「インサイドセールスチームを立ち上げたものの、採用が思うように進まない」「やっと採用できても、なかなか育たず、成果が出るまでに時間がかかる」
今、多くのIT・SaaS企業で、こうした悩みを抱える営業部長が増えています。
内製化したインサイドセールスチームが「増えない」「育たない」「成果が出ない」という三重苦に直面し、結果的に「作ったが活かせていない」という実情が、多くの営業部門で発生しています。
「人がいないなら、とにかく採用を強化するしかない」
確かに一理ありますが、もはやこの思考だけでは解決できないのが現実です。優秀なインサイドセールス人材は引く手あまたで、獲得競争は激化する一方。限られたリソースでいかに成果を最大化するか、そして組織を再構築していくかが、営業部長の腕の見せ所となっています。
本記事では、インサイドセールスの人材不足という課題に直面する営業部長に向けて、明日からでも実行できる3つの現実的な打ち手を解説します。
目次
1. なぜ「インサイドセールス人材」は増えず、育たないのか?
まずは、インサイドセールスチームを内製化している企業で、多くの営業部長が共通して抱えているであろう現場の課題を、より深く掘り下げていきます。
1.1:慢性的な「リソース不足」という名のジレンマ
多くのインサイドセールスチームは、立ち上げから少人数体制でスタートします。しかし、採用計画が思うように進まず、いつまでも増員できない状態が続くと、既存メンバーには過度な負担がかかります。
- 新規リードへの対応が追いつかない:マーケティング部門が創出するリードが増えても、すべてに十分な対応ができません。
- 既存リードのナーチャリングが疎かになる:見込み顧客を放置してしまい、せっかくの商談機会を逃してしまいます。
こうした状況は、インサイドセールスメンバーの疲弊を招き、離職率の上昇というさらなる人材不足の悪循環につながりかねません。
1.2:「属人化」から抜け出せない育成の壁
インサイドセールスは、トークスキル、ヒアリング能力、情報整理力など、多岐にわたるスキルが求められます。しかし、現場任せの教育体制では、ノウハウが個人の経験に依存し、チーム全体のスキルアップにつながりません。
- 「できる人」と「できない人」の差が広がる:新人教育はOJTが中心となり、トレーナーによって教える内容や質にばらつきが出ます。
- 新人の戦力化に時間がかかる:一人前になるまでに半年から1年を要することも珍しくなく、その間、チームの生産性は低下します。
この状況が続くと、営業部全体にとっての「商談創出機能」が不安定になります。
1.3: 「アポ取り部隊」という誤った認識
インサイドセールスを「とにかく商談をたくさん獲得する部隊」だと考えていませんか?
フィールドセールスや経営層がこの認識を強く持っていると、インサイドセールスは「アポ数」という単純な指標だけで評価されがちです。
- 役割への不満:インサイドセールスメンバーは、電話やメールでの単調なアポ取り業務に追われ、本来の価値(顧客の課題発見、市場インサイトの収集など)を発揮できません。
- データ共有の不備:アポ取得後にフィールドセールスに十分な情報が共有されず、インサイドセールスがせっかく集めた貴重な顧客情報が活用されないという問題も発生します。
これらの課題は、インサイドセールスチーム単体の問題ではなく、商談創出という営業部門全体の機能が崩壊するリスクをはらんでいます。では、この状況を打破するために、具体的にどのような手を打つべきでしょうか。
2. 営業部長が押さえるべき“現実的な3つの打ち手”
「人がいないから成果が出ない」という思考から脱却し、「人がいない前提でいかに成果を出すか」という戦略に切り替えることが重要です。そのために必要な3つの打ち手を紹介します。
打ち手1:インサイドセールスの「活用設計」と「役割再定義」
インサイドセールスの役割を「商談を獲得すること」だけに限定していませんか?
もしそうなら、その考え方自体を見直す必要があります。インサイドセールスは、営業プロセス全体を俯瞰し、改善していくための「司令塔」としての役割を担うことができます。
【役割再定義の具体的なステップ】
- 現状の業務フローを棚卸しする:インサイドセールスチームが現在、どのような業務にどれだけの時間を割いているかを洗い出します。
- フィールドセールスにヒアリングする:フィールドセールスが「どんな情報があれば商談化しやすいか」「どのような商談が受注につながりやすいか」をヒアリングし、インサイドセールスに求める役割を明確にします。
- 役割を再定義する:アポ獲得だけでなく、以下の機能をチームに組み込み、KPIもそれに合わせて見直します。
■失注したリードの掘り起こし(失注フォロー):フィールドセールスが対応を終えたリードをインサイドセールスが定期的にフォローし、再度商談の機会を探ります。
■リードの適格性検証:マーケティングから渡されたリードの質を評価し、フィールドセールスに渡す前に本当に商談化する見込みがあるかを見極めます。
■顧客データの収集と分析:顧客との会話から得られた生の声をSFA/CRMに入力し、フィールドセールスやマーケティング部門にフィードバックします。
役割を再定義することで、インサイドセールスは「アポ数」という単純な指標だけではない、営業部全体のパフォーマンス向上に貢献する重要な存在となり、チームの価値を最大化できます。
打ち手2:営業部内に“インサイドセールス的な機能”を組み込むハイブリッド設計
次に、インサイドセールス機能を営業組織全体で分担する「ハイブリッド」型の組織モデルを検討します。
これは、インサイドセールスの役割の一部を、既存のフィールドセールスメンバーや他の部門が担うことで、リソース不足を補うという考え方です。
【ハイブリッドモデルの具体的なパターン】
- フィールドセールスがインサイドセールス業務を兼務する:
- 自ら担当する既存顧客へのアップセル・クロスセル提案の第一歩として、オンラインでのヒアリングをインサイドセールス的に行う。
- 担当エリアの新規開拓リードに対して、初期の電話アプローチやメールでの情報提供を自身で行う。
- これにより、フィールドセールスは「商談機会の創出」というインサイドセールス業務の重要性を体感できます。
- マーケティング部門がインサイドセールス業務を担う:
- マーケティングオートメーション(MA)ツールを活用し、リードがWebサイトの特定のページを閲覧した際などに自動でメールを送信するナーチャリングフローを構築します。
- これにより、インサイドセールスが直接電話やメールをしなくても、見込み顧客の関心度を高める仕組みを構築できます。
- SFA/CRMを活用した「仕組み」で補完する:
- SFA/CRMのリードスコアリング機能で、顧客のWeb行動履歴や属性情報から商談化の見込み度を自動で点数化します。
- 自動化ワークフロー機能を活用し、特定の条件を満たしたリードに自動でインサイドセールス担当者を割り当て、追客漏れを防ぎます。
このアプローチは、採用が難しい時期でも、既存の組織体制を柔軟に変化させることで、商談創出の機能を維持・強化するのに役立ちます。
打ち手3:部分的外注・アウトソースの活用判断
「すべてを内製で賄う」という考え方を一度捨て、外部の専門家やサービスを活用することも、人材不足を乗り越える現実的な選択肢です。
重要なのは、「何を守り、何を外に出すか」という判断です。
【内製で守るべきコア業務】
自社の強みやノウハウに直結する以下の業務は、内製で守るべきです。
- 営業戦略の設計:ターゲット顧客や市場、提供価値をどう訴求するかといった根幹の戦略。
- スクリプト・トークの設計:自社の商材やサービスに合わせた、独自の強みを伝えるスクリプトやトーク設計。
- 顧客リストの運用・管理:自社にとって価値のある顧客リストの構築・運用。
【外部に委託すべき実行業務】
- 単調なアポ取得業務:ターゲットリストへの架電・メール送付など、量が求められる実行部分。
- リードへの継続的なコンタクト:ナーチャリングリードへの定期的な情報提供やフォローアップ。
- 新規リストの作成:市場から見込み顧客のリストを抽出する作業。
外部のプロに実行部分を任せることで、内製チームはより戦略的な業務に集中でき、コストパフォーマンスを最大化できます。
【外注先の選定ポイント】
- BtoB領域の経験:自社の業界や商材への理解があるか。
- 料金体系:固定報酬制か、アポ数に応じた成果報酬制か。自社の予算と目標に合っているか。
- 報告体制:活動内容や進捗状況をリアルタイムで共有してくれるか。
- カスタマイズ性:自社のスクリプトや戦略に合わせて柔軟に対応してくれるか。
3. 組織として進むべき方向性:人がいない前提の営業設計へ
インサイドセールスの人材不足を乗り越えるためには、組織全体で以下の方向性を目指すことが不可欠です。
3.1:「育てながら使う」インサイドセールス運用フローの構築
新人が入社してから一人前になるまでのフローを仕組み化することで、育成にかかる時間を短縮し、戦力化を早めます。
- KPI分解の具体例:
- 最終目標:月間商談獲得数
- 分解:架電数 → 接続数 → アポ獲得率 → 商談化率
- 新人のKPIを「まずは架電数」「次に接続数」というように、段階的に設定することで、成功体験を積ませながら成長を促せます。
- 育成フローの具体化:
- 1週目:自社のサービス理解、SFA/CRMの操作、スクリプトのロープレ。
- 1ヶ月後:ベテランのシャドーイングを行い、実務を開始。トーク内容を録音し、フィードバックを受ける。
- 3ヶ月後:一人立ちし、定例会で成功・失敗事例を共有し、チーム全体のノウハウとして蓄積する。
3.2:フィールドセールスとの連携強化
インサイドセールスとフィールドセールスが同じ目標を共有し、密に連携する体制を築きます。
- 連携アクションの具体例:
- 週次での合同ミーティング:インサイドセールスとフィールドセールスが参加する定例会で、商談の進捗や受注状況を共有し、お互いの課題や成功事例を議論します。
- SFA/CRM上での情報共有ルールの徹底:インサイドセールスが入力したリード情報をフィールドセールスが必ず確認し、商談結果をインサイドセールスにフィードバックする仕組みを構築します。
4. まとめ:インサイドセールスは「数」ではなく「機能」で考える
インサイドセールスチームの人材不足は、単なる採用の問題ではなく、営業組織全体の設計に関わる根本的な課題です。
重要なのは、「人数が足りないからといって、商談創出を諦める必要はない」ということです。
インサイドセールスを「アポを取る部隊」という人数ベースの考え方から、「営業プロセス全体を最適化する機能」という視点に切り替えることで、限られたリソースでも最大限の成果を生み出すことができます。
本記事でご紹介した「役割再定義」「ハイブリッド化」「部分的外注」の3つの打ち手は、いずれも明日から検討・実行できるものです。
人材採用が難しい時代だからこそ、戦略的な組織設計でライバルに差をつけ、商談創出のボトルネックを解消していきましょう。
よくある質問(Q&A)
Q1:部分外注した場合、社内にノウハウが蓄積されないのでは?
A1: ノウハウを蓄積するためには、外注先との「連携設計」が重要です。単に業務を委託するだけでなく、定期的なミーティングで外注先から得られた「顧客の反応」や「市場の動向」などの情報を共有してもらいましょう。これを自社のSFA/CRMに記録し、社内ノウハウとして活用することで、外注をしながらも学習と成長を続けることができます。
Q2:既存の営業メンバーにインサイドセールス業務を兼務させることへの反発はないか?
A2: 反発を防ぐためには、「インサイドセールス業務は全営業の生産性を高める」という目的を明確に伝え、納得感を得ることが重要です。また、インサイドセールス活動を「単なる雑務」ではなく「商談創出のための戦略的な活動」と位置付け、成果を適切に評価する制度を導入することも有効です。
Q3:インサイドセールスの人材が採用できるまで、チーム立ち上げを待つべきか?
A3: 採用は長期戦になることが多く、待っている間にも商談機会は失われています。まずは、本記事で紹介した「ハイブリッドモデル」や「部分的外注」を活用し、小さな体制からでもインサイドセールス機能を立ち上げることが現実的な選択肢です。これにより、市場での経験を積みながら、将来的な内製化に向けた知見を蓄積できます。
人材不足の波は、むしろ営業戦略を見直すチャンスです。ぜひ、今日から一歩を踏み出してください。
最後に:商談創出のボトルネックを解消する、その一歩を
インサイドセールスの人材不足は、もはや「採用を頑張る」だけで解決できる課題ではありません。限られたリソースの中でいかに成果を最大化するか、そして組織をどう再構築していくかという、営業部長としての戦略的な意思決定が求められています。
本記事でご紹介した「役割再定義」「ハイブリッド化」「部分的外注」の3つの打ち手は、すべて明日から検討・実行できるものです。しかし、「何から手をつけるべきか分からない」「自社に合ったモデルが描けない」とお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。
もし、インサイドセールス組織の立ち上げや再構築に課題を感じていらっしゃるなら、私たちビズブーストにご相談ください。
人材採用が難しい時代だからこそ、戦略的な組織設計で商談創出のボトルネックを解消し、ライバルに差をつけることができます。
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