あなたは先日、大規模な展示会を成功させ、数百枚もの名刺を手にしました。「ここからが本番だ」と意気込んだものの、その名刺の山はその後、どれだけ商談につながったでしょうか?
もしかしたら、以下のような課題に直面しているかもしれません。
「日々の業務に追われ、フォローアップが後回しに…」
「インサイドセールスを立ち上げたが、人材が定着せず形骸化している…」
「見込み客の情報がブラックボックス化し、どうなっているのか把握できない…」
もし、この状況が続けば、せっかくの展示会への投資は水の泡となり、マーケティング活動自体の成果が問われることになります。
本稿では、BtoB製造業特有の課題である人材不足や、従来の営業文化の壁を乗り越え、インサイドセールスを「成果を出す仕組み」へと再設計するための、具体的なロードマップを解説します。
「インサイドセールスを内製化しよう」と決断したにもかかわらず、多くの企業が直面する課題には、構造的な背景があります。
古くから、製造業の営業活動は「訪問・対面・技術提案」が中心でした。高度な専門性を要する商材を扱うため、顧客との深い信頼関係を築き、現場での課題を直接ヒアリングすることが成功の鍵だと考えられてきたからです。
この文化が根強い製造業において、電話やメールが中心のインサイドセールスは、どうしても「簡易的な営業活動」と見られがちです。その結果、営業部門からは「訪問するほどでもない顧客への対応」「雑務」と位置づけられ、本来の「新規商談創出」というミッションが軽視されてしまいます。
展示会やWebサイト、セミナーを通じて獲得したリードは、マーケティング部門が獲得した「宝物」です。しかし、この宝物が営業部門に引き継がれた途端に、その後の状況が見えなくなる「ブラックボックス化」が頻発します。
このような状況では、せっかく獲得した見込み顧客も、適切なタイミングでフォローされずに機会を失ってしまいます。
「人材不足」は、BtoB製造業にとって喫緊の課題です。特に中堅規模の企業では、採用難に加え、インサイドセールスという新たな職種を育成するノウハウも不足しています。
これらの課題が複雑に絡み合い、結果として「インサイドセールス内製化はしたものの、成果が出ない」という悪循環に陥ってしまうのです。
か。
人材不足が深刻な今、「人を増やす」という発想は一度捨ててください。
必要なのは、人がいなくても成果を出す「仕組み」を構築することです。そして、その設計を主導できるのは、マーケティングと営業、経営の全体を俯瞰できる、あなた、マーケティング部長しかいません。
インサイドセールスは、単なる営業の「電話係」ではありません。顧客を「情報収集」という状態から、「商談をしたい」という状態にまで引き上げる「見込み顧客の育成プロフェッショナル」です。
この視点に立ち、以下の設計をしてみてください。
マーケティング、インサイドセールス、フィールド営業の3部門で集まり、「商談」と呼べる状態を具体的に定義します。
例:「決裁者が特定できている」「導入時期が明確になっている」「予算の確保が見込まれる」「具体的課題が3つ以上引き出せている」といった具体的な項目を定めます。
獲得したリードを、その興味関心や行動履歴に応じて細かく分類します。
各温度感のリードに対して、インサイドセールスが「商談に値するか」を判断するためのトリガーを設計します。
例: 「製品の具体的な導入時期について聞く」「現在のシステムにおける課題を3つ聞く」「他社検討状況を確認する」といった、商談化に必要な具体的なヒアリング項目をリストアップします。
これらの設計は、インサイドセールスが属人的な「勘」に頼るのではなく、再現性のあるプロセスとして機能するための土台となります。
展示会後のフォローは、マーケティング投資のROIを最大化する上で最も重要なプロセスです。ここを営業任せにせず、マーケティング部門が主導権を握ることで、効率的かつ確実に商談へとつなげる道筋をつけます。
MAツール(マーケティングオートメーション)を導入し、展示会で名刺交換した見込み顧客に対し、翌日には自動で感謝のメールや関連資料を送付する仕組みを構築します。これにより、顧客の熱量が冷める前に、確実な接点を持つことができます。
インサイドセールスが初回電話で使う、共通のヒアリングテンプレートを作成します。
リードのステータスを、「商談化」「長期育成」「失注」などのように明確に定義し、リアルタイムで共有する仕組みを構築します。これにより、IS内製化における部門間の連携がスムーズになり、展示会フォローの進捗が「見える化」されます。
人材不足の課題に真正面から向き合うためには、「内製」にこだわらないことも重要です。
全てのインサイドセールス業務を内製化するのではなく、リードの初期アプローチや、特定のセグメントへのアプローチなど、一部の業務を外部のインサイドセールス専門会社に委託するのも有効な戦略です。これにより、自社の限られたリソースを、より重要な「商談の質を高めるヒアリング」や「顧客育成」に集中させることができます。
MAツールを使えば、人の手を介さずに見込み顧客の育成が可能です。
具体的な活用例:
内製インサイドセールスの属人化対策として、顧客からのよくある質問(FAQ)や、商談獲得に向けたスクリプトを体系的に整備します。これにより、経験の浅い担当者でも一定の品質を担保した対応が可能になり、組織全体の生産性向上につながります。
ここでは、本稿で述べた施策を実行し、成功を収めた精密機器メーカーA社(従業員350名)の事例をご紹介します。
【Before】
【After】
【成果】
これは、インサイドセールスが単なる“電話番”ではなく、営業部門全体の生産性を高める「仕組み」として機能した好例です。
「営業は現場で育てるもの」という文化が強い製造業だからこそ、再現性のあるプロセスを設計するマーケティング部門の視点が今、強く求められています。
インサイドセールスは、ただ人を増やすだけでは機能しません。再現性のある仕組み、そして部門横断的な連携があってこそ、その真価を発揮します。
人材不足という課題を乗り越え、御社の営業DXを加速させるためにも、まずはインサイドセールスを「成果を出すための仕組み」として再設計することから始めてみませんか?
この記事が、貴社の展示会後のリード管理とインサイドセールス体制の見直しの一助となれば幸いです。
人材不足でも成果を出すインサイドセールス体制を構築しませんか?