「メンバーの育成に手が回らない」「せっかく採用しても、なかなか定着しない」
もしあなたがインサイドセールス部のマネージャーとして、そんな悩みを抱えているなら、このまま読み進めてください。
IT・SaaS・クラウドサービスを扱う企業で、インサイドセールスの内製化が進む一方、人材不足は深刻な課題です。特に100~500名規模の企業では、少数精鋭のチームでマネージャーもプレイヤーとして現場に張り付かざるを得ない状況も多いでしょう。
朝から架電リストの作成、午前中はメンバーの商談ロープレ、午後は自身の架電と商談、夕方には日報チェックと報告会……。
限られた時間の中で、あなたは日々の架電数やアポ数達成という短期的な目標を追いかけることに精一杯になっていないでしょうか。その状況が、中長期的な組織の成長やメンバーの育成を後回しにする原因になっていないか、一度立ち止まって考えてみましょう。
本記事では、人材不足という制約がある中でも、個人のスキルに頼らない「自走するインサイドセールス組織」を構築するためのマネジメント・育成のポイントについて、具体的に解説します。
目次
1. プレイングマネージャーが陥る3つの罠
その悩みは育成の仕組みに原因がある
マーケテインサイドセールス部門のマネージャーとして、あなたが日々感じているであろう課題は、決してあなた一人だけの悩みではありません。多くのインサイドセールス組織が共通して直面する問題です。
1.1: 現場に張り付き、育成・設計業務に時間が割けない
あなた自身がアポ獲得の目標を背負い、日々の架電や商談に追われていませんか?
プレイングマネージャーとして成果を出し続けることは素晴らしいことですが、その分、組織全体の生産性を高めるための育成や業務設計に手が回らなくなってしまうケースは少なくありません。結果として、部下は「言われたこと」をこなすだけで精一杯になり、自ら考え、行動する力が育ちにくくなります。
1.2:KPI達成だけに追われ、育成が後回しになる
「今月のアポ獲得目標まで、あと何件…?」
短期的なKPI(架電数や商談数)の達成は重要です。しかし、それに集中しすぎるあまり、メンバー一人ひとりの成長を促すための中長期的な育成計画が後回しになっていませんか?目の前の数字を追うだけのマネジメントでは、若手は成長実感が得られず、エンゲージメントの低下や離職につながることもあります。
1.3:若手が育たず、辞めるor属人化する
OJT(On-the-Job Training)に頼りきりの育成は、「成果を出すための思考やスキル」ではなく「業務のやり方」を教えることに終始しがちです。
「とりあえず先輩のやり方を見て覚えろ」という指導方法では、育成に時間がかかったり、成果が出ないメンバーが離職したり、逆に成果を出すメンバーのやり方が「その人だけのもの」として属人化してしまいます。
これらの課題は、採用活動の成否だけでなく、育成の仕組みそのものに根本的な原因があることが多いのです。
【現場でのリアルなエピソード】
- インサイドセールスの架電リスト作成: 「どのリストに架電すれば効率が良いか」「どのセグメントからアプローチすべきか」といった判断が、ベテランのインサイドセールス担当者の経験に依存している。彼が休んだだけで、その日の架電効率が目に見えて落ちてしまう。
- Web広告運用の入稿ミス: 新しいキャンペーンを立ち上げた際、入稿設定を任された新人マーケターがミスをしてしまい、広告が停止。結局、誰も修正方法がわからず、ベテラン担当者の帰りを待つしかない。
こうした現場の光景は、あなたの会社でも心当たりがあるのではないでしょうか?業務のノウハウが個人の頭の中に留まり、チームに共有されなければ、そのキーマンが不在になった瞬間、業務が停滞してしまうのです。
2. 目の前の数字から脱却!自走する組織を作るマネジメントの視点
では、具体的にどのようにして、この状況を打破すればよいのでしょうか?
インサイドセールス組織が自走するためには、アポ獲得という「点」の成果だけでなく、「線」や「面」で捉えたマネジメントが必要です。
属人化は、単なる業務の停滞ではなく、企業成長の足かせとなり、さまざまなリスクを引き起こします。この章では、マーケティング内製化が失敗に終わる危険なシナリオを掘り下げていきます。
2.1 :「アポ獲得」から「受注への貢献」へKPIを拡張する
マネジメントの第一歩は、KPI(重要業績評価指標)の再設計です。
単に「アポを何件獲得したか」だけでなく、「獲得したアポが商談にどれだけ進んだか(商談化率)」や「商談に進んだ案件が受注にどれだけ近づいたか」など、受注という最終ゴールを見据えた指標を設計しましょう。
- 階層別KPI設定の例
- 活動量KPI: 架電数、コンタクト数、メール送信数など
- 有効性KPI: コンタクト率、ヒアリング率、商談化率など
- 質的KPI: リード評価スコア、SDR(Sales Development Representative)からのインプット情報量など
これらの指標に注目することで、単なるアポ獲得の数だけを追うのではなく、「質の高いアポ」をどう生み出すかという視点が生まれます。
ボトルネックの特定方法:
- 「コンタクト率は高いが、ヒアリング率が低い」 → 顧客の課題を引き出すヒアリングスキルに課題あり
- 「商談化率は高いが、受注貢献率が低い」 → ターゲティングや顧客の見極め、セールスチームへの情報連携に課題あり
このように、KPIを分解し可視化することで、組織の課題を正確に特定し、改善の打ち手を打てるようになります。
2.2:メンバーのスキルを可視化し、教育とアサインを分ける
「なぜこのメンバーは成果が出ているのか?」「なぜあのメンバーは伸び悩んでいるのか?」
この問いに感覚的にしか答えられないなら、スキルが属人化している証拠です。
インサイドセールスに必要なスキル(ヒアリング力、課題特定力、プロダクト理解度など)を項目ごとに分解し、メンバー一人ひとりの習熟度を可視化しましょう。これにより、「誰を、どのスキル項目で、どう育成すべきか」が明確になります。また、メンバーの得意分野を活かしたアサインが可能になり、組織全体のパフォーマンスが向上します。
2.3:育成を「現場任せ」にせず、マネージャー自身がコミットする
多忙なマネージャーにとって、育成設計にコミットするのは容易ではないかもしれません。しかし、育成を現場に丸投げしたり、メンバー同士のOJTに頼りきりになったりすると、育成の質は不安定になり、組織全体の成長が阻害されます。
育成体制の設計は、マネージャーの最も重要な仕事の一つです。入社後の3ヶ月間、6ヶ月間といったロードマップを作成し、座学、ロールプレイング、他部署との連携研修などを組み合わせることで、新人は最短で戦力化できます。
3. 人材不足を解決する「仕組み」の力
「仕組み」というと大げさに聞こえるかもしれませんが、再現性のある業務プロセスや育成フローを構築することで、人材不足という課題は「打ち手のある改善領域」に変わります。
3.1:成果を出しているメンバーの行動を「型化」する
「なぜかあの人は成果を出す」――その理由は、偶然ではありません。
成果を出しているメンバーの行動や思考プロセスを徹底的に分析し、「誰でも再現できる型」としてマニュアル化しましょう。
「型化」の具体的なステップ
- 現状分析・課題特定:成果を出しているメンバーの架電を録音・分析し、トークの進め方や質問内容を徹底的に観察します。
- プロセスの分解・要素化:「導入(なぜ電話したか)」「ヒアリング(何を質問するか)」「共感(顧客の課題にどう寄り添うか)」「提案(解決策をどう提示するか)」といった再現性のある要素に分解します。
- マニュアル・ドキュメント作成:作成したドキュメントを、新人でも理解しやすいように図解や具体例を交えて作成します。トークスクリプトは「一言一句話すための台本」ではなく、「思考のフレームワーク」として設計します。
- 検証と改善:作成した「型」を実際に運用し、アポ率や商談化率の推移を基に、チーム全体で改善を繰り返します。
3.2:「教える」から「フィードバックする」への転換
マネージャーは、すべてを教える存在から、メンバーが自律的に学ぶための「フィードバック」に焦点を当てる存在に変わる必要があります。
効果的なフィードバック方法
- SBIモデルの活用:
- Situation(状況): 「先日のA社との商談で」
- Behavior(行動): 「〇〇さんが3つ目の質問をしたところで、顧客が沈黙してしまいましたね」
- Impact(影響): 「その後のやり取りで、顧客の課題を引き出せませんでした」
- 「どうすればよかったか?」:このように、具体的な状況と行動、その結果を共有した上で、改善点をともに考えます。
- 録音の活用: 実際に録音した架電内容を一緒に聞きながら、良い点と改善点を議論します。これにより、メンバーは自分の客観的な話し方や癖に気づくことができます。
3.3:外部の力を「仕組みづくり」に活用する
人材不足の解決策として、「外部のインサイドセールス代行サービス」を検討する企業も多いでしょう。しかし、単にアポ獲得を外部に依頼するだけでは、自社のノウハウは蓄積されず、本質的な課題解決にはつながりません。
重要なのは、外部の専門家を「手を動かす人」としてではなく、「自社の課題を特定し、仕組みづくりを支援するコンサルタント」として活用することです。
インサイドセールス運用に特化したコンサルティングやトレーニングサービスは、自社の課題を客観的に分析し、再現性のある業務プロセスや育成体系を構築する上で、大きな助けとなるでしょう。
外部支援者との「協業」の具体例
- トークスクリプトの共同開発:外部の知見を取り入れ、自社に最適なトークスクリプトを構築する。
- KPI設計のアドバイス:自社の状況に合わせた、より精度の高いKPI設定を支援してもらう。
- 現場メンバーへのトレーニングの実施:プロの講師がファシリテートすることで、質の高いトレーニングを短期間で実施する。
- マネージャー向け育成メソッドの提供:効果的なマネジメント方法やフィードバック方法を学ぶ。
4. まとめ:「育成の仕組み」がインサイドセールス組織の未来を変える
人材不足は、採用活動だけで解決できる課題ではありません。
インサイドセールス部門のマネージャーとして、目の前の数字を追いかけるだけでなく、「いかにメンバーが自律的に成果を出せるか」という育成の仕組みづくりに注力することが、持続的な成長を可能にします。
「自走するインサイドセールス組織」は、決して夢物語ではありません。今日からできる一歩を踏み出し、未来の組織の姿をデザインしましょう。
人材不足の課題を「仕組み」で解決したいマネージャーへ
本記事でご紹介した「育成の仕組みづくり」は、多忙な現場マネージャーにとって、すぐに着手できることばかりではないかもしれません。
もし、「どこから手をつけていいか分からない」「自社に合った仕組みを、プロの知見を借りて構築したい」とお考えなら、ぜひ一度、当社のインサイドセールスコンサルティングサービスにご相談ください。
私たちは、単なる代行ではなく、貴社の課題を根本から分析し、再現性のある業務プロセスと育成体制を構築するご支援をしています。インサイドセールス組織の立ち上げから運用改善まで、「自走できる組織」をつくるための実践的なサポートを提供します。
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