あなたは今、インサイドセールスをアウトソースしているものの、その成果に不満を感じているかもしれません。
月次のレビュー会議では、代行会社から「今月はこれだけ架電しました」「これだけのアポイントを獲得しました」と報告される。しかし、そのアポイントから商談に進むのはごく一部。営業部門からは「アポイントの質が低い」「全然受注につながらない」と不満の声が上がっている。
あなた自身も、なぜ思うような成果が出ないのか、その原因を漠然と感じているのではないでしょうか。「やはり外注では質の高いインサイドセールスは難しいのか……」と、半ば諦めかけているかもしれません。
もしそう感じているなら、それはあなたの会社のインサイドセールス外注が形骸化”しているサインです。
しかし、その根本原因は、必ずしも代行会社の能力不足にあるわけではありません。むしろ、発注側であるあなたの会社が、インサイドセールス代行の活用方法を間違えている可能性が高いのです。
本記事では、IT・SaaS企業でよく見られる「インサイドセールス外注の失敗要因」を紐解きながら、成果を出すために発注側が主導で握るべき3つの鍵を具体的に解説します。そして、「発注側が変われば成果も変わる」という希望を提示し、明日からすぐに実践できる具体的な打ち手を提示します。
多くのIT・SaaS企業が陥るインサイドセールス外注の失敗パターンは、実は共通しています。あなたの会社でも、これらの課題に心当たりがないか確認してみてください。
最もよくある失敗は、代行会社の提出するレポートを「アポ数」「架電数」という量的な指標だけで評価してしまうことです。
たしかに、これらの数値は活動の規模を示しますが、それ自体がビジネスの成果を保証するものではありません。質を問わずに数だけを追い求めると、代行会社は「アポ獲得」を目的化してしまい、結果的に質の低いアポイントが増えてしまいます。
中堅SaaS企業のインサイドセールス代行は、月次目標の50件のアポイントを常に達成していました。しかし、営業部門に連携されたアポイントの多くは、以下のようなものでした。
代行会社のレポートには「アポ獲得数50件」と書かれていても、実態は「商談化の見込みが低いアポ」が大量に含まれていたのです。結果、営業部門の対応工数だけが増え、受注には一切つながりませんでした。
マーケティング、営業、そして代行会社の間で、理想的な顧客像が共有されていないケースも散見されます。この定義が曖昧なままでは、代行会社は誰に、何を、どのように話せば良いのか分からず、手当たり次第に電話をかけることになり、成果が出ないのは当然です。
別のIT企業では、マーケティング部が開催したウェビナーに登録したリードを、そのままインサイドセールス代行に渡していました。
しかし、このリードリストには、以下のような多様な属性の人が含まれていました。
マーケティング部にとっては「ウェビナーに興味を持ってくれたリード」ですが、営業部が求める「いますぐ商談したいリード」とは程遠いものでした。インサイドセールス代行は、リストを上から順に電話しましたが、ほとんどがターゲットではないため、無駄な架電と応酬の繰り返しとなり、大きな時間とコストを失いました。
インサイドセールス代行を導入する際、契約時の期待値が「月XX件のアポ獲得」といった量的な成果に偏りがちです。
もちろんアポ数は重要ですが、それだけを成果のゴールと捉えてしまうと、商談化率や受注貢献といった、より重要なビジネス指標が置き去りになります。代行会社もアポ獲得に全力を注ぐため、結果として「アポは増えたが、売上は増えない」という本末転倒な状況に陥ります。
代行会社からの月次レポートを受け取って終了、という一方通行のコミュニケーションも成果を阻む大きな要因です。活動結果が発注側の営業活動にフィードバックされず、成功事例や失敗事例が共有されないままでは、代行会社は同じ失敗を繰り返すことになります。
クラウドサービス企業では、インサイドセールス代行が顧客から「〇〇という機能があれば導入したい」という要望や、「競合の△△は、こんな機能がある」といった情報を得ていました。しかし、これらの貴重な顧客の生の声は、発注側の営業部門や製品開発部門に共有されることなく、レポートの片隅に埋もれてしまいました。結果、製品は市場のニーズからずれていき、競合との差別化ポイントを見失うことになったのです。
では、どうすればこの状況を打破できるのでしょうか。その鍵は、代行会社に「任せきり」にするのではなく、発注側が主体的に3つの要素をコントロールすることにあります。
インサイドセールス代行の評価指標を、量的な指標から質的な指標へとシフトさせましょう。
具体的には、商談化率や受注貢献度をKPIに加えるのです。これにより、代行会社は単にアポ数を増やすだけでなく、本当に商談や受注につながる質の高いアポイントを意識して活動するようになります。
代行会社との月次・週次レビューでも、「なぜこのアポイントは商談にならなかったのか?」「どうすればこの商談を前に進められたか?」といった、より深い議論が可能になります。
質の高いリードを特定し、成果につなげるためには、発注側が明確な理想顧客像(Ideal Customer Profile:ICP)を定義し、それを代行会社と共有することが不可欠です。
どのような企業規模、業種、役職の人物にアプローチすべきか。彼らはどのような課題を抱えているのか。その課題に対して、自社のサービスがどのように役立つのか。これらの情報を発注側が主導で設計し、スクリプト(トークシナリオ)に落とし込むことで、代行会社は「誰に、何を話すべきか」が明確になり、質の高いインサイドセールス活動を展開できるようになります。
定例会議の目的を、単なる「数値報告会」から「共同の改善ワーク」へと変えましょう。
代行会社が作成した通話記録やアポのフィードバックを共有してもらい、成功したケースと失敗したケースを比較検討します。
「なぜ、このアポは受注につながったのか?」「なぜ、このアポは商談に進まなかったのか?」
この議論を通じて、トーク内容やアプローチの改善点を洗い出し、次の週の活動に活かしていくのです。これにより、代行会社は単なる「電話をかける手足」ではなく、成果を共創する「共同改善パートナー」へと変わります。
ここからは、実際に本記事で紹介した3つの鍵を実践し、成果を出したSaaS企業A社の成功事例をご紹介します。
【登場人物】
【背景】 A社は、以前からB社にインサイドセールス代行を委託していました。毎月一定のアポ数は確保できていましたが、商談化率は常に低く、営業部からは「アポの質が低い」という不満が絶えませんでした。
【マーケティング部長が実践したこと】
【結果】
この成功事例が示すのは、代行会社を「ただの請負業者」として扱うのではなく、「成果を共に創出する共同パートナー」として位置づけることの重要性です。発注側の関与度合いを高めることで、代行会社は単なる手足ではなく、自律的に改善を回す強力な戦力へと変貌するのです。
ここからは、上記3つの鍵を実践するための具体的な打ち手を紹介します。
獲得したアポイントを「Aランク(受注確度が高い)」「Bランク(商談確度が高い)」「Cランク(情報提供のみ)」といった形でスコアリングしてみましょう。
このスコアリングは、営業部門と共同で定義することが重要です。「営業が本当に商談したいアポイント」の基準を言語化することで、インサイドセールス代行の活動目標が明確になります。
インサイドセールス代行は、多くの顧客と接する中で、製品への質問や顧客の課題に関する貴重なナレッジを蓄積しています。これらの情報を定期的に吸い上げ、マーケティング部門のコンテンツ制作や、営業部門の営業トークに活かすことで、外注インサイドセールスは単なる売上貢献だけでなく、会社全体の成長に寄与する存在になります。
ここまで読んだあなたは、すでに「丸投げ」の危険性を理解し、改善の必要性を感じているはずです。ここからは、具体的なアクションプランとして、インサイドセールス代行を成功に導くためのロードマップを3つのステップでご紹介します。
【具体例】
企業規模100〜500名の場合、インサイドセールス外注の成果が上がらない要因として、マーケティング部門と営業部門、そして代行会社の間に「統制役」がいないことが挙げられます。
マーケティング部長であるあなたが、この「成果の定義」と「運用ルール」を握ることで、部署間の認識のズレを防ぎ、インサイドセールス代行を成功へと導くことができるのです。
「インサイドセールス外注がうまくいかないのは、代行会社の力不足だ」と考えていませんか?
しかし、本記事で見てきたように、その多くは「発注側の設計不足」に原因があります。
外注インサイドセールスは、単なる業務委託ではありません。顧客獲得という共通のゴールに向かって、代行会社と協力し、共に改善していく「共同事業」と捉えるべきです。
発注側であるあなたが、本記事で解説した3つの鍵を握ることで、インサイドセールス代行は必ずや、あなたの会社の成長を加速させる強力な武器となります。
まずは、あなたの会社のインサイドセールス活動を「量」から「質」へと見直すところから始めてみてはいかがでしょうか。
本記事では、インサイドセールス外注を成功に導くための3つの鍵と、具体的な実践方法をご紹介しました。
「アポの数」だけを追いかけるのではなく、「アポの質」を高める。そして、代行会社を「手足」ではなく「共同改善パートナー」と位置づける。このマインドシフトが、インサイドセールス代行を成功へと導く第一歩です。
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