コラム|ビズブースト株式会社

「人が育たない」インサイドセールスはなぜ属人化する? | チーム運用3原則

作成者: Admin|Sep 29, 2025 2:05:26 PM

「うちのインサイドセールスチームは、特定のメンバーに成果が偏っている」「マニュアルを作っても、結局OJT頼みになってしまう」

もしあなたがインサイドセールスのマネージャーとして、そんな課題に直面しているなら、その根本原因は「チームの属人化」かもしれません。

人材不足が叫ばれるITSaaS業界において、インサイドセールスの内製化は多くの企業にとって重要な戦略です。しかし、せっかく立ち上げたチームが「人が育たない」構造に陥り、採用にコストをかけても成果が頭打ちになるケースは少なくありません。

本記事では、インサイドセールスチームがなぜ属人化するのか、その構造的な問題点を紐解き、限られた人数でも成果を最大化するためのマネージャーが押さえるべき3つの運用原則を解説します。
 

目次

  1. 成果を出すインサイドセールスほど、なぜ“属人化”するのか?
  2. 属人化がインサイドセールスチームに与える「5つの損失」
  3. 属人化から脱却する!マネージャーが押さえるべき3つの運用原則
  4. 再現性のあるチームがもたらす4つの効果と事例
  5. まとめ:再現性のあるチームづくりが、人材不足の壁を乗り越える第一歩

1. 成果を出すインサイドセールスほど、なぜ“属人化”するのか?

まず、インサイドセールスチームにありがちな「属人化」の構造を見ていきましょう。 成果を出すメンバーがいても、そのナレッジがチームに還元されない状態は、実は以下のような構造的な問題が原因であることがほとんどです。

1.1:成果が個人の「経験と感覚」に依存している 

チーム内に成果を出すトップパフォーマーがいる一方で、若手メンバーがなかなか育たない。その背景には、トップパフォーマーの成功が「個人の経験や感覚」に依存している構造があります。彼らの成果は、卓越したヒアリング能力やコミュニケーションスキル、過去の経験からくる判断力に支えられており、言語化・可視化されていません。そのため、他のメンバーは「すごい」とは思うものの、「どうすれば自分も同じようにできるか」がわからず、再現性が生まれないのです。

1.2:「OJT中心」の教育が再現性を阻む

インサイドセールスの新人教育は、OJTOn-the-Job Training)が中心になりがちです。しかし、単に先輩の対応を見て学ぶだけでは、「なぜその対応をするのか」「どのような意図があるのか」といった思考プロセスが伝わりません。結果、トークスクリプトやメールテンプレートが形骸化し、メンバーは目の前のタスクをこなすことだけに終始してしまいます。トラブル発生時も、マニュアルを参照する習慣がないため、個別の対応に頼らざるを得ない悪循環に陥ります。

1.3:マネージャーがプレイヤーを兼ねる」構造が教育を後回しにする

特に100500名規模のIT企業では、インサイドセールスのマネージャーがプレイヤーを兼務しているケースが珍しくありません。自身の目標達成に追われる中で、若手メンバーの育成やチームの仕組みづくりは後回しになりがちです。「時間がないから」とOJTに頼りきりになり、標準化やマニュアル作成といった根本的な課題解決に取り組む余裕がなくなってしまうのです。これは、一時的な人材不足をさらに深刻化させる大きな要因となります。

2. 属人化がインサイドセールスチームに与える「5つの損失」

「うちのチームは属人化しているかもしれない」と感じているなら、その状態を放置すると、以下のような深刻な損失につながります。

  • 機会損失の拡大: 特定のベテランメンバーしか対応できない複雑なリードや、特定の顧客層にしかアプローチできない状態に陥ります。そのメンバーが不在の場合、重要な商談機会を逃してしまうリスクが常に付きまといます。
  • 採用コストの増大と定着率の低下: 新人を採用しても、育つ仕組みがないため早期に離職してしまう悪循環に陥ります。採用活動を繰り返しても人材が定着せず、教育にかける時間とコストが無駄になっていきます。
  • 顧客体験のばらつき: 担当者によって対応品質や提案内容がバラバラになり、顧客が企業に対して抱くブランドイメージが不安定になります。一貫した質の高い顧客体験を提供できなければ、商談化率や契約率にも悪影響を及ぼします。
  • チーム生産性の停滞: トップパフォーマーの成果に依存しているため、そのメンバーが退職したり、パフォーマンスが低下したりした場合、チーム全体の成果が急落するリスクを抱えます。安定して目標を達成できる組織にはなりません。
  • 組織成長の鈍化: 成果につながるナレッジが個人の中に留まり、組織の資産として蓄積されません。新しい市場への参入や、新たなサービスを立ち上げる際に、過去の経験を活かせず、ゼロから試行錯誤することになります。

3. 属人化から脱却する!マネージャーが押さえるべき3つの運用原則

属人化の課題は、個人の努力や根性論で解決できるものではありません。必要なのは、「再現性のあるチーム運営」という視点にシフトすること。マネージャーがチームの「仕組み」を整えることで、人材不足に強い組織をつくることができます。

ここでは、インサイドセールスのマネージャーが今すぐ実践できる3つの運用原則をご紹介します。

3.1:プロセスの標準化と型化

インサイドセールス活動を「見える化」し、活動の手順と判断軸をチーム全体で共通の「型」にすることが最初のステップです。

たとえば、以下のような項目をドキュメント化し、チームで共有する仕組みを作りましょう。

  • リード対応フロー: 問い合わせリード、商談化リードなど、リードタイプごとに最適な対応手順を定義します。複雑なフローになりがちですが、「誰が、いつ、何を判断するのか」を明確にすることで、迷う時間をなくします。
  • アプローチ段階別の対応指針: 初回架電時、メール返信時など、各フェーズでの目標やアクションを明確にします。
  • 共通トークスクリプト、メールテンプレートの整備: 商談獲得率の高いトークスクリプトやメール文面をチームの共通資産として蓄積・活用します。

【実践編】トークスクリプトは「完璧」を目指すな
トークスクリプトは、一度作ったら終わりではありません。顧客の業種別や課題別など、状況に応じた複数パターンのテンプレートをチームで作成し、定期的に更新する運用が重要です。これにより、新人でも顧客の状況に合わせた対応ができるようになります。

3.2:スキルと成果の「見える化」

「なんとなく営業が得意そう」といった感覚的な評価から脱却し、データに基づいた評価・育成に切り替えましょう。

例えば、以下のような指標をKPIとして設定し、メンバーごとに可視化します。

  • アポイント獲得率
  • 商談化率
  • メール返信率
  • コール単価(1コールあたりの成果)

これらのデータを定期的に振り返り、個人フィードバックに活かします。「Aさんはアポ獲得率は高いけど、商談化率が低いな」「Bさんは架電件数は多いけど、アポ獲得率が伸び悩んでいる」といったように、メンバーごとの強み・弱みを定量的に把握することで、具体的な改善策を提示できるようになります。

【実践編】成果分析を「指導」に活かす具体的なフレームワーク 成果が伸び悩むメンバーへのフィードバックに、以下のフレームワークを活用してみましょう。

  1. 課題特定(データ): どの指標が課題なのかをデータから洗い出す。例:「アポ獲得率がチーム平均より低い」
  2. 原因仮説(ヒアリング): メンバーにヒアリングし、原因の仮説を立てる。例:「初回架電でのヒアリングが浅いのかもしれない」
  3. 改善行動(具体策): 改善に向けた具体的な行動を提示する。例:「次回からは、顧客の導入背景を深く聞く質問を2つ追加してみよう」

3.3:OJTから「チーム運営」の仕組みづくりへ

属人化を防ぐには、「個人の頑張り」に依存しない、ナレッジをチーム全体に還元する仕組みを構築することが不可欠です。

マネージャーは、プレイヤーとしての業務だけでなく、「チームをどう動かすか」という視点を持ち、仕組みづくりに時間を投資しましょう。

  • 1回の「ナレッジ共有ミーティング」の制度化: 成果を出したメンバーの成功事例をプレゼン形式で共有する場を設けます。単なる報告会ではなく、**「どういう思考で、なぜその行動をしたのか」**を深掘りして共有することで、他のメンバーの学びを最大化できます。
  • 成果につながる「行動」を褒める文化の醸成: 「アポが取れた」という結果だけでなく、「顧客の課題を深く引き出すための質問が素晴らしかった」といった具体的な行動を褒め、チーム全体に共有します。これにより、再現性のある行動が評価される文化が根付きます。

【実践編】マネージャー自身がプレイヤーを兼務する際の「時間捻出術」
プレイングマネージャーは、仕組みづくりに時間を割くのが難しいのが現実です。まずは自身の業務を棚卸し、「自分がやらなくてもいい業務」や「仕組み化できる業務」を見つけましょう。例えば、簡単なリード振り分けや定型的なレポート作成は、ツールや自動化で対応できないかを検討します。

4. 再現性のあるチームがもたらす4つの効果と事例

属人化から脱却し、再現性のあるチーム運営を実現できれば、人材不足の壁を乗り越え、以下のような効果を享受できます。

  • 育成期間の短縮と早期戦力化: 新人でも「型」に沿って活動できるため、短期間で自走できるようになります。
  • パフォーマンスの底上げ: チーム全体のナレッジが共有されることで、チーム全体の平均成果が向上します。
  • 人材不足に強い組織体制: 担当者が増減しても安定した成果を出し続けられる強固な組織になります。
  • マネージャーの負担軽減: 個別の指導から仕組みの改善に集中できるため、本来のマネジメント業務に時間を使えます。

【事例】A社(SaaS企業)のインサイドセールスチーム改革

従業員数200名規模のSaaS企業であるA社では、ベテランメンバーに成果が集中し、新人メンバーの商談化率が伸び悩んでいました。

【取り組んだ施策】

  1. ナレッジの形式知化: 顧客の課題別・業種別のトークスクリプトを整備し、社内の情報共有ツールで一元管理。
  2. KPIの再設計: 架電件数だけでなく、「初回ヒアリングで課題を深掘りできた数」をKPIに追加。
  3. 1回の「ナレッジシェア会」: メンバー全員が成功事例を発表し、質疑応答を行う場を設ける。

【改革後の成果】

  • 新人の育成期間が3ヶ月から1ヶ月に短縮。
  • チーム全体の商談化率が10%向上。
  • マネージャーは、メンバーの個別の指導から、トークスクリプトの改善や育成計画の策定といった、より戦略的な業務に時間を割けるようになった。

5. まとめ:再現性のあるチームづくりが、人材不足の壁を乗り越える第一歩

インサイドセールスチームの属人化は、一見すると「優秀な人材が少ない」という人材不足の問題に見えます。しかし、その本質は「育つ仕組みがない」という組織構造の課題です。

OJTに依存」「標準化されていない」「育成担当が不在」といった課題を解決し、「人の努力」から「仕組みの工夫」へとマネジメントの舵を切ることで、チームは劇的に変わります。

再現性のあるチームは、少人数でも最大の成果を出し、新人が早期に戦力化する強固な組織へと進化します。今、インサイドセールスの現場マネージャーとして「人が育たない」と感じているなら、それはあなたのチームを変える絶好のチャンスです。本記事で紹介した3つの原則を参考に、再現性のあるチームづくりに挑戦してみてはいかがでしょうか。

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