BtoB製造業のカスタマーサクセス部門で、マネージャーや課長職を務める皆さまへ。
「顧客の成功」 を追求するため、日々奮闘されていることと存じます。しかし、限られた人材とリソースの中で、日々のサポートやオンボーディングに追われ、本来時間をかけるべき顧客の深耕や、戦略的なアップセル提案に手が回らないというジレンマに直面していませんか?
この課題の根本にあるのは、「新規開拓はインサイドセールス」「既存顧客対応はカスタマーサクセス」という、部門間の役割の分断です。特に、製品が複雑で専門性が高い製造業では、この分断が深刻な機会損失を生み、組織全体の成長を妨げています。
しかし、この構造的な課題を乗り越え、顧客との関係性を深化させ、LTV(顧客生涯価値)を最大化する道筋があります。それが、インサイドセールスとカスタマーサクセスが一体となって「攻めの仕組み」を構築する営業改革です。この記事では、製造業の皆さまが直面する課題を深く掘り下げ、その解決策としての連携モデルを具体的に解説します。
目次
1. なぜ、カスタマーサクセス部門の「人材不足」は解消されないのか?
皆さまの部門が抱える「人材不足」は、単なる頭数の問題ではありません。それは、部門が担うべき役割が過剰になり、日々の業務に追われる「現場の疲弊」という構造的な問題に起因しています。
◆カスタマーサクセス部門の過剰な業務負荷
カスタマーサクセス部門の業務は多岐にわたります。新規顧客のオンボーディング、製品の活用支援、技術的な問い合わせ対応、定期的なヘルスチェック、そして契約更新の手続き。これらはすべて、顧客の成功を支える上で欠かせない業務です。しかし、それに加えて「アップセルやクロスセルの提案機会を見つけ、推進する」という営業的な役割も期待されるようになり、キャパシティオーバーに陥りがちです。
例えば、顧客との定例ミーティングで、新たなニーズや課題が見つかったとします。しかし、それを深く掘り下げる時間がないまま、次のタスクに追われ、せっかくの提案機会を逃してしまう。これでは、部門がいくら増員されても、根本的な解決にはなりません。
◆「新規はIS、既存はCS」という分断構造が生む非効率性
多くの企業では、インサイドセールスが新規顧客のリード獲得に特化し、カスタマーサクセスが既存顧客の対応をすべて抱え込むという体制が続いています。この分断が、顧客のLTVを最大化できない最大の原因です。
インサイドセールスが新規開拓に忙殺される一方で、カスタマーサクセスが顧客との深い関係性の中で見つけた提案機会は、部門間の連携不足によりうまく引き継がれません。結果として、顧客は最適なソリューションを享受できず、企業は機会損失を続けることになります。この非効率な構造を放置したままでは、真の「営業改革」は実現しません。
2. 経営視点で再構築する3つの改革軸
「インサイドセールスは新規開拓、カスタマーサクセスは既存顧客対応」という役割分担を見直し、経営視点での抜本的な改革を進めることが不可欠です。
1. 人材戦略の再設計:LTV向上を担う人材モデルと評価制度
インサイドセールスを単なる新規開拓部隊としてではなく、既存顧客との関係性を深化させる戦略的な部署として位置づけましょう。そのためには、LTV向上に貢献する人材モデルと評価制度を設計することが重要です。
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役割 |
主なKPI(評価指標) |
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新規開拓型インサイドセールス |
アポイント獲得数、商談化件数、リードからの受注率 |
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既存顧客深耕型インサイドセールス |
アップセル・クロスセルによる契約単価増加率、リピート発注件数、顧客からのNPS(ネットプロモータースコア) |
このように、既存顧客深耕型インサイドセールスには、単なるアポイント数だけでなく、顧客のLTVに直結する指標を設けることで、彼らの活動が正当に評価され、モチベーションの維持につながります。
また、インサイドセールスとカスタマーサクセス間での人材交流やキャリアパスを明確にすることも有効です。「インサイドセールスで顧客深耕のスキルを磨き、将来的にはカスタマーサクセス部門のコンサルタントへ」といったキャリアパスを描くことで、部門間の連携がよりスムーズになり、組織全体のパフォーマンス向上につながります。
2. 構造改革としてのインサイドセールス定着支援:顧客セグメント別連携モデル
インサイドセールスの運用を定着させるためには、画一的なモデルではなく、顧客の特性に応じた柔軟な運用モデルを構築することが不可欠です。製造業の皆さまにとって、顧客は一様ではありません。
<顧客セグメント別の連携モデル例>
◆高LTV顧客(戦略顧客)- 役割分担:カスタマーサクセスが専任で担当し、定期的な訪問やコンサルティングを実施します。インサイドセールスは、導入事例の提供やイベント招待などを通して、顧客接点の維持と関係性強化をサポートします。
- 連携ポイント:カスタマーサクセスが発見した新たなニーズを、インサイドセールスが掘り下げて提案につなげます。
- 役割分担:カスタマーサクセスが全体を管理し、インサイドセールスがアップセル・クロスセル提案の「探知」と「実行」を担います。例えば、インサイドセールスが顧客の利用状況データを分析し、追加で導入すべき製品を提案します。
- 連携ポイント:カスタマーサクセスが日常的な課題解決に集中できることで、顧客満足度の向上にもつながります。
- 役割分担:インサイドセールスが主体となり、効率的なリピート創出やアップセルを促します。メールマーケティングや定期的な電話で接点を持ち、新たなニーズがないかを探ります。
- 連携ポイント:カスタマーサクセスの負担を軽減しつつ、顧客との接点を維持します。
3. 営業〜カスタマーサクセス間のKPI設計:詳細な連携プロセスの構築
部門間の連携を強化するためには、具体的なKPIとプロセス設計が不可欠です。SFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理)を活用し、部門間で顧客情報を一元管理することで、スムーズな情報連携を実現します。
<連携プロセスの詳細フロー>
- カスタマーサクセスによるニーズ発掘:顧客との対話や利用データ分析の中で、アップセルやクロスセルにつながる顧客の課題やニーズを発見します。
- インサイドセールスへの連携:カスタマーサクセスは、SFA/CRM上で発見したニーズを「ホットリード」としてインサイドセールスに共有します。この際、具体的な背景や顧客の状況を詳細に記述します。
- インサイドセールスによる提案活動:インサイドセールスは、共有された情報をもとに顧客に電話やメールでアプローチ。カスタマーサクセスからの情報をもとにすることで、顧客の状況を深く理解したうえで、より精度の高い提案が可能です。
- アポイント獲得・商談引き継ぎ:提案活動を通じてアポイントを獲得したら、営業部門へ商談を引き継ぎます。
- 成果の共有と分析:受注後、営業、インサイドセールス、カスタマーサクセスの三部門で成果を共有し、プロセスを分析・改善します。
3.内製と外部委託の最適バランスをどう描くか
「人材が足りないからすべてを外部委託する」あるいは「内製にこだわり、すべての業務を社内で抱え込む」という極端な考え方ではなく、両者のバランスを柔軟に調整することが、持続可能な組織構築の鍵となります。
◆外部委託のメリット・デメリットと活用シーン
外部のインサイドセールス専門チームに業務を委託することには、以下のようなメリットとデメリットがあります。
【メリット】- 即戦力となるプロの活用:自社で人材育成を行う必要がなく、プロフェッショナルなノウハウをすぐに活用できます。
- ノウハウの短期間での蓄積:外部パートナーから、効果的なトークスクリプトや運用モデルの知見を得られます。
- 自社人材のコア業務への集中:カスタマーサクセスは、より高度なコンサルティングや課題解決に集中できます。
- 費用対効果の見極め:委託費用に見合う成果が出せるか、厳密な評価が必要です。
- 自社内でのノウハウ蓄積の遅れ:外部に依存しすぎると、自社内に知見が蓄積されにくくなります。
これらの点を踏まえ、以下のようなシーンで外部委託を検討すると良いでしょう。
- 「インサイドセールス立ち上げ期」:新規開拓と既存顧客深耕のモデルを同時に構築したいが、社内リソースが不足している場合。
- 「季節的な業務ピーク時」:契約更新月や特定のプロモーション期間など、一時的に業務量が増加する際のサポート。
- 「新規事業・新サービス展開時」:既存顧客への提案・案内を短期間で集中的に行いたい場合。
◆外部委託から内製化へのロードマップ
すべてを内製化するのではなく、「外部委託で運用モデルを確立し、徐々に内製化を進める」というステップを踏むのが最も効果的です。
【Step1】:外部パートナーを活用して運用モデルを構築
まず、外部のインサイドセールス専門チームに、「既存顧客への提案型アプローチ」を委託し、その運用ノウハウを蓄積します。
【Step2】:効果検証とノウハウの言語化
委託期間中に得られたデータや成果を分析し、「どのようなアプローチが効果的か」を言語化・マニュアル化します。
構築された運用モデルとマニュアルを基に、段階的に社内人材を育成し、内製化を進めます。この際、外部パートナーにはコーチングやコンサルティングといった役割を担ってもらうことも可能です。
4.まとめ:
インサイドセールスは「攻めのカスタマーサクセス」を実現する
カスタマーサクセス部門が直面している「人材不足」は、インサイドセールスとの連携を見直すことで、根本から解決できる可能性を秘めています。
インサイドセールスを新規開拓の役割に留めず、既存顧客との関係性を深化させ、アップセルやクロスセルを促進する「第二の営業部門」として再定義する。そして、その役割を明確にし、適切な人材戦略とKPIを設定する。
この変革を通じて、カスタマーサクセスは「既存顧客の維持」だけでなく、「顧客価値の最大化」という、より戦略的な役割を担うことができるようになります。
もし、貴社がインサイドセールスの運用に課題を抱えているなら、まずはインサイドセールスとカスタマーサクセス部門の現状の役割と業務フローを可視化することから始めてみてはいかがでしょうか。そして、両部門がLTV向上という共通目標に向かって連携できる「攻めの仕組み」を構築することで、真の営業改革が実現するはずです。
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