「既存顧客からの商談がなかなか生まれない」「カスタマーサクセスは顧客の課題を深く知っているはずなのに、なぜか営業貢献につながらない」
インサイドセールスの慢性的な人材不足が叫ばれる今、このような悩みを抱えるカスタマーサクセス部門のマネージャーの方は少なくないのではないでしょうか。
特に、新しい顧客の獲得を最優先とするインサイドセールスのチームは、既存顧客へのアプローチまで手が回らず、せっかくのアップセルやクロスセルの機会が埋もれてしまうケースが頻繁に発生しています。
「提案は営業の仕事」という固定観念にとらわれ、貴重な顧客との接点を"守り"の業務だけで終えてしまっては、大きな機会損失です。
しかし、これは同時に、カスタマーサクセスが自社の成長を牽引する主役となるチャンスでもあります。
本記事では、インサイドセールスが不足する時代だからこそ、カスタマーサクセスが攻めに転じ、自ら商談を生み出す組織へと進化するための具体的な設計方法を、明日から実践できるレベルで解説します。
かつてのカスタマーサクセスは、顧客のオンボーディングや課題解決といった「守り」の役割が中心でした。しかし、SaaSビジネスが成熟し、プロダクト間の競争が激化する現代において、その役割は「売上貢献」へと明確にシフトしています。
経済産業省の調査でも、SaaS企業がLTV(顧客生涯価値)を最大化することが重要であると指摘されており、既存顧客からの収益拡大は事業成長の生命線です。
一方で、多くの企業がインサイドセールス人材の採用に苦戦しています。
「商談を生むカスタマーサクセス」を目指す上で、多くの企業が直面する課題があります。自社の状況と照らし合わせながら読み進めてみてください。
インサイドセールス部門が少人数体制の場合、新規案件の獲得を最優先とするため、どうしても既存顧客へのアプローチが後回しになりがちです。その結果、カスタマーサクセスがキャッチした顧客の潜在的なニーズや、追加提案の機会が埋もれてしまうことが多々あります。
多くのカスタマーサクセス担当者は、顧客の課題やニーズを深く理解しています。しかし、「提案は営業の仕事」という役割分担の意識が強く、その情報を営業に連携したり、自ら提案の糸口を探したりする行動が生まれにくい傾向にあります。これは、組織としての営業貢献の妨げになっています。
「気づいた人が営業に報告する」という属人化された連携フローでは、情報連携のタイミングや質が担当者によってバラバラになります。これでは、せっかくの商談の種を拾い上げても、再現性やスケールに乏しく、組織全体としての成果につながりません。
これらの課題を解決し、再現性高く商談を生み出すカスタマーサクセス組織を構築するには、マネージャー主導での組織設計が不可欠です。現場任せではなく、仕組みとして商談を生み出すための3つの設計ポイントを解説します。
カスタマーサクセスが顧客との対話から得た商談の種を、営業チームに効果的に連携するための仕組みを構築します。
まずは、顧客との会話内容や利用状況を記録するSFA(Sales Force Automation)/CRM(Customer Relationship Management)を、営業貢献につながる「情報の宝庫」に変えることから始めます。
【記録すべき具体的な項目例】
これらの項目をSFA上でカスタマーサクセスが入力・更新することで、営業は必要な情報をいつでも確認でき、情報が埋もれるのを防ぎます。
ただ情報を記録するだけでなく、重要な情報が入力された際に自動で営業に通知する仕組みを導入します。
【具体的な設定例】
「商談トリガー」のチェックボックスにチェックが入った瞬間、SlackやTeamsに「【商談機会あり】○○社の△△様より××の追加利用について相談あり」といった通知が自動で送信されるように設定します。これにより、連携漏れがなくなり、営業はタイムリーにアクションを起こすことができます。
カスタマーサクセスと営業のマネージャー、担当者間で定期的なミーティングを設け、商談の種になり得る情報を持ち寄る場を設けます。
【週次ミーティングの具体的なアジェンダ例】
「商談を生み出す」という新しい役割を浸透させるには、担当者の行動を後押しする評価制度と、必要なスキルを身につけるための教育が必要です。
担当者の行動評価に「営業への接続件数」「アップセルトリガー発見数」といった新しいKPI(重要業績評価指標)を組み込みます。重要なのは、実際に提案した件数や受注金額ではなく、「連携につながった発見の質・量」を評価することです。
【KPI設定の考え方】
「提案は営業の仕事」という思い込みを払拭するため、マネージャーが中心となり、営業貢献につながるスキルを体系化します。
【教育・ナレッジ設計の具体例】
最後に、マネージャーがリードして組織全体に「カスタマーサクセスも売上貢献にコミットするという文化を根付かせることが重要です。
単なる連携件数ではなく、「どんな会話から始まり、どんな情報がきっかけで、誰に連携し、最終的にどうなったか」というストーリーとして成功事例をチーム全体に共有します。これにより、担当者は「自分もできるかも」と具体的にイメージでき、モチベーションが高まります。
インサイドセールスとカスタマーサクセスの連携は、企業の組織体制によって最適な形が異なります。ここでは、代表的な2つのモデルをご紹介します。
このモデルは、インサイドセールスのリソースに余裕があり、既存顧客へのアプローチもインサイドセールスが担うケースです。
メリット:
デメリット:
このモデルは、インサイドセールスが新規開拓に特化し、既存顧客へのアップセル・クロスセルはすべてカスタマーサクセスが起点となるケースです。
メリット:
デメリット:
あなたのチームの状況に合わせて、最適なモデルを検討してみてください。
インサイドセールスの人材不足は、企業にとっての課題であると同時に、カスタマーサクセスが自社の存在意義を高め、事業の成長を牽引するチャンスでもあります。
「提案は営業の仕事」という固定観念を捨て、顧客との対話から得られる情報を組織の財産として活かし、自ら商談の糸口を創出する。 この新しい役割を担うカスタマーサクセス組織を構築できるかどうかが、今後のSaaSビジネスの競争力を大きく左右するでしょう。
本記事でご紹介した3つの設計ポイントを参考に、ぜひあなたのチームでも「商談を生み出すカスタマーサクセス」への変革を始めてみてください。
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