インサイドセールスは、「行動量」だけでは成果が出ない時代になりました。
特にIT・SaaS・クラウドサービス業界では、見込み顧客との接点を持つインサイドセールスが事業成長の生命線と言っても過言ではありません。しかし、多くの企業が「インサイドセールスを内製化したが、人材不足で成果が頭打ちになっている」という悩みを抱えています。
「毎日一生懸命架電しているのに、質の高い商談につながらない」
「ベテランに頼りきりで、新人育成がうまくいかない」
「部門間で責任を押し付け合い、誰もが疲弊している」
もし、このような状況に心当たりがあるなら、それは「人の問題」ではなく、「組織の構造的な問題」である可能性が高いです。
この記事では、インサイドセールスの成果が出ない根本原因を解き明かし、営業企画部が主導してチームを再設計するための具体的な方法を解説します。人材を増やすのが難しい今だからこそ、設計の力で成果を最大化するヒントを掴んでください。
多くのインサイドセールスチームは、架電数やアポイント獲得数といった行動量に焦点を当てたKPIを設定しています。しかし、これらのKPIを達成しても、商談化率や受注率が上がらないという壁にぶつかる企業が後を絶ちません。
この背景には、インサイドセールスチームにおける3つの「よくある誤解」が存在します。
架電数を増やすことは、確かにアポイント獲得の機会を増やします。しかし、量だけを追うと、質の伴わないアポイントが増加します。結果として、商談の途中で話が進まなかったり、受注に至らなかったりする「不毛な商談」が横行し、営業リソースを無駄にしてしまいます。重要なのは、「質の高い商談」を創出することであり、そのためには「行動の質」を向上させる仕組みが必要です。
インサイドセールスメンバーのスキルは、経験や個性によって大きくばらつきます。にもかかわらず、そのスキルが可視化されていなかったり、統一された育成プログラムがなかったりする企業は少なくありません。結果として、成果は一部のベテランに依存し、チーム全体のパフォーマンスが向上しない属人化が進んでしまいます。
マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスの各部門は、それぞれが異なるKPIを追いがちです。「リード獲得数(マーケティング)」「商談化数(インサイドセールス)」「受注数(フィールドセールス)」といった各部門の最適化だけを追求すると、部門間で責任を押し付け合う事態に陥ります。
例えば、インサイドセールスは「マーケティングが渡すリードの質が悪い」と不満を述べ、フィールドセールスは「インサイドセールスが設定する商談の質が低い」と指摘する…といった負のスパイラルが生まれます。
これらの問題は、現場の努力や個人の能力に依存する解決策だけでは不十分です。なぜなら、これらはすべて「組織の構造」に起因するからです。
多くの企業で、インサイドセールスの運用責任は営業やマーケティング部門に属し、営業企画は関与しづらい構造になっています。しかし、先に述べた課題の根本原因は、KPIやプロセス設計の問題であり、これらを事業全体を俯瞰して設計できる営業企画部門こそが、本来担うべき領域です。
インサイドセールスは、単なる営業プロセスの一部ではなく、事業全体の成長を左右するハブです。マーケティングが獲得したリードを営業に繋ぐ「結節点」として、その機能不全は事業全体の成果に直結します。
営業企画は、個々の部門のKPIだけでなく、事業全体の「商談創出数」「受注率」「顧客LTV」といった指標をモニタリングし、全体最適な視点で課題を特定できます。この俯瞰的な視点こそが、部門間の対立を解消し、組織全体としてのパフォーマンスを最大化するために不可欠です。
イ
人材不足という制約がある中で成果を出すためには、個人の能力に依存しない「仕組み」を構築することが不可欠です。営業企画として、以下の3つのポイントに構造的に着手しましょう。
架電数やアポイント数といった最終的な行動量KPIだけでなく、そこに至るまでの中間指標を細かく設定し、分析することが重要です。これにより、ボトルネックがどこにあるのかを特定できます。
これらの指標をCRMやSFA、BIツールなどを活用してダッシュボード化することで、日々の活動を「見える化」できます。これにより、単なる「頑張れ」という精神論から脱却し、プロセスを改善するための具体的な打ち手を講じることが可能になります。
成果の属人化を防ぐには、スキルの可視化と運用ルールの標準化が欠かせません。営業企画が主導して、以下のツールや仕組みを導入しましょう。
メンバーごとのスキルレベル(例:ヒアリング力、課題特定力、提案力など)を客観的に評価し、見える化します。スキルマップの作成は以下のステップで進めます。
トークスキルやヒアリングの質を客観的に評価するためのチェックリストを作成し、育成に活用します。これにより、経験の浅いメンバーでも、質の高い会話を再現できるようになります。
個々の能力に依存せず、誰がやっても一定の成果が出せるよう、プロセス自体を仕組み化します。
インサイドセールスが最高の成果を出すためには、マーケティング部門やフィールドセールス部門との密な連携が不可欠です。営業企画がこの連携のハブとなり、以下の取り組みを進めましょう。
各部門が「自部門のKPI」だけを追うのではなく、「有効商談数」「受注率」「平均商談単価」といった事業全体の成果に直結する共通のモニタリング指標を定めることが有効です。
このような共通指標を軸に連携することで、部門間の責任の押し付け合いを防ぎ、組織全体で課題解決に取り組む文化を醸成できます。
共通KPIをモニタリングするための定期的なミーティングを設けましょう。議論すべき具体的な議題は以下の通りです。
このような建設的な議論を定期的に行うことで、部門間の信頼関係が深まり、課題解決のスピードが格段に向上します。
仕組みを導入するだけでなく、それを組織に定着させるための「組織変革」の視点も重要です。
A社では、インサイドセールスの効率化を目指し、SFAを導入しました。しかし、KPIや運用ルールが曖昧だったため、現場はデータを入力するメリットを感じられず、活用が進みませんでした。結果として、ツール導入に費やした費用と労力は無駄となり、成果は改善しませんでした。
B社では、営業企画が主導し、インサイドセールスの構造変革を以下の3ステップで進めました。
このロードマップに従い、段階的に仕組みを導入することで、現場の反発を抑えつつ、組織全体での変革を成功させました。結果、インサイドセールスの商談化率は30%向上し、人材不足という課題を抱えながらも、事業成長を加速させることに成功しました。
「インサイドセールスの人材不足」は、一朝一夕に解決できる問題ではありません。しかし、営業企画が「現場の頑張り」に依存するのではなく、インサイドセールスチームの構造そのものを見直すことで、限られたリソースでも劇的に成果を改善できます。
今回の内容をまとめると、以下の3つのポイントが重要です。
あなたの企業が抱えるインサイドセールスの悩みは、もしかすると「人の問題」ではなく、「構造の問題」かもしれません。
ぜひ、この機会に営業企画の視点からインサイドセールスチームの設計を見直し、再現性の高い組織を作り上げていきましょう。
ビズブーストは、BtoB企業のインサイドセールス組織設計を専門としています。
人材不足の課題を抱える企業様向けに、KPI設計から運用体制の構築、スキル標準化まで、貴社の状況に合わせた最適な「仕組み」づくりを支援します。
もし、この記事で解説したような「構造的な課題」に直面しているようでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。
貴社のインサイドセールスを「成果を出す組織」へと変革しませんか?