インサイドセールスを内製化したものの、人材不足の課題に直面し、事業のスケールに限界を感じていませんか?
「採用してもすぐに辞めてしまう」「OJT任せで成果が上がらず、結局エースに頼ってしまう」「KPIが曖昧で、投資対効果が見えない」
もし、こうした悩みを抱えているなら、その根底にあるのは「採用の問題」ではなく「体制設計の問題」かもしれません。多くのIT・SaaS企業が「インサイドセールスは採用が難しい」「人が定着しない」という認識で止まり、根本構造を見直さずに運用レベルで失敗を繰り返しています。
しかし、本来のボトルネックは採用ではなく、再現性のある「仕組みづくり」にあります。そして、それを動かせるのは、事業全体を俯瞰し、中長期の戦略を策定する経営企画部しかいません。
本記事では、IT・SaaS業界の中堅企業が直面するインサイドセールス運用の「成長の壁」を乗り越えるため、経営企画部が主導すべき「仕組みづくり」について、具体的なアプローチと戦略論を解説します。
目次
- 中堅企業が直面するインサイドセールス運用の“成長の壁”
- 経営企画が主導すべき「育てて回す」体制の構築戦略
- 成果指標の再設計と“見える経営”の重要性
- なぜ、今すぐ行動すべきなのか?
1. 中堅企業が直面するインサイドセールス運用の“成長の壁”
多くのIT・SaaS企業において、インサイドセールス部門は商談創出の要として期待されています。しかし、特に100〜500名規模の企業では、その運用において、以下のような構造的な課題に直面しがちです。
1. 人材不足によるインサイドセールス体制のスケール限界
インサイドセールスは、顧客との関係構築から課題ヒアリング、ソリューション提案まで、高度なコミュニケーションスキルが求められる職種です。しかし、採用市場では常に人材が不足しています。
- 高い離職率: せっかく採用してもすぐに辞めてしまうケースが後を絶ちません。その背景には、適切な育成ノウハウの欠如、キャリアパスの不明確さ、不十分な評価制度などが隠されています。「インサイドセールス人材不足」は、単なる採用難ではなく、再現性ある育成・運用体制が構築できていない構造的な問題が根底にあります。
- 事業成長とのギャップ: 事業の成長に合わせた人員の増加が困難な状況が生まれ、新規リードの取りこぼしや、市場機会の喪失につながります。このギャップが広がると、売上目標達成に黄色信号が灯ります。
2. プレイヤー依存、属人化による成果の再現性のなさ
インサイドセールスの業務が特定のプレイヤーに依存し、OJT頼みになっているケースは少なくありません。成功事例がナレッジとして共有・体系化されず、インサイドセールス育成が個人の努力に委ねられているため、成果にばらつきが生じ、組織全体の生産性が向上しません。
- ブラックボックス化する営業ノウハウ: なぜ、そのプレイヤーだけが成果を出せるのか? その理由は「個人の才覚」としてブラックボックス化し、組織の資産になりません。これが分業型営業の限界を露呈し、事業のスケールを妨げるボトルネックとなります。
- 事業継続性のリスク: もしエースプレイヤーが退職したら、商談創出のパイプラインは一気に細ってしまいます。こうした属人的な営業体制から脱却できなければ、事業の安定的な成長は望めません。
3. KPI未整備による“戦略的に語れない営業体制”
インサイドセールスの活動指標(KPI)が、架電数やメール送信数といった表面的なものに留まっている場合、そのインサイドセールス活動のROIや事業への貢献度を客観的に評価することができません。
- 投資対効果の不明瞭さ: 経営層がインサイドセールスへの投資判断を論理的に下せないため、予算獲得が難しくなり、部門の存在意義が軽んじられるリスクがあります。
- 部門間の連携不全: 適切なKPIがないと、インサイドセールスとフィールドセールス、マーケティングといった他部門との連携も難しくなります。部門間の共通言語がないため、営業プロセス最適化も進まず、全社的な営業力向上は絵空事となります。
これらの課題は、インサイドセールスを「人を雇って商談をつくる部署」として捉えている限り、解決は困難です。この「インサイドセールス人材不足」という構造的な課題を解決し、再現性ある事業成長を実現するためには、インサイドセールスを根本から見直すインサイドセールス組織再設計が必要不可欠です。
2. 経営企画が主導すべき「育てて回す」体制の構築戦略
では、これらの課題に対し、経営企画部はどのようにアプローチすべきでしょうか。インサイドセールスを「商談創出インフラ」として再定義し、「育てて回す」仕組みを構築することで、事業成長の基盤を築くことができます。
1. インサイドセールスを「商談創出インフラ」として再定義する
インサイドセールスは、単なる人員配置の問題ではありません。リードを育成し、効率的に商談を創出する事業成長のパイプライン起点として捉え直す必要があります。このインサイドセールス戦略の再設計は、事業全体の成長に直結する営業DX戦略設計であり、経営企画部が中長期的な視点で主導すべきテーマです。
このインフラ化を実現するためには、以下の3つの役割を明確に定義することが重要です。
- ナーチャリング(育成): 獲得したリードを、時間とプロセスをかけて顧客に育てていくプロセスを設計します。単なるメール配信だけでなく、ウェブサイトの行動履歴や資料ダウンロード状況に基づいた個別のコミュニケーション設計が重要です。
- プロファイリング(顧客理解): 見込み客の課題やニーズ、組織構造を深く理解するためのヒアリング項目や、情報共有の仕組みを構築します。この情報が、フィールドセールスにとって質の高い商談創出につながります。
- ターゲティング(見込み客選定): 誰に、いつ、どのようなアプローチをするか、という戦略をデータに基づいて策定します。マーケティング部門と連携し、ターゲット企業の選定基準を明確化することが不可欠です。
2. 「育成・設計・支援」を含めた“育てて回す体制”への移行
採用強化に頼るのではなく、業務構造・KPI・ナレッジ移転の体系化によって、インサイドセールス人材の能力を最大限に引き出す仕組みを構築します。
- 育成:OJTからの脱却
- 体系化されたトレーニングプログラム: 誰がやっても一定の成果が出せるよう、トークスクリプトのフレームワーク、ヒアリング技術、ツールの使い方などを体系的にまとめた研修プログラムを導入します。
- 社内ナレッジの形式知化: 成功事例や商談後のフィードバックを、社内WikiやCRMに蓄積する仕組みを構築します。これにより、個人の経験が組織の資産となり、インサイドセールス育成 スキルトランスファーを可能にします。
- 設計:再現性ある業務フローの確立
- 業務フローの標準化(SOP): リード獲得から商談化、そしてフィールドセールスへの引き渡しまでの一連の流れを**標準作業手順書(SOP:Standard Operating Procedure)**として明確に定義します。これにより、誰が担当しても一定の品質を担保し、属人化を防ぎます。
- ツールとプロセスの連携: CRM、SFA、マーケティングオートメーションツールを連携させ、顧客情報や活動履歴をリアルタイムで共有する仕組みを構築します。これにより、部門間の情報共有不足を防ぎ、営業プロセス最適化を加速させます。
- 支援:フィールドセールスとの連携強化
- 共通の目標設定: インサイドセールスとフィールドセールスが共通の目標(例:パイプライン総額や受注金額)を追うことで、部門間の対立を防ぎ、協力体制を構築します。
- ホットハンドオフの仕組み: インサイドセールスが商談を創出した際、フィールドセールスにスムーズに引き継ぐためのルールを明確に定めます。これにより、商談の質を落とさず、迅速な対応を可能にします。
3. アウトソースを「戦略的内製支援」として捉える設計思想
「すべての業務を自社で抱える」という考え方から脱却し、インサイドセールスの業務の一部を外部に委託することも有効な戦略です。しかし、これを「逃げ」ではなく「戦略的内製支援」と位置づけることが重要です。
- アウトソースすべき業務と内製化すべき業務の切り分け: コールドコールやテレアポといった量的な業務はアウトソースし、顧客との深い関係性を築くための戦略立案や顧客深耕は内製化するといった役割分担を明確にします。
- パートナーシップの設計: アウトソースパートナーを「ただの代行業者」ではなく、「営業プロセス改善の共同パートナー」として捉え、再現性ある営業機能の共創を前提に連携します。これにより、自社はコア業務である「営業の仕組みづくり」に集中でき、商談創出の構造改革を加速させながら、ノウハウを蓄積できます。
3. 成果指標の再設計と“見える経営”の重要性
インサイドセールスを経営資源として活用するためには、その活動を可視化し、経営に直結する指標で評価することが不可欠です。
1. インサイドセールス活動のROIを可視化する
架電数や商談数といった活動量だけでなく、以下のような事業貢献度を示す指標を追うことで、インサイドセールスへの投資を「将来の売上を担保する投資」として評価できるようになります。
- インサイドセールスが創出した商談からの受注率: 商談の質を評価する重要な指標です。
- 商談創出にかかったコスト(CAC): 効率性を判断するための指標で、投資対効果を明確にします。
- LTV(顧客生涯価値)に対するインサイドセールスの貢献度: 単発の受注だけでなく、長期的な顧客価値創出にどれだけ貢献しているかを評価します。
これらの指標を追うことで、経営層への説明責任を果たすだけでなく、インサイドセールス部門の**「経営課題」**への貢献度を明確に示せます。
2. インサイドセールスとフィールドセールスの境界をなくす
インサイドセールスとフィールドセールスを単なる分業関係ではなく、一つの営業プロセスとして捉え直すことが重要です。
- 共通のSFA/CRM: 両部門が顧客情報をリアルタイムで共有できる共通のSFA/CRMを導入・活用し、情報共有不足による機会損失を防ぎます。
- 顧客視点でのプロセス評価: 「リード獲得数」や「商談化率」といった部門ごとのKPIだけでなく、**「顧客が初めて当社を認知してから契約に至るまでの時間」**といった、顧客視点でのプロセス評価も取り入れます。
これにより、部門間の連携が強化され、属人的な営業から脱却し、組織全体の営業力を高めることが可能になります。
3. KPIドリブンで営業プロセスを共通言語化する
インサイドセールス、フィールドセールス、マーケティングといった部門間で、商談化率や受注率といったKPIを共通言語化します。これにより、部門間のサイロ化を防ぎ、データに基づいた議論を行うことができます。
- 経営企画部がIS構想を主導する際、各部門の現状を正確に把握し、課題の特定や改善策の立案を論理的に行えます。
- 全社的なコミットメント: 共通のKPIを追うことで、全社一丸となって営業力の向上に取り組む基盤が整います。
4. なぜ、今すぐ行動すべきなのか?
インサイドセールスを「人を雇うこと」として捉えている限り、インサイドセールス人材不足という課題は常に付きまといます。しかし、インサイドセールスを「商談創出の仕組みづくり」として捉え直せば、営業内製化は企業資産を構築するための投資となります。
営業力が差別化にならない時代において、営業プロセスそのものが競争力になります。その起点であるインサイドセールスを「人材の問題」として片づけるのではなく、経営アセットとしてどう最適化するかが、本部長層に問われています。
この構造改革は、現場の努力だけでは解決できない経営課題であり、中長期的な視点で事業全体を設計できる経営企画部こそが主導すべきテーマです。
貴社のインサイドセールス体制は、本当に事業の成長に貢献する「仕組み」になっていますか? 今こそ、その問いに真摯に向き合い、「育てて回す」インサイドセールス体制への転換に着手すべき時かもしれません。
最後に:貴社の課題解決を支援する「育てて回す」インサイドセールス体制へ
本記事で解説した「育てて回す」インサイドセールス体制への転換は、一朝一夕に実現できるものではありません。しかし、その第一歩を踏み出すことが、貴社の事業成長を加速させる鍵となります。
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