目次
1. なぜ、あなたの会社はインサイドセールス外注で失敗しているのか?
人員規模100名から500名の中堅SaaS・IT企業で、マーケティング部長や本部長を務めるあなたは、日々このような課題に直面しているのではないでしょうか?
「インサイドセールスを外注しているのに、どうも成果が見えてこない」 「契約した当時は期待していたが、思ったほど商談が増えない…」 「毎月、高額な費用を払っているのに、経営層からは『本当に効果があるのか?』と問われる…」
自社でインサイドセールスのリソースを確保するのが難しく、外部の専門会社に委託する。この選択は、事業をスケールさせる上で非常に合理的な判断です。しかし、多くの企業が、期待した成果を得られず、頭を抱えています。
この「失敗」の原因は、本当に代行会社の能力不足だけでしょうか?
多くのケースで、成果が出ない本当の理由は、依頼する側であるあなたの会社、特にマーケティング部門が抱える**「3つの共通点」**に隠されています。本記事では、その共通点と、今日から実践できる改善策について、具体的な打ち手とともに解説します。
「インサイドセールスを内製化しよう」と決断したにもかかわらず、多くの企業が直面する課題には、構造的な背景があります。
2. 失敗する会社に共通する3つの課題
1. 代行会社に「丸投げ」し、成果定義と検証を放棄している
インサイドセールス代行を導入する際、あなたは「質の高いアポイントメントを大量に獲得してくれる」という期待を抱くでしょう。しかし、その「質」とは具体的に何でしょうか?
- 「理想的な顧客像」が曖昧
代行会社にリスト作成やターゲット選定を任せっきりにしていませんか?「とりあえずIT系の部長クラス」といった漠然とした指示では、代行会社は最適なターゲットを特定できません。結果として、的外れなリードに架電し、せっかくの商談も商談化率が低く、受注に繋がりません。 - 「評価基準」が短期指標に偏っている
代行会社との契約や評価指標が、架電数やアポイントメント獲得数といった「量」の指標に偏っていませんか?成果を短期的な架電数や商談数だけで測ってしまうと、代行会社は「数をこなす」ことに注力し、リードの質やその後の商談化・受注への貢献度を無視しがちになります。重要なのは、その先の商談化率や受注率、そして顧客生涯価値(LTV)への貢献度など、中長期的な視点での成果を定義することです。
失敗事例:SaaS企業A社のケース
A社では、インサイドセールス代行の成果を「月間の商談獲得数」のみで評価していました。代行会社は目標を達成するため、リストの精度よりも量を優先して架電。その結果、商談は増えたものの、「自社のターゲットではない企業からの商談」「意思決定権のない担当者との商談」がほとんどでした。現場の営業からは「代行会社のアポイントは質の低いものばかりで、かえって営業活動の妨げになる」という不満が噴出。最終的に経営層から「アポイントは増えたが、売上には繋がらない。代行は意味がない」と判断され、契約は打ち切りとなりました。
2. マーケティング部門と営業部門の連携が不足している
インサイドセールスは、マーケティング部門が獲得したリードを、営業部門に円滑に引き渡すための「橋渡し役」です。しかし、この両部門の連携がうまくいっていない会社では、せっかくのリードが“活かされない”まま死蔵されてしまいます。
- リードの引き渡し基準が不明確
「アポイントを獲得したら営業に引き渡す」というルールだけで運用していませんか?顧客の課題、興味関心の深度、購買意欲など、営業が商談を進める上で必要な情報が不足していると、営業担当者はリードの優先順位付けができず、結果的に放置してしまいます。 - パイプライン全体の可視化不足
マーケティング部門は「商談数を増やすこと」だけを、営業部門は「受注数を増やすこと」だけを目標にしていませんか?インサイドセールスという共通のチームがあるにも関わらず、それぞれの部署が別々の目標を追いかけると、インサイドセールスの役割が中途半端になり、全体最適が進みません。
失敗事例:SIerB社のケース
B社では、マーケティング部門が展示会で獲得した名刺情報をもとに、インサイドセールス代行に架電を依頼していました。しかし、そのリストには「競合企業」「学生」「単なる情報収集目的の個人」なども含まれていました。代行会社は、リストの精査をせずに片っ端から架電したため、質の低いアポイントばかりが生成され、営業からは「テレアポの質が低い」「リードの背景情報が全くない」と強い不満が寄せられました。マーケティング部門は「これだけアポイントを取っているのに…」と営業に反発し、両部門の対立は深まるばかり。インサイドセールスが両部門の間に挟まれ、機能不全に陥ったのです。
3. 定例ミーティングが「報告会」に終始し、改善サイクルが回っていない
インサイドセールス代行会社との定例ミーティングは、成果を改善するための重要な機会です。しかし、多くの会社がこの機会を活かせていません。
- 事実確認だけで終わってしまう
「先月の架電数は?」「アポイント数は?」といった過去の数字を代行会社から報告してもらうだけで、その数字がなぜ達成できたのか、またはできなかったのかという「要因の深掘り」ができていない。 - 次のアクションが不明確
ミーティングの最後に「では、来月も頑張りましょう」といった抽象的な言葉で終わっていませんか?次に取り組むべき具体的なアクション(「ターゲットリストをこの軸で絞り直す」「トークスクリプトのこの部分を修正する」など)が定まらず、現状維持のサイクルに陥ってしまいます。
失敗事例:クラウドサービス提供企業C社のケース
C社では、週に1回の定例ミーティングをインサイドセールス代行会社と実施していました。しかし、ミーティングは代行会社からの「今週の活動報告」で始まり、終了するまで発注側は口を挟むことがありませんでした。アポイント数が目標未達だった週も、「はい、わかりました。来週もよろしくお願いします」と事実確認で終了。なぜ未達だったのか、どの顧客に響かなかったのか、どのようなトークが失敗したのか、といった深掘りが一切行われず、結果として代行会社は毎回同じ手法を繰り返すことに。費用はかさんでいく一方で、成果は全く上がらず、発注側の不満は募る一方でした。
3. 成果不満を解消する3つのポイントと具体的な打ち手
では、これらの失敗から脱却し、インサイドセールス代行で成果を出すためには、どうすればいいのでしょうか?重要なのは、「発注側のマインドセットを変える」ことです。
1. 代行会社を「作業者」から「パートナー」に変える
まず、最も重要なのは、代行会社を「ただ言われたことをやる業者」ではなく、「共に事業を成長させるためのパートナー」と位置づけることです。
具体的な打ち手:
- 契約前に「期待値と評価基準」を文書化
単に「アポイントを月20件」といった目標だけでなく、「商談化率を〇%に、受注単価を〇〇円に」といった、よりビジネスの成果に直結する指標を共有し、契約書や業務委託契約書に明記しましょう。これにより、発注側と代行側の間で、「何をもって成功とするか」という認識の齟齬がなくなります。 - 代行会社が持っているノウハウを「逆輸入」する
代行会社は、様々な企業のインサイドセールスを支援してきたプロフェッショナルです。彼らが持っている「商談につながりやすいトーク」「効果的なヒアリングの質問」といったノウハウは、あなたの会社の営業チームにとっても貴重な資産です。定期的にノウハウ共有会を開催し、代行会社の中で成果が出ている成功事例を自社の営業チームにフィードバックしましょう。。
2. 「報告会」ではなく「改善会議」を実施する
定例ミーティングの目的を「数字の報告」から「成果を向上させるための議論」へと変革させましょう。
具体的な打ち手
- なぜその数字になったのか、要因を深掘りする
単に「アポイント数が目標未達だった」という事実報告で終わらせず、「なぜ未達だったのか?」を深掘りします。「アポが取れなかったリストの共通点は?」「断られた理由のトップ3は?」といった具体的な質問を投げかけ、代行会社とともに原因を特定します。
- 「次のアクション」を明確にし、責任者を決める
議論の結果、次のアクションを具体的に定義し、誰が(発注側か、代行側か)いつまでに実行するかを明確に合意します。例えば、「来週中にターゲットリストのペルソナを見直す」といったアクションを決め、次回ミーティングでその結果を共有する、といったサイクルを確立します。
3. マーケティング・インサイドセールス・営業の「三位一体」で成果を追う
インサイドセールスを「架電部隊」として切り離すのではなく、マーケティングから営業、そしてその先のカスタマーサクセスまで、一連のパイプライン全体に貢献するチームとして位置づけましょう。
具体的な打ち手:
- 共通のKPIを持つ
マーケティング部門、インサイドセールス代行チーム、営業部門の全員が、「商談化率」「受注率」といった共通のKPIを追う仕組みを導入しましょう。これにより、各部門が自分の役割だけでなく、その次のプロセスに与える影響を意識するようになります。
リードがマーケティング施策から生まれ、インサイドセールスを経て、営業に引き渡され、最終的に受注に至るまでのプロセスを可視化しましょう。各プロセスで「どの段階でリードが停滞しているか」「どこで質が低下しているか」を把握することで、組織全体の改善ポイントが見えてきます。
4. 【ロードマップ】インサイドセールス外注で成功するための3つのステップ
ここまで読んだあなたは、すでに「丸投げ」の危険性を理解し、改善の必要性を感じているはずです。ここからは、具体的なアクションプランとして、インサイドセールス代行を成功に導くためのロードマップを3つのステップでご紹介します。
Step 1: 契約前の「準備フェーズ」
この段階で、いかに代行会社と認識をすり合わせるかが、その後の成果を大きく左右します。
- 理想の顧客像(ICP)とペルソナを明確に定義する
「どのような企業に、どのような担当者(役職、所属部署)に、どのような課題を抱えていてほしいか」を詳細に言語化しましょう。この情報が明確であればあるほど、代行会社は質の高いリストを作成し、効果的な架電が可能になります。 - 契約前に「期待値と評価基準」を文書化する
口頭ではなく、「何をもって成功とするか」を明確に記した文書(契約書やSOW: Statement of Work)を交わしましょう。架電数や商談数といった短期指標だけでなく、商談化率、受注数、平均受注単価など、ビジネス成果に直結する指標を盛り込むことが重要です。 - 代行会社選定で確認すべき5つの質問
成果にコミットしてくれる代行会社を見抜くために、以下の質問をぶつけてみましょう。
• 「貴社の成功事例で、発注側が特に注力したことは何ですか?」(発注側の関与の重要性を理解しているか)
•「商談の質をどのように評価しますか?」(具体的な評価基準を持っているか)
•「商談に至らなかったリードの情報をどのように共有してくれますか?」(情報の深掘りを重視しているか)
•「トークスクリプトはどのように作成し、改善していきますか?」(発注側との共創体制があるか)
•「貴社のインサイドセールス担当者は、当社の製品やサービスをどのように学習しますか?」(自社への理解を深める体制があるか)
Step 2: 運用開始〜3ヶ月の「初期フェーズ」
契約を終え、インサイドセールス代行がスタートしたばかりの時期は、とにかく密な連携と情報の共有が成功の鍵を握ります。
- 週次でのミニ定例会を開催する
最初のうちは、形式的な月次定例だけでなく、週に15〜30分程度の短時間ミーティングを設けましょう。この場で、うまくいったトークや、手応えのなかったリスト、顧客から得られた生のフィードバックなどを共有し、すぐに次のアクションに繋げます。 - 代行会社への自社製品・サービス勉強会を実施する
発注側のあなたが主体となり、代行会社のインサイドセールス担当者向けに、自社の製品・サービスについて深く理解するための勉強会を定期的に開催しましょう。製品の強みや顧客の成功事例、競合との差別化ポイントなどを直接伝えることで、代行会社の担当者は「単なる電話オペレーター」ではなく、「自社の事業を理解したインサイドセールス」へと進化します。
Step 3: 3ヶ月〜6ヶ月の「軌道修正フェーズ」
初期のデータが蓄積されてきたら、それをもとに戦略の修正と改善を繰り返します。
1. データに基づいたPDCAサイクルを回す
「なぜこのリストは商談率が低いのか?」「なぜこのトークでは断られるのか?」**を数値で検証しましょう。
- リスト分析
「従業員数」「業種」「設立年」など、さまざまな軸でリストを分析し、商談化率が高いセグメントを特定します。 - トークスクリプト分析
「導入メリット」を説明する部分で断られることが多いなら、その訴求方法を変更するなどの改善を行います。 - リードソース分析
インサイドセールスが獲得したリードと、インバウンドリード(Webサイトからの問い合わせなど)の商談化率を比較し、より質の高いリードの獲得方法を探ります。
2. 営業部門との連携を強化する
インサイドセールスが苦労して獲得した商談が、営業に引き渡された後どうなっているかを追跡しましょう。
- 「リードサマリー」のテンプレートを作成
営業に引き渡す際に、インサイドセールスが「顧客の課題」「ヒアリングで引き出せた情報」「商談化に至ったキーポイント」などをまとめた「リードサマリー」のテンプレートを作成し、情報の抜け漏れを防ぎます。 - 定期的な合同ミーティングの開催
マーケティング、インサイドセールス代行、営業の三者が集まり、「今月はどのようなリードが受注に繋がったか」「どのようなリードは商談に繋がらなかったか」を議論する場を設けます。
5. まとめ:
外注の成功は、あなたの会社の「準備」と「関与」にかかっている
インサイドセールス代行は、SaaSビジネスの成長を加速させる強力なツールです。しかし、その成功は、代行会社の実力だけでなく、発注側であるあなたの会社の「準備」と「関与」にかかっています。
単なる「作業」を外注するのではなく、「ビジネス成長の仕組み」を共に作り上げるというマインドセットで代行会社と向き合うことで、期待以上の成果は必ず出ます。
もし現在、インサイドセールス代行の成果に不満を感じているのであれば、まずはこの記事で解説した「3つの共通点」にあなたの会社が当てはまっていないか、ぜひ振り返ってみてください。そして、今日からでも遅くありません。まずは、代行会社との次回の定例ミーティングで、「なぜ、この数字になったのか?」と一歩踏み込んで問いかけることから始めてみてはいかがでしょうか。
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