「代行に出したけど、成果が出ない」
IT・SaaS企業のマーケティング部長が抱えるジレンマ
あなたは今、インサイドセールスをアウトソースしているものの、その成果に不満を感じているかもしれません。
月次のレビュー会議では、代行会社から「今月はこれだけ架電しました」「これだけのアポイントを獲得しました」と報告される。しかし、そのアポイントから商談に進むのはごく一部。営業部門からは「アポイントの質が低い」「全然受注につながらない」と不満の声が上がっている。
あなた自身も、なぜ思うような成果が出ないのか、その原因を漠然と感じているのではないでしょうか。「やはり外注では質の高いインサイドセールスは難しいのか……」と、半ば諦めかけているかもしれません。
もしそう感じているなら、それはあなたの会社のインサイドセールス外注が形骸化”しているサインです。
しかし、その根本原因は、必ずしも代行会社の能力不足にあるわけではありません。むしろ、発注側であるあなたの会社が、インサイドセールス代行の活用方法を間違えている可能性が高いのです。
本記事では、IT・SaaS企業でよく見られる「インサイドセールス外注の失敗要因」を紐解きながら、成果を出すために発注側が主導で握るべき3つの鍵を具体的に解説します。そして、「発注側が変われば成果も変わる」という希望を提示し、明日からすぐに実践できる具体的な打ち手を提示します。
目次
1. 成果を阻む4つの「よくある課題」と、その裏にある真実
多くのIT・SaaS企業が陥るインサイドセールス外注の失敗パターンは、実は共通しています。あなたの会社でも、これらの課題に心当たりがないか確認してみてください。
1. 「アポ数・架電数」レポートに潜むワナ
最もよくある失敗は、代行会社の提出するレポートを「アポ数」「架電数」という量的な指標だけで評価してしまうことです。
たしかに、これらの数値は活動の規模を示しますが、それ自体がビジネスの成果を保証するものではありません。質を問わずに数だけを追い求めると、代行会社は「アポ獲得」を目的化してしまい、結果的に質の低いアポイントが増えてしまいます。
【失敗事例】数値は完璧、でも成果はゼロ
中堅SaaS企業のインサイドセールス代行は、月次目標の50件のアポイントを常に達成していました。しかし、営業部門に連携されたアポイントの多くは、以下のようなものでした。
- 「担当者はいたが、決裁権はなし。情報収集段階で、導入時期は未定。」
- 「『話を聞くだけなら』と承諾しただけで、具体的な課題もなければ、予算もゼロ。」
- 「すでに他社サービスを導入済みで、比較検討の意思は低い。」
代行会社のレポートには「アポ獲得数50件」と書かれていても、実態は「商談化の見込みが低いアポ」が大量に含まれていたのです。結果、営業部門の対応工数だけが増え、受注には一切つながりませんでした。
2. リード定義が曖昧な「ターゲット像」のズレ
マーケティング、営業、そして代行会社の間で、理想的な顧客像が共有されていないケースも散見されます。この定義が曖昧なままでは、代行会社は誰に、何を、どのように話せば良いのか分からず、手当たり次第に電話をかけることになり、成果が出ないのは当然です。
【失敗事例】部門間で「良いリード」の定義がバラバラ
別のIT企業では、マーケティング部が開催したウェビナーに登録したリードを、そのままインサイドセールス代行に渡していました。
しかし、このリードリストには、以下のような多様な属性の人が含まれていました。
- 製品導入を検討している企業の担当者
- 同業他社のマーケティング担当者
- 学生や個人事業主
マーケティング部にとっては「ウェビナーに興味を持ってくれたリード」ですが、営業部が求める「いますぐ商談したいリード」とは程遠いものでした。インサイドセールス代行は、リストを上から順に電話しましたが、ほとんどがターゲットではないため、無駄な架電と応酬の繰り返しとなり、大きな時間とコストを失いました。
3. 「アポの数」に偏った期待値設定
インサイドセールス代行を導入する際、契約時の期待値が「月XX件のアポ獲得」といった量的な成果に偏りがちです。
もちろんアポ数は重要ですが、それだけを成果のゴールと捉えてしまうと、商談化率や受注貢献といった、より重要なビジネス指標が置き去りになります。代行会社もアポ獲得に全力を注ぐため、結果として「アポは増えたが、売上は増えない」という本末転倒な状況に陥ります。
4. フィードバックが機能しない「一方通行」の連携
代行会社からの月次レポートを受け取って終了、という一方通行のコミュニケーションも成果を阻む大きな要因です。活動結果が発注側の営業活動にフィードバックされず、成功事例や失敗事例が共有されないままでは、代行会社は同じ失敗を繰り返すことになります。
【失敗事例】顧客の声が埋もれ、機会を損失
クラウドサービス企業では、インサイドセールス代行が顧客から「〇〇という機能があれば導入したい」という要望や、「競合の△△は、こんな機能がある」といった情報を得ていました。しかし、これらの貴重な顧客の生の声は、発注側の営業部門や製品開発部門に共有されることなく、レポートの片隅に埋もれてしまいました。結果、製品は市場のニーズからずれていき、競合との差別化ポイントを見失うことになったのです。
2. 成果を出すために発注側が握るべき3つの鍵
では、どうすればこの状況を打破できるのでしょうか。その鍵は、代行会社に「任せきり」にするのではなく、発注側が主体的に3つの要素をコントロールすることにあります。
鍵1:KPIを「架電・アポ」から「商談化・受注貢献」に拡張する
インサイドセールス代行の評価指標を、量的な指標から質的な指標へとシフトさせましょう。
具体的には、商談化率や受注貢献度をKPIに加えるのです。これにより、代行会社は単にアポ数を増やすだけでなく、本当に商談や受注につながる質の高いアポイントを意識して活動するようになります。
代行会社との月次・週次レビューでも、「なぜこのアポイントは商談にならなかったのか?」「どうすればこの商談を前に進められたか?」といった、より深い議論が可能になります。
鍵2:理想顧客像(ICP)とシナリオを主導で設計する
質の高いリードを特定し、成果につなげるためには、発注側が明確な理想顧客像(Ideal Customer Profile:ICP)を定義し、それを代行会社と共有することが不可欠です。
どのような企業規模、業種、役職の人物にアプローチすべきか。彼らはどのような課題を抱えているのか。その課題に対して、自社のサービスがどのように役立つのか。これらの情報を発注側が主導で設計し、スクリプト(トークシナリオ)に落とし込むことで、代行会社は「誰に、何を話すべきか」が明確になり、質の高いインサイドセールス活動を展開できるようになります。
鍵3. 週次・月次レビューを「共同改善ワーク」に変える運営設計
定例会議の目的を、単なる「数値報告会」から「共同の改善ワーク」へと変えましょう。
代行会社が作成した通話記録やアポのフィードバックを共有してもらい、成功したケースと失敗したケースを比較検討します。
「なぜ、このアポは受注につながったのか?」「なぜ、このアポは商談に進まなかったのか?」
この議論を通じて、トーク内容やアプローチの改善点を洗い出し、次の週の活動に活かしていくのです。これにより、代行会社は単なる「電話をかける手足」ではなく、成果を共創する「共同改善パートナー」へと変わります。
3. 成功のストーリー:発注側が変わったことで、成果が劇的に改善した事例
ここからは、実際に本記事で紹介した3つの鍵を実践し、成果を出したSaaS企業A社の成功事例をご紹介します。
【登場人物】
- A社:従業員数150名のHR系SaaS企業
- B社:A社のインサイドセールス代行を請け負う代行会社
- 読者像:A社のマーケティング部長
【背景】 A社は、以前からB社にインサイドセールス代行を委託していました。毎月一定のアポ数は確保できていましたが、商談化率は常に低く、営業部からは「アポの質が低い」という不満が絶えませんでした。
【マーケティング部長が実践したこと】
1. KPIの再設計
- 従来の「アポ数」に加え、「商談化率」をKPIとして設定。
- アポイントの質をA~Cの3段階でスコアリングする基準を策定し、「決裁権の有無」「導入時期」などを代行会社と共通言語化しました。
2. ICPとシナリオの主導設計
- マーケティング部長が営業部長と連携し、真の理想顧客像(ICP)を再定義。「従業員数100〜300名の中小企業の人事担当者」に絞り込みました。
- ターゲットが抱える「採用業務の非効率性」という課題に焦点を当て、代行会社が使うトークスクリプトを全面的に見直しました。
3. 共同改善ワークの実施
- 毎月の定例会議を「数値報告」から「改善ワーク」へと変更。
- 定例では、B社が獲得した「Aランクのアポ」と「Cランクのアポ」のトーク内容を比較。
- 「Aランクのアポでは何が効果的だったか?」といった議論を重ね、毎週スクリプトやアプローチを修正していきました
【結果】
- アポ数: 導入後3か月間は、アポ数は横ばい。
- 商談化率: 3か月後には、商談化率が従来の2.5倍に向上。
- 受注貢献: 最終的に、インサイドセールス経由での受注数が1.8倍に増加。
この成功事例が示すのは、代行会社を「ただの請負業者」として扱うのではなく、「成果を共に創出する共同パートナー」として位置づけることの重要性です。発注側の関与度合いを高めることで、代行会社は単なる手足ではなく、自律的に改善を回す強力な戦力へと変貌するのです。
4. 成果を出すための実践的な「3つの打ち手」
ここからは、上記3つの鍵を実践するための具体的な打ち手を紹介します。
打ち手1:アポの質をスコアリングし、貢献度を可視化する
獲得したアポイントを「Aランク(受注確度が高い)」「Bランク(商談確度が高い)」「Cランク(情報提供のみ)」といった形でスコアリングしてみましょう。
このスコアリングは、営業部門と共同で定義することが重要です。「営業が本当に商談したいアポイント」の基準を言語化することで、インサイドセールス代行の活動目標が明確になります。
打ち手2:代行が蓄積したノウハウを「逆輸入」する
インサイドセールス代行は、多くの顧客と接する中で、製品への質問や顧客の課題に関する貴重なナレッジを蓄積しています。これらの情報を定期的に吸い上げ、マーケティング部門のコンテンツ制作や、営業部門の営業トークに活かすことで、外注インサイドセールスは単なる売上貢献だけでなく、会社全体の成長に寄与する存在になります。
ここまで読んだあなたは、すでに「丸投げ」の危険性を理解し、改善の必要性を感じているはずです。ここからは、具体的なアクションプランとして、インサイドセールス代行を成功に導くためのロードマップを3つのステップでご紹介します。
【具体例】
- マーケティング部門への還元
代行がよく聞かれる質問や競合情報をコンテンツ企画に反映(例:「〇〇(競合)と比較して、当社のサービスはどうか?」という質問が多いなら、比較資料やブログ記事を作成)。 - 営業部門への還元
代行が顧客から得た「生の声」を、営業チームの商談準備やトークスクリプト改善に活用。
打ち手3:マーケティング部長が「成果の統制役」になる
企業規模100〜500名の場合、インサイドセールス外注の成果が上がらない要因として、マーケティング部門と営業部門、そして代行会社の間に「統制役」がいないことが挙げられます。
マーケティング部長であるあなたが、この「成果の定義」と「運用ルール」を握ることで、部署間の認識のズレを防ぎ、インサイドセールス代行を成功へと導くことができるのです。
5. 最後に:外注インサイドセールスは「共同事業」である
「インサイドセールス外注がうまくいかないのは、代行会社の力不足だ」と考えていませんか?
しかし、本記事で見てきたように、その多くは「発注側の設計不足」に原因があります。
外注インサイドセールスは、単なる業務委託ではありません。顧客獲得という共通のゴールに向かって、代行会社と協力し、共に改善していく「共同事業」と捉えるべきです。
発注側であるあなたが、本記事で解説した3つの鍵を握ることで、インサイドセールス代行は必ずや、あなたの会社の成長を加速させる強力な武器となります。
まずは、あなたの会社のインサイドセールス活動を「量」から「質」へと見直すところから始めてみてはいかがでしょうか。
インサイドセールス代行は「売上」を加速させる投資である
本記事では、インサイドセールス外注を成功に導くための3つの鍵と、具体的な実践方法をご紹介しました。
「アポの数」だけを追いかけるのではなく、「アポの質」を高める。そして、代行会社を「手足」ではなく「共同改善パートナー」と位置づける。このマインドシフトが、インサイドセールス代行を成功へと導く第一歩です。
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