレベニューオペレーションのチームを作ることを含みます。
レベニューオペレーションチームはさまざまな部門間の架け橋となり、情報のサイロを打破し、収益拡大に多方面からアプローチします。これにより各部門は情報やデータを共有でき、オペレーションやツールも統合され効率的になります。部門を超えて一丸となってお客様に向き合い、共通の収益目標に取り組めるようになるのです。
米SiriusDecisions(シリウスディシジョン社)の2019年の調査によると、収益拡大をサポートする連携体制が構築されている企業では、成長スピードが19%速く、収益性が15%高くなっています。また、リードの受け入れ率が10%向上、社内の顧客満足度が15%?20%向上し、GTM費用の30%が削減されるなど数々の効果をあげています。
(出典:clari.com)
レベニュー・オペレーションが近年注目されるようになった背景には、ビジネス環境の複雑化、デジタル化、それに伴い顧客体験がより重要になったことがあります。
ご存知のとおり、ビジネス環境は2000年以降のグローバル化、デジタル化により大きく変化し続けています。変化のスピードは速く、中でもテクノロジーの進化のスピードはすさまじく、次から次へと新しいツールが登場しています。
一時はIT化によって、世の組織内の無駄な仕事はなくなり、情報はフラットに共有化され生産性が大きく向上するかのような期待がされていました。
しかし、現実はそうではなかったのです。次から次へと登場する革新的なテクノロジーを活用するどころか、キャッチアップし理解することが遅くなり、企業は常に最新のITリテラシーを持つ人材不足に悩まされました。各部門が独自で最適なテクノロジーを取り入れた結果、ますますサイロ化が進んでしまったケースも少なくありません。
どの部署でも、みな自部門の新ツールを運用して目標を達成するのに精一杯。全体的な収益を向上させる視点が大事なことがわかってもそこまで考えられず、むしろ手助けが欲しいくらいの現状でしょう。
このような現在のビジネス環境に対応するための組織として、米国では全体の収益を生み出すアプローチを行う「レベニューオペレーション(部署名はさまざま)」が注目されるようになりました。
デジタル化が進んだことで、企業内にビジネスで活用できるデータが膨大に蓄積されています。BtoB企業なら、マスデータ、トランザクションデータ(取引データ)、インテントデータ(Web上の行動データなど)があり、社内だけでなくサードパーティのデータも蓄積されているでしょう。
このようなデータを分析し、マーケティング戦略立案に活かす必要がありますが、ここでも人材不足の壁はあります。また、データは集めればいいというものではなく品質とその活用戦略が重要です。
例えば、米国ではデータ品質への投資を増やした BtoB 企業の 100% は全体的なパフォーマンスが向上、約 94% が販売・マーケティングのパフォーマンスも向上しています。
しかし日本の現状はどうかというと、ガートナー・ジャパンの調査によれば、データ活用で「全社的に十分な成果を得ている」と回答した企業の割合は2.2%。最近、マイナンバー入力時の住所表示に起因するミスが話題になりましたが、名寄せができていない企業は普通に存在します。
このような状況のなか、自社にとって重要なデータを見極め、全社的な戦略としてデータ活用を進められる部署や人材の必要性が増しています。
(出典:KoMarketing)
昨今、顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)は、ビジネスにとってますます重要になっています。顧客は企業とオンラインで取引を完結することも増えているため、いかに快適に情報に触れ、検討し、試し、購入し、ストレスなく活用できるかが、継続した取引ができるかどうかの大きなカギです。
しかし、複数の部門が異なるシステムやプロセスを使用していることが多く、連携がとれていないと顧客はストレスを感じ離脱します。
Webサイトの情報の探しやすさ、チャットの適切なレスポンス、無料デモの有無、営業スタッフの対応、導入後のオンボーディング、実際の商品の機能や使いやすさ、カスタマーサポートの対応、ほかの接点での顧客体験を管理する必要があります。
これらをスムーズに連携させLTV(顧客生涯価値)を高める機能としても、レベニューオペレーションが必要と考える企業が増えました。
レベニューオペレーション(RevOps)の構成組織は、SaaS業界であれば、営業、マーケティング、カスタマーサクセスの3部門のオペレーションです。以下に解説します。
セールスオペレーションとは、営業部門の能力を最大化させるためにできる、さまざまな戦略?実行を指します。簡単に言えば、営業部門の包括的な支援を行う部門という位置づけです。企業によっては営業支援、営業企画、営業統括といった名称の部署かもしれません。
ここでは、HubSpotの定義を紹介します。
「セールスオペレーションはリードの管理、営業戦略、テリトリーの構成と調整から、セールスプロセスの最適化、報酬プラン、セールスオートメーション、トレーニング、データの分析と報告まで、すべてを担当します。」(出典:HubSpot)
具体的には以下の業務です。現状、営業上層部が行っていることもあるでしょう。しかし、これらの機能を、RevOpsの一貫として連携して実施することが重要です。
マーケティングオペレーションは、マーケティング部門の人材、プロセス、テクノロジー、データなどすべての面を管轄し、効率的な運営とマーケティングスタッフの生産性を最大化していく役割を指します。
また、テクノロジーを駆使し、マーケティング部門や、営業、カスタマーサクセスなど他部門担当者にインサイトを提供し、部門横断的なコミュニケーション、レポーティングを行うことも期待される役割です。
この部門では、マーケティングテクノロジーの専門知識と分析力・実行力が必要なため「マーケティングとITの架け橋」とも呼ばれています。
なにしろ、マーケティングテクノロジーの増加は著しく、Chiefmartec 社の調査では2023年現在1万1038 のソリューションを確認。また、AIが急速に進化しているため劇的な変化が起きることも予測されています。
ITとの架け橋であり、セールスやカスタマーサクセスとの架け橋にもなりうる非常に重要な機能です。
(出典:2023 Marketing Technology Landscape Supergraphic: 11,038 solutions searchable on martechmap.com)
カスタマー サクセス オペレーションは、CS施策が効率的かつ効果的に実施されるように、包括的にアシストする部門です。
具体的には、カスタマーサクセスのワークフローを最適化し、業務を遂行するために最適なデジタルツールを選択。運用を管理しながら、CSのオペレーションを常にサポートし、改善していきます。具体的には以下の役割が中心です。
(参考:vitally.io、https://customersuccessbox.com)
この3つの要素がバランスよく機能することで、収益を上げることができます。
ここで、「レベニューオペレーション(RevOps)の成熟度モデル」をご紹介します。これは、英国を拠点にエンタープライズSaaSのグロースを支援しているチャーリー・コーワン(Charlie Cowan)氏が提唱したものです。下図で示す22の要素を用いて「組織全体で収益を最大化していくための体制が、どのぐらい成熟しているか?」を評価します。
(出典:Introducing the RevOps Maturity Model and Assessment ? RevOpsCharlie | Help your buyers to buy)
成熟度評価に用いる22の要素は、一つの大きな「フライホイール(はずみ車)」の中に内包されるイメージです。それぞれ、ビジネス推進に強く影響を及ぼす要素が挙げられています。(各要素の詳細は後述します)
この「フライホイール(はずみ車)」の中のどれか1要素に、「新たなエネルギーが加わって、何らかの変化がもたらされた」とします。すると車輪に推進力が生まれて、回り始めます。たとえば「数多くの成約(SaaSの新規契約)を一挙に獲得した」としたら、それはビジネスの推進に少なからず影響を及ぼすと考えられます。すなわち、フライホイールが回り始めることをイメージしてください。
逆に、どれか1要素に摩擦が生まれて思うように進まなくなる場合も考えられます。つまり、フライホイール全体に摩擦力が加わって、ビジネス全体が停滞してしまう、思うように進まないといったケースも想定されるでしょう。
なお、このフライホイールに内包された「22の要素」について、それぞれ「3段階の成熟度」があります。つまり、「フライホイールを推進する要素の大きさ」も重視します。理由は、ビジネスに何らかの変化が生まれたとしても、あまりにエネルギーが小さすぎては、フライホイールが勢いよく回り続けられないからです。
それでは「22の要素」「3段階の成熟度」について、「Introducing the RevOps Maturity Model and Assessment」を基に次項で詳しく紹介していきます。
まずは、「外部機能の11要素」を紹介します。
ここでいう「外部機能」とは、見込み客があなたの会社や製品・サービスについて知る際の体験、購入体験、製品導入、契約更新に至るまでの体験(つまり、顧客の関与なくしては進まない要素。解約体験も含む)を指します。
11要素、それぞれに3段階の成熟度があります。
それでは、11の要素を一つひとつ順番に見ていきましょう。
ここでいう「ダークファネル」とは、潜在顧客が購入決定前にたどる、企業側から把握・可視化しづらい経路のことを指します。「Web・SNS上のUGC」や「オフラインでのクチコミ」などがその一例です。つまり、企業側から把握・可視化しづらいファネルで自社に関するクチコミやレビューがあって、潜在顧客の関心を引ける状況がどれぐらいできているかということが問われています。
潜在顧客がどのような属性・人物像なのか、まだ特定できていない状態。自社側からユーザーに働きかけをしない限り(例:認知獲得広告を打つなど)、自社製品・サービスについて議論されることはない。また、SaaSに関するレビューを集約したプラットフォームなどとも提携できていない状況。
自社がターゲットにすべき詳細な人物像(=ペルソナ)は想定できている状態。SaaSのレビューサイトにも自社のページを開設。しかし、ユーザー側が製品・サービスについて自発的に言及・議論してくれず、クチコミやレビューが乏しい状態。
顧客が、周囲の人々と製品・サービスについてオフラインなどで積極的に議論・他者推奨してくれる状態。そして、製品・サービスに関するクチコミ、レビューもオンライン上に充実している状態。
ここでいう「Owned Content(自社コンテンツ)」とは、自社がWeb・SNSで発信する情報を指しています。たとえば、オウンドメディアの記事やSNSで日頃投稿しているコンテンツなどです。自社のWeb・SNS上での影響力、すなわち、顧客の悩みの解決に貢献できるコンテンツの充実度が問われています。
Web・SNS上で、会社紹介や、製品・サービス紹介のコンテンツしか提供できていない状態。
「わたしたちはこんな課題を解決できます」と潜在顧客にアプローチするコンテンツを提供できている。ペルソナ別にコンテンツを用意することや、セミナー・ウェビナーなどイベント情報も提供できている状態。
自社独自の情報を発信できていて、理想的な顧客が直面しうる広範な課題について学べる機会を提供している。顧客が具体的に課題解決できるよう、診断コンテンツ、ベンチマーク、シミュレーターなども提供している。
これは、購買体験のことです。見込み客にとっての「比較検討?購買」の段階で、自社側から提供する体験を指します。たとえば、営業担当者の見込み客への接し方、問い合わせ対応のあり方(見込み客から見た快適さ)などを評価し、快適な購買体験を提供できているかどうかを問うものです。
営業プロセスが場当たり的で、営業チームが従うべきマニュアルも定義されていない状況。創業者がまだ多くの案件に関与しているなど、営業プロセスが属人化している側面が強いことが想定される。
営業プロセスは定義されていますが、リードを部門間で引き継ぐ中で、見込み客に対して案内する内容に一貫性がない。1件のリードに対して、部門間で案内する内容がちぐはぐ、といった状態。また部門間での引き継ぎに時間がかかり、見込み客が問い合わせを行った際に、すぐに回答を得られず待たされてしまう状態。
見込み客がWebサイトからマーケティング担当者、SDR、営業担当者、オンボーディングチームへと引き継がれる際でも、一貫した顧客体験を提供している。また、顧客が製品・価格などについて問い合わせた際にも、折り返しの電話など待たずに理解できるコンテンツも用意されている(例:資料ダウンロードなど)。
ここでいう「チャネル」とは、顧客の製品・サービス購買経路のことです。外部提携企業(ベンダー)を介した購買チャネルなど、経路が複数あることが望ましいとされています。つまり、外部パートナーと協業しながらビジネスを成長させる体制があるかどうかについて問われています。
顧客が製品・サービスについて知ったり、購入したりできるチャネルは1つだけ(例:Webだけ)。
通常、営業担当者またはWebサイトを通じて自社から直接購入してもらう状態。
コンサルティング会社や技術パートナーと提携関係を築くことができている。しかし、提携先のWebサイトでパートナーとして掲載してもらえているものの、積極的に宣伝してもらえている状態ではない。提携先からのリード提供を受動的に待つのみという状態。
さまざまな紹介パートナー、再販パートナー、コンサルティングパートナーがいて、自社の製品・サービスについての顧客向けのコンテンツを作成してくれている。外部の販売パートナーと共にビジネスを成長させる提携関係を確立できている。
契約書の運用のあり方を評価します。契約書を顧客とメールでやりとりしているのか、あるいはCRMと自動連携して効率的・自動的に契約サイクル管理をできているか、といったことを評価します。
重視すべきは「顧客ごとの契約管理をいかに効率的に、自動的にできているか?」という点です。契約管理をすべて営業担当者一人ひとりが属人的に行っていては、契約更改の時期がブラックボックス化するおそれもあり、1件ずつスケジュールを見て取引先にメールするといった労力も必要です。
会社全体で労働生産性を高め、収益を最大化させるために、「契約管理の効率化、自動化」が求められているのです。
メールで契約交渉を進め、契約書は文書(書面、Word、PDFなど)で交わしている。
契約文書作成にCRMを少しずつ活用し始めている。
契約書類の作成・運用・管理にCRMをフル活用し、契約サイクルもツールで管理できている。
オンボーディングとは、新規獲得できた顧客を軌道に乗せるよう(快適に製品・サービスを利用してもらえるよう)推進する取り組みです。ここでは主に、「成約前の提案、質疑応答など、顧客とどのようなやりとりをしていたか?」「それらを全部記録、可視化、共有できているか?」といったことが評価されます。「顧客が本当に望んでいることを、成約後に提供できる体制にしているか?」が問われています。
成約獲得できた案件は、オンボーディングチームに引き渡される。成約までに顧客とやりとりしたメールは、契約書とともにオンボーディングチームに共有される。プリセールス中(契約前の顧客への提案や、質疑応答のやり取り)の内容を文書化して記録を残しておくかどうかは、営業担当者の判断次第という状態。
製品のオンボーディングに必要な情報が、オンボーディングチームに抜け漏れなく引き渡されるよう、引継ぎテンプレートを使用する。引き渡しミーティングは自動的にスケジュールされている。また、すべての契約前の電話の内容が記録されている。
オンボーディングチームを営業プロセスの最終段階に参加させることで、スムーズな引継ぎができている。契約前の電話のプロセス全体の通話録音の分析が行われ、どのような営業プロセス、会話、アプローチだったかを記録している状態。
アダプションとは、契約した製品・サービスが顧客のもとで定着するまでのプロセスです。自社の製品・サービスを契約・導入してくれた顧客のサポートをできているかどうかが問われます。新規顧客がせっかく製品・サービスを導入してくれても、その後上手く活用できず、定着させられなければ後々解約されてしまうかもしれません。よって、「定着」に対する支援も重視するべきだといえます。
オンボーディング後、製品・サービスの定着を推進できるかどうかは顧客次第。自社内のカスタマーサクセスチームは、四半期ごとに顧客の様子を伺うコールをしている。
カスタマーサクセスチームは、顧客と協力しながら、活用定着に向けたプランを定義している。しかし、そのプランは主に自社側の成功(顧客の離反防止)を主眼に置いて作成されている。
カスタマーサクセスは、製品開発およびマーケティング・チームと協力し、顧客が製品から価値を享受できるよう、さまざまな定着支援やセミナー、資料、コミュニティなどを提供している。
「Testimonial」とは「顧客の声」を指します。ここでは、顧客の声(レビュー、クチコミ、導入実績記事など)を求め、集めて、公開する体制ができているかどうかを問われています。つまり、レビューやクチコミをWebサイトなどに掲載し、次なる潜在顧客を引きつける仕組みを整えていることが重要です。
「顧客の声」の提供依頼ができていない。時折、Webサイトなどに掲載する「導入事例」の記事作成をしますが、1件の作成に何カ月もかかっているような状態。
営業担当者一人ひとりが「顧客の声」の提供を、顧客に対して打診しています。得られた声はWebサイトの「導入実績」の欄へ順番に掲載している。「課題>解決策>結果」という同じフォーマットに従ってレビューページや導入実績ページを作っていますが、個別事案からのラーニングなどは提示できていない。
営業アプローチ中、契約後、オンボーディング後、そして新規顧客獲得時など、購買プロセスのあらゆる段階で、組織的に「顧客の声」を求める体制が確立されている。また、さまざまなペルソナから「声」を集めています。ビデオ、音声、テキストで「声」を得て、購入プロセスの初期段階における教訓やアドバイスも盛り込むことができている。
「Referral」とは「紹介」のことです。既存顧客から、「製品・サービスに興味の有りそうな、新たな見込み客」を紹介してもらう体制の有無が問われています。BtoB SaaSにおいて「紹介」は重要です。「既存顧客自身が、実際に製品・サービスを利用して満足しているので、他者推奨してくれる」ということを意味しているからです。
顧客に「新たな見込み客」の紹介を依頼する体制がない状態。
営業の場で「誰か他に、製品に興味の有りそうな人がいたら紹介してくださいね」といった声掛けはしているが、計画的・継続的ではない状態。
顧客が自社と取引を開始するまでの過程を通じて、計画的に紹介を依頼する体制があります。紹介に報いるための「紹介プログラム」を用意し、紹介を獲得する方法を確立できている。
「アップセル」は、「より高単価の製品・サービスを導入してもらうこと」、「クロスセル」は、「別の製品・サービスも追加で導入してもらうこと」を指します。
BtoB SaaSでいうと「アップセル=より高単価の上位プランに契約内容を移行してもらうこと」、「クロスセル=すでに利用しているシステムについて、有料プラグインやオプションサービスを導入してもらうこと」が挙げられるでしょう。
ここでは、アップセル/クロスセルの獲得体制があるかどうかについて問われています。アップセル/クロスセルは、顧客単価を上昇させるために重要な要素であるためです。
アップセルとクロスセルは、顧客のアフターサポートをしている営業担当者次第。アップセルとクロスセルを顧客にアプローチするプロセス(追加で買いたくなるよう、アプローチする仕組み、定まった手順)はない状態。
カスタマーサクセス部門が、営業チームと協力して既存顧客にアプローチし、アップセル/クロスセルを獲得できるよう活動している。
既存顧客からのアップセル/クロスセル獲得に注力できている状態。カスタマーサクセス担当者には、担当顧客の純収益維持に応じて報酬が支払われるなどインセンティブも考えて運用できている。
「Renewal/Churn」とは「契約更新」または「解約」を指しています。製品・サービスの契約更新や、解約が発生した際にどのような流れ・仕組みにしているかを問われています。単に「離反を防止し、契約更新してもらいたい」といった企業視点だけに偏るのではなく、「顧客はこの先、どのように行動したらよいか」について長期継続的に対話する体制をつくることが重要です。
「解約」はすなわち自社にとって、収益減を意味します。BtoB SaaSにおいて解約が発生するのは、製品・サービスの機能面や料金に関する問題だけではなく、サポート面が理由であるケースも考えられます。よって、万が一解約が生じた場合でも、カスタマーサクセスの観点から最後まで顧客と対話・伴走する体制を提供し、企業として信頼を獲得するアプローチが重要です。
契約が切れる1カ月前に顧客へ連絡を取り、更新契約の時期だと知らせている。
更改6カ月前から、翌年の計画について顧客と話し合いを始める体制ができている。しかし、その話し合いは主に「顧客のニーズ、課題」よりも「(企業視点での)契約更改」について行われている状態。
カスタマーサクセスや営業担当者を通じて、顧客の次年度の企業戦略について常に話し合っていて、契約規模が変わる場合も含めて早期に情報共有ができている状態。もし、顧客が更改しない判断をした場合でも、今後顧客はどのように考えて行動したらよいか(ビジネスを継続させるためのアイデアや指針)提案を提供している。
つづいて、「内部機能の11要素」です。
「内部要素」として、収益戦略と組織構造、システム、プロセス、データ活用などが挙げられます。つまり、快適な顧客体験(前項で紹介した11の要素)を提供するために、適切な能力が組織内で整えられているかどうかを問うています。
この11要素についても、仕組み構築の成熟度合いに応じて「ビギナー」「ビルダー」「アドバンスド」の三段階で評価します。
それでは、11の要素を順番に見ていきましょう。
Strategyとは「戦略」のことです。つまり、「ビジネスのゴールに向けて、どのように行動すべきか?」という道しるべが、組織内で明確になっているかどうかが問われています。
組織内で戦略について共通認識を持つことができていないと、部署や個人間で日々の行動がばらばらになったり、ムダ・ムラが生じたりする懸念もあります。よって、組織全体で効率よく収益を最大化させるために「戦略の共有」が問われているのです。
まだ、製品の市場ニーズを把握する実験段階にある。数カ月先にやるべきことを見据えてはいるが、市場投入に向けた明確な戦略をまだ描くことができていない状態。
企業としてのビジョンや、会社全体の今年の目標を立てることができている。しかし、組織内の各部門で戦略がバラバラで、チームもそれぞれの目標に向けて行動している状態。目標はPDCAのたびにアップデートされるため、組織内の各チームが、「いま、何に重点を置いて施策を実行すべきか?」を明確に説明することができない。
3年後の会社の姿を描いた明確なビジョンが策定されている。全社的な目標と、日々の行動指針が明確になっている。また、それらを組織内の全員が把握していて「今年の優先目標」を明確に説明できる状態。
「Org Structure」とは「組織構造」のことです。「収益最大化に向けて、組織構造は適切か?」ということが問われています。具体的には、「レベニューオペレーション(RevOps)の進捗・発展度合いを見るリーダーを置いているか?」「そ