制作会社から「サービスサイトを分けましょう」と提案された。上司からは「他社のようなサービスサイトを作れないか」と言われた。それなのに、いまのコーポレートサイトと何が違うのかを社内に説明できない。そんな状態で判断を迫られていないでしょうか。
総務省が平成29年(2017年)まで実施していた「通信利用動向調査(企業編)」では、企業がホームページを開設する目的の1位は一貫して「会社案内、人材募集」(最終回93.7%・回答企業2,406社・複数回答)でした。この設問は平成29年調査を最後に廃止されましたが、私たちが支援の現場で見てきた限り、会社案内を目的に作られたサイトが大半という構図はいまも大きく変わっていません。
一方で見込み顧客は、商談の前にサイトを見て比較を始めています。会社案内しかないサイトでは、気づかないうちに候補から外れている可能性があります。
出典:総務省「平成29年 通信利用動向調査(企業編)」(図表2-3)
ただし、本当の問いは「サービスサイトを作るべきか」の二択ではありません。
既存サイト内のページ拡充・独立したサービスサイト・LPという3つの選択肢から、自社に合う「器」を選ぶことです。この記事では、サービスサイトの定義とコーポレートサイト・LPとの違いを整理したうえで、商材数・検討期間・広告出稿・運用体制の4つの軸で自社の結論を出せるチェック表を用意しました。
今回は作らなくていい、という結論もありえます。自社が作るべき器を自分の言葉で社内に説明できる状態が、この記事のゴールです。
サービスサイトとは、特定の商品・サービスに特化して、見込み顧客の検討を前に進めるためのWebサイトです。
重要なのは、なぜ「分ける」という発想が生まれるのかです。商材が1つのうちは、コーポレートサイトの事業内容ページで説明が足りる場合が多いでしょう。しかし商材が増え、それぞれの読み手が異なってくると、会社案内の1ページではどの読み手にも説明しきれなくなります。
ここで初めて、サービスごとに専用の場所を作るという選択肢が現実味を帯びます。
そしてWebサイトの種類は、名前で覚えるのではなく「誰に向けて、購買プロセスのどこを担うか」という軸で捉えると整理しやすくなります。
この後の違いの説明も判断基準も、すべてこの種類と役割で説明できます。
| 種類 | 主な読み手 | 担う購買プロセス | 典型的なゴール |
| コーポレートサイト | 顧客・株主・求職者・取引先など全方位 | 取引してよい会社かの確認 | 会社への信頼の担保 |
| サービスサイト | 特定の商材の見込み顧客 | 商談前の下調べ〜比較検討 | 問い合わせ・資料請求など検討の前進 |
| LP(ランディングページ) | 広告・キャンペーンからの流入者 | 単一の訴求の検討〜申込 | 申込・資料請求を1ページで完結 |
| オウンドメディア | 課題を調べている潜在顧客 | 課題への気づき〜情報収集 | 見込み客との接点づくりと育成 |
| 採用サイト | 求職者 | (購買ではなく採用の意思決定) | 応募 |
サービスサイトの近縁語として「ブランドサイト」という言葉もあります。商材の世界観やブランドイメージの訴求に寄せたサイトで、見込み顧客に向けて商材を訴求するという骨格はサービスサイトと共通です。
この5種類のサイトで押さえたいのは、1つのサイトがすべての役割を兼ねようとすると、どの読み手にも刺さらなくなるという点です。
たとえば「うちはコーポレートサイトしかなく、LPは広告のたびに使い捨てで作っている」という現状も、この役割に当てはめると「見込み顧客の比較検討を担う情報がサイトに無い」となります。
役員・広報・営業への社内説明や、代理店がクライアントにサイト構成を提案する場面でも、この5種類のサイトは共通言語の分類として活用できます。
サービスサイトの読み手は見込み顧客であり、させることは「検討を一歩前に進める行動」です。 読み手の場面を具体的にすると、商談前の下調べ、複数社の比較検討、そして社内説明の材料集めです。BtoBの検討では、担当者が上司に説明するために料金の目安や導入事例を探しにくる、という場面が典型です。
このときサイト側に用意すべきなのは、資料ダウンロード・問い合わせ・事例の閲覧といった行動の受け皿です。
同じ会社のサイトでも、会社案内を読みにくる読み手とは目的も場面も異なります。では、いま持っているコーポレートサイトと具体的に何が違うのか。次で4つの観点に分けて見ていきます。
サービスサイトとコーポレートサイトは、目的・ターゲット・情報の深さ・管轄部署の4つの観点で別物です。違いの本質は見た目ではなく、「誰に向けて、購買プロセスのどこを担うか」にあります。
| 観点 | コーポレートサイト | サービスサイト |
| 目的 | 会社への信頼の担保 | 見込み顧客の検討の前進 |
| ターゲット | 顧客・株主・求職者・取引先の全方位 | 特定の商材の見込み顧客 |
| 情報の深さ | 会社全体を広く浅く | 1つの商材を深く |
| 管轄部署 | 広報・経営企画であることが多い | 営業・マーケティング部門 |
目的の違いは、置かれるコンテンツの違いになって表れます。
冒頭で紹介した総務省の調査が示すとおり、多くの企業のサイトは会社案内として生まれています。会社の信頼を担保する目的なら、会社概要・沿革・IR・採用情報という構成で正解です。
しかし、商材の検討を進めてもらう目的には、その構成では情報が足りません。
ターゲットの違いは、導線の違いを生みます。全方位向けのサイトでは、トップページから会社概要・事業内容・採用情報などが並列に並びます。
見込み顧客にとっては、自分に関係する情報へ2クリック以内でたどり着けない構造になりがちです。読み手を見込み顧客に絞れば、トップから「課題→解決策→事例→問い合わせ」へ一直線の導線を引けます。
情報の深さの違いは、比較検討に耐えるかどうかを分けます。
会社全体を広く浅く紹介するページでは、1つの商材の説明は数行にとどまります。複数社を比較している読み手は、その数行だけでは検討を進められません。
そして見落とされがちなのが管轄部署の違いです。
サイト構成の相談を受けていると、コーポレートサイトは広報や経営企画の管轄であることが多く、サービス情報を厚くしたい営業・マーケティング部門とは更新の優先順位が合わない場合があります。
この社内の構造は、後述する判断の軸4「運用体制」に直結します。
役割が違うだけで、コーポレートサイトが劣っているわけではありません。問題は、会社案内の役割で作られたページに、見込み顧客の検討まで担わせようとしたときに起きます。
「サイトはあるのに問い合わせが来ない」という相談の原因は、デザインの新旧ではなく「誰に向けたページなのか」という構造にあるケースが少なくありません。
ここでは、コーポレートサイトの中のサービス紹介ページのままでは何が足りないのかを具体化します。
私たちが受けてきた相談を振り返ると、足りないものは次の4つに集約されます。
| 1 | 比較検討に耐える情報量 | 2〜3行のサービス紹介では、読み手が社内説明に使う材料(料金の目安・事例・FAQ)になりません。 検討中の担当者は「詳しくはお問い合わせください」の一文の手前で止まり、問い合わせずに他社の情報が揃ったサイトへ移ります。 |
| 2 | 見込み顧客専用の導線 | サービス紹介が会社概要・IR・採用情報と同じ階層に並んでいると、見込み顧客は自分に関係する情報を探して迷います。 読み手にとって関係のないページが多いほど、目的の情報にたどり着く前に離脱しやすくなります。 |
| 3 | 広告・展示会の受け皿 | リスティング広告や展示会でせっかく接点を作っても、飛ばし先が会社案内では、クリックの後にさせる行動がありません。 獲得したリードに「次に見せるページ」が無い状態です。 |
| 4 | 更新の優先順位 | コーポレートサイトが広報管轄の場合、会社情報の更新が優先され、サービス情報や事例の追加は後回しになりがちです。事例が1年前のまま古びると、読み手には「動きのない会社」に見えます。 |
この4つに共通する結末は、見込み顧客が問い合わせをしないまま、静かに候補から外していくことです。
たとえば展示会で名刺交換した相手が翌週サイトを確認したものの、サービスの説明が数行しかなく、比較表に載らずに終わる。これは私たちの観察に基づくモデルケースですが、思い当たる場面がある方は多いのではないでしょうか。
サービスサイトが備える基本のページ構成は次のとおりです。
それぞれが「検討が一歩進む行動」に対応しています。各ページの中身や設計の考え方は、この記事の範囲を超えるため、別記事で詳しく解説します。【リンク設定:① btob サイト制作(アンカーテキスト「BtoB企業のWebサイト制作で押さえる設計の考え方」)】 なお、「サイトを分ける」といっても、必ずしも別ドメインを取る必要はありません。既存サイトのサブディレクトリ(例:自社ドメイン配下の/service/)でも成立します。技術的な選定は判断の後で構いません。 ここまでで「広告の受け皿」という言葉が出ました。受け皿ならLPでもよいのではないか、という疑問が残っている方も多いはずです。次で整理します
最初に言葉の交通整理をします。「LP(ランディングページ)」には、広告の飛ばし先として作る1枚もののページという意味と、検索などでサイトに最初に着地するページという意味の2つがあります。この記事では前者を指します。
そのうえで、両者の違いは「何をさせるページか」で捉えると明確です。LPは1つの訴求に絞って申込や資料請求まで完結させる、回遊させないページです。サービスサイトは複数の情報を行き来させながら検討を前に進めさせる、回遊させるサイトです。
| 観点 | サービスサイト | LP |
| 促す行動 | 比較・納得のための材料集め | 1つの訴求で申込・資料請求まで完結 |
| ユーザ導線 | 回遊させる | 回遊させない |
| 効果的な場面 | 検討期間が長い商材・継続的な検索流入の受け皿 | 広告・単発キャンペーンの受け皿 |
使い分けの目安は、商材の検討のされ方です。単価が低く即断できるスポット業務であれば、LP1枚で申込まで完結する場合があります。導入に稟議が必要なシステム商材のように、比較と社内説明を経る商材は、LP1枚では説明しきれず、行き来できる情報の置き場としてサービスサイトが必要になります。
また、両者は択一ではなく組み合わせるものです。広告からLPで最初の反応を受け、検討が続く相手にはサービスサイトで比較材料を提供する、という接続ができます。
LP制作の費用や作り方はこの記事では扱いません。【リンク設定:⑤ lp制作 費用(後続記事公開後・アンカーテキスト「LP制作費用の相場と予算配分」)】 ここまでで器の選択肢が出揃いました。どの器が要るかは、自社の商材と施策の条件で決まります。
判断に入る前に、1つだけ数字を確認してください。自社のサービス紹介ページの月間PV(閲覧数)と、そこから発生した問い合わせ件数です。
GA4などのアクセス解析を入れていても、この2つの数字を即答できる方は多くありません。現状値があるだけで、この後の判断が「なんとなく」から数字のある議論に変わります。
そのうえで、分けるべきかどうかは次の4つの軸で判断できます。私たちがサイト構成の相談を受けてきた範囲では、この4つを確認すると結論の方向がほぼ定まります。
「商材が複数なら分ける」という基準だけでは、実務の判断には足りません。
商材の「数」だけでなく、「顧客層が違うか」で見ます。顧客層の違う商材が2つ以上あると、1つの導線で両方の読み手に刺さる構成は作りにくくなります。
分けるほうがよい状態は、商材が2〜5つあり、それぞれ顧客層や用途が異なる場合です。たとえば受託開発と自社パッケージ販売を持つ会社では、読み手が情報システム部門と経営層に分かれ、求める情報も違います。
1つのページで両方に語りかけると、どちらにも刺さらない説明になりがちです。
分けないほうがよい状態は、商材が1つの場合、または複数あっても同じ顧客層に同じ文脈で売っている場合です。
この場合は既存サイト内のページを厚くするほうが、情報も運用も分散しません。
自社の商材が、どのように検討されて買われているかを見ます。検討の長さは、必要な情報量を決めます。
分けるほうがよい状態は、検討に数週間から数カ月かかり、複数社比較や稟議を経る場合です。読み手は事例・料金の目安・FAQを行き来しながら社内説明の材料を集めるため、それに耐える器が必要になります。
一方、即断即決に近い低単価・スポット型の商材であれば、LP1枚で完結する場合もあります。
検討期間という軸は、最初の地図で示した「購買プロセスのどこを担うか」を自社の商材に当てはめる作業ともいえます。
広告や展示会の予定があるかを見ます。集客施策を打つなら、飛ばし先となる専用の受け皿が必要です。
分けるほうがよい状態は、広告・展示会でリードを獲得しているのに「次に見せるページ」が無い、または飛ばし先が会社案内になっている場合です。リスティング広告を始めたいが、飛ばし先にできるページが会社概要しかない、という相談は珍しくありません。
逆に、集客施策を打っていないなら、器より先に集客の検討が必要です。器だけ立派にしても、人が来なければ成果は生まれません。
また、受け皿がLPで足りるのかサービスサイトまで要るのかは、単発キャンペーン中心か、継続的な検索流入や指名検索を受けるかで分かれます。
最後の軸は、作った後を左右する運用体制です。事例の追加や情報の更新を誰がどの頻度で行うか、担当を決められるかを見ます。専任である必要はありません。
担い手が決まっていないなら、分けないほうがよい状態です。サイトが2つになれば更新対象も2つになり、両方が古くなります。
「公開後1年で新着情報が止まり、事例が古いまま」という状態のサイトを2つ持つことになりかねません。「回らないから分けない」は逃げではなく、正当な判断です。
あわせて、管轄の整理も運用体制の一部です。コーポレートサイトが広報管轄でも、サービスサイトは営業・マーケティング部門が持つという分担ができます。
誰のものかを先に決めておくと、更新の優先順位の問題(前述の「足りないもの」の4つめ)を構造から解消できます。
4つの軸を1枚にまとめます。「分けるほうがよい状態」に該当するかを軸ごとに確認し、該当数で結論の方向を出してください。
| 軸 | 分けるほうがよい状態 | 分けないほうがよい状態 | 自社の該当 |
| 軸1 商材数 | 顧客層の違う商材が2つ以上ある | 1商材、または同じ顧客層に同じ文脈で売っている | |
| 軸2 検討期間 | 複数社比較・稟議を経る長い検討 | 即断即決型・低単価・スポット利用 | |
| 軸3 広告出稿 | 広告・展示会の受け皿が必要 | 集客施策を打っていない | |
| 軸4 運用体制 | 更新の担当と頻度を決められる | 更新の担い手が決まっていない |
該当数と結論の対応は次のとおりです。
| 「分ける」側の該当が3〜4軸 | 独立したサービスサイトを検討する段階です |
| 該当が1〜2軸 | 複既存サイト内のページ拡充から段階的に始め、成果と運用の回り方を確認してから独立を再検討します |
| 軸3だけが強く該当 | まずLPで受け皿を作り、検討の続く相手が増えてきたらサービスサイトを検討します |
「商材が3つで顧客層が異なる・稟議あり・広告出稿を予定・担い手は兼務で確保」という会社なら3軸該当で、独立したサービスサイトを検討する段階といえます。
ただし、単一の軸だけで決めないでください。該当が2軸のような境界例では、どの軸がどの程度強く当てはまるかで結論が変わります。
チェック表の該当欄を埋めたら、最初の「種類と役割の地図」とセットで社内資料に転記すると、そのまま提案の土台になります。3軸該当だが1軸の判断に迷う、自社の状況をうまく当てはめられない、という場合は、無料相談で一緒に整理することもできます。
費用面の検討に進む場合の相場観は別記事で解説しています。【リンク設定:③ ホームページ制作 費用(後続記事公開後・アンカーテキスト「ホームページ制作の費用相場と見積の内訳」)】
チェックの結果が「分けない」側に寄った方に、はっきりお伝えします。今回は作らない、は正しい判断になりえます。
分けないほうがよい状態を、条件で例示します。商材が1つで顧客層も1つ。更新の担い手が決められない。サービス紹介ページのPVが月数十件で、器より先に集客の検討が必要。新商材の検証段階で、まずLP1枚で反応を見るほうがよい。
こうした条件に当てはまる場合、独立したサービスサイトへの投資は時期尚早である場合が多いと考えられます。
その場合も、何もしないのではなく中間解があります。コーポレートサイトの中でサービスページ群を厚くする、という進め方です。前述の基本のページ構成をサブディレクトリ内で整え、成果と運用が回ることを確認してから独立を再検討する。
段階を踏めば、最初から大きな投資をする必要はありません。
社内の進め方としては、コーポレートサイトを管轄する広報・経営企画に、先に住み分けの話を通しておくことをおすすめします。
器の変更は管轄をまたぐ話になるためです。
そして、制作会社から提案を受けている方は、この記事の観点をそのまま検証に使ってください。
「なぜこの構成なのか」「なぜ今、独立サイトなのか」と問い返し、理由を購買プロセスで説明できる提案かを確認する。それが、提案を鵜呑みにしないいちばん簡単な方法です。
私たちは、発注しない判断まで含めて器の選択を整理する立場を取っています。サイトを作ること自体が商品である会社との違いは、そこにあると考えています。
サイトから問い合わせが来ない問題の多くは、デザインではなく「誰にどの順で何を見せるか」という構造にあります。
そして自社が作るべき器は、既存サイト内のページ拡充・独立したサービスサイト・LPの三択から、商材数・検討期間・広告出稿の有無・運用体制の4つの軸で、作らない選択も含めて自分で決められます。
明日からの最初の一歩は3つです。
| 1 | サービス紹介ページの月間PVと問い合わせ件数を出す |
| 2 | 4軸チェック表に自社を当てはめ、種類と役割の地図とセットで社内資料に転記する |
| 3 | 結論を社内に持ち帰る |