目次
1. なぜ、あなたのインサイドセールスは成果が出ないのか?
BtoB製造業のインサイドセールス部門で課長やマネージャーを務めるあなたは、今、大きな課題に直面しているのではないでしょうか。デジタル化の波に乗り遅れまいと、勇気を持ってインサイドセールスの内製化に踏み切ったものの、理想と現実のギャップに苦しんでいるかもしれません。
インサイドセールス内製化は、顧客接点を増やし、効率的に見込み顧客を育成できる強力な手段です。しかし、ただ役割を分けるだけでは、その真価は発揮できません。多くの企業が、「とりあえず電話をかける部隊」を作っただけで、期待した成果につながらず、社内から「インサイドセールスって本当に必要なの?」という声が上がり始めているのが現実です。
特に、300〜1,000名規模の企業では、慢性的な人材不足が構造的な課題となりがちです。採用も育成も簡単ではない中で、限られた人数で最大限の成果を出すためには、属人的な「頑張り」ではなく、誰がやっても成果が出る「仕組み」を構築する必要があります。
本稿では、インサイドセールス組織が陥りがちな課題を深掘りし、あなたのチームを成果の出る組織へと変革するための具体的な方法を、インサイドセールス・マネージャーの視点から解説します。
2. 成果が出ないインサイドセールス組織に共通する
「4つの落とし穴」
「頑張っているのに成果が出ない」状態に陥っている組織には、いくつかの共通点があります。あなたのインサイドセールス部門は、以下のような落とし穴に陥っていませんか?
1.「分業」は進んだが、役割が曖昧なまま走り出してしまった
「営業の分業」と聞いて、まず思い浮かべるのは、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスという役割分担でしょう。しかし、その役割の「境界線」が曖昧なまま走り出してしまうと、組織は混乱します。
- あるある事例:
- インサイドセールス担当者は、とりあえず電話でアポイントを取得。しかし、フィールドセールスからは「ただ話を聞きたいだけのアポイントで、商談にならない」とクレームが入る。
- 「アポ数は増えたが、商談化率が低い」というデータが上がり、インサイドセールスの存在意義が問われる。
- インサイドセールス自身も、自分の仕事が最終的な受注にどう貢献しているのか分からず、モチベーションを保てなくなる。
BtoB製造業の商材は、専門性が高く、顧客の課題も多岐にわたります。単なる「アポイント取り」では、お客様の深い課題を引き出すことはできません。インサイドセールスが担うべきは、「質の高い商談機会の創出」であり、その役割が明確に定義されていないことが、成果が出ない最大の原因です。
2.教育や評価があいまいで、業務が属人化する
「ベテランのAさんは商談化率が高いが、新人Bさんは全くアポが取れない」。インサイドセールス組織でよく聞く悩みです。なぜこのような差が生まれるのでしょうか?
それは、成果を出している個人の「ノウハウ」が、組織全体に共有されていないからです。多くの組織では、評価基準が「架電件数」や「アポイント数」といった量的な指標に偏りがちです。結果として、成果を出すための「質的な行動」(例:お客様の業界トレンドを事前にリサーチする、課題を引き出すための質問を工夫する)が正当に評価されず、個人のスキルに依存した業務の「属人化」が進んでしまいます。
ベテラン担当者の退職や異動が、組織の生産性を大きく低下させるリスクを常に抱えている状態です。
3.商談化率や受注貢献が見えず、存在意義が問われる
インサイドセールスは、フィールドセールスと比べて成果が見えにくい部門です。この「成果の見えにくさ」が、組織の成長を阻害します。
- あるある事例:
- 上層部から「インサイドセールスって、結局何をしているの?」と聞かれ、明確な回答に窮する。
- 営業部門から「インサイドセールスが取ってきたアポから、どれだけ受注につながったの?」と質問され、正確な数字を示せない。
日々の活動が最終的な売上にどう貢献しているかが可視化されていないと、部門としての予算獲得が難しくなったり、事業拡大の機運が削がれたりします。
4.人材が定着せず、慢性的な人材不足が加速する
上記のような課題を放置すると、メンバーのモチベーションは低下します。自分の仕事にやりがいを感じられず、成長を実感できない環境では、優秀な人材は留まりません。
- あるある事例:
- 「もっとお客様と直接会って、営業のスキルを身につけたい」と、インサイドセールスからフィールドセールスへの異動を希望するメンバーが続出する。
- 「頑張っているのに正当に評価されない」と感じ、離職するメンバーが増える。
人材の流出は、ノウハウの喪失を意味します。常に新人教育に追われ、組織の成長が阻害されるという悪循環に陥ってしまうのです。
3. 現場対応に追われるマネージャーよ、今こそ「設計者」になれ
これらの課題を解決し、限られた人数でも成果を最大化するには、インサイドセールス・マネージャーであるあなたが、現場の「プレーヤー」から組織の「設計者」へと役割をシフトすることが不可欠です。
日々の現場対応に追われているだけでは、いつまで経っても根本的な課題は解決しません。時間を意図的に作り出し、以下の4つのポイントを見直しましょう。
1. 商談化までのプロセスを再設計し、チームの“成果定義”を明確にする
まずは、チームの「何をすれば成果なのか」を再定義しましょう。
- KPIを「量」から「質」へシフトする
- 単なる「架電件数」や「アポイント数」だけでなく、「商談化率」「受注貢献度」といった質的な指標をKPIに設定します。
- フィールドセールスと密に連携し、「受注につながる商談とはどんな条件を満たしているか?」を具体的に言語化します。例えば、BANT情報(Budget:予算、Authority:決裁権、Need:ニーズ、Timeframe:導入時期)の確認項目をチェックリスト化するなど。
- 実行ステップ:
- フィールドセールス責任者との定例会議を設定する:週に一度、または隔週でも構いません。商談の質に関するフィードバックを直接もらう場を設けます。
- 「商談定義ワークショップ」を開催する:インサイドセールスとフィールドセールスのメンバーが集まり、具体的な事例を共有しながら「このアポイントは良質か?」を議論します。これにより、両部門の間に共通の認識が生まれます。
2. 営業やマーケティングと連携する“情報の受け渡し基準”を仕組み化する
部門間の連携がうまくいかない原因の多くは、「情報の受け渡し基準が曖昧」なことにあります。
- 「情報のバケツリレー」ではなく、「情報の共有プール」を作る
- SFA(営業支援システム)やCRM(顧客管理システム)を最大限に活用し、リードの状態(ステータス)や顧客とのやり取りをリアルタイムで共有します。
- マーケティングからインサイドセールス、フィールドセールスへと進むリードの段階(例:MQL:マーケティングが創出したリード、SQL:インサイドセールスが創出した商談化リード)を明確に定義し、共通言語として使用します。
- 実行ステップ:
- SFAの入力ルールを統一する:入力項目や記述方法を具体的に定め、誰が見ても商談内容を正確に理解できるようにマニュアル化します。
- 情報共有のためのチェックリストを運用する:フィールドセールスに引き渡す際に、確認すべき項目をチェックリストとしてSFAに組み込み、入力漏れを防ぎます。
- チャットツールを活用する:商談が引き渡されたら、SlackやMicrosoft Teamsでフィールドセールスに自動通知を送る設定を行い、スムーズな連携を促します。
3. 個人に依存しない“トーク・判断・記録”の標準化を進める
優秀な個人のスキルを組織全体の力にするには、そのノウハウを「誰でも使える状態」にすることが不可欠です。
- トークスクリプトやFAQのテンプレート化
- よくある質問(FAQ)や、お客様の課題を引き出すためのトークパターンを文書化し、社内Wiki(Confluenceなど)に蓄積します。
- 新入社員向けのロープレ(役割演技)を定期的に開催し、テンプレートを実践的に使えるようにトレーニングします。
- 会話の「型」を共有する
- 優秀なメンバーの音声録音データ(※要同意)を共有し、トークの「間」や「質問の仕方」といった質的なノウハウを学び合える環境を作ります。最近では、会話解析ツール(MiiTelなど)も有効です。
- 情報記録の統一化
- 会話の内容や、お客様から引き出した情報を、SFAの「特記事項」として具体的に記録する習慣をつけさせます。これにより、たとえ担当者が代わっても、スムーズに引き継ぎができます。
4. 業務の優先順位を整理し、“現場対応に追われない設計者”としての役割を再定義
マネージャー自身が、戦略を練る時間や、メンバーの育成に充てる時間を確保できなければ、組織は変わりません。
- 業務の棚卸しと権限委譲
- 自身の業務を「戦略的業務(仕組みづくり、メンバー育成など)」と「定型業務(日報チェック、簡単な質疑応答など)」に分類します。
- 定型業務は、責任感のあるメンバーに少しずつ任せる「権限委譲」を進め、自分の時間を創出します。
- 「プロデューサー」としての役割を自覚する
- あなたは、チームの成果を最大化するための「舞台装置を設計するプロデューサー」です。プレーヤーとして現場の最前線に立ち続けるのではなく、メンバーが自律的に動ける仕組みをつくることに集中しましょう。
4.組織の「構造転換」こそが、人材不足を乗り越える鍵
インサイドセールス組織の成長は、決して魔法ではありません。それは、一つひとつの課題を「仕組み」と「連携」で解決していく地道な努力の積み重ねです。
特に、人材が限られているBtoB製造業において、一人のスーパープレイヤーに頼るのではなく、誰が担当しても一定の成果が出せる仕組みをつくることが、組織を成長させる唯一の方法です。
「仕組みで成果を出すインサイドセールス組織」への構造転換は、現場を理解し、全体を見渡せるあなただからこそ成し遂げられる仕事です。ぜひ、本稿で解説したポイントを参考に、あなたの組織を再設計するリーダーシップを発揮してください。
5.まとめ:仕組みが人を育て、組織を強くする
今回は、インサイドセールスの内製化で人材不足に悩む製造業のマネージャーに向けて、仕組み設計の重要性とその具体的な打ち手をご紹介しました。
- スキルに依存しないプロセス設計とトークの型化
- 質指標をセットにしたKPIの再定義
- オンボーディングと育成プロセスの標準化
- 営業・マーケティングとの情報接続設計の強化
これらの取り組みは、一時的に現場の負荷を増やすように感じるかもしれません。しかし、「人がいないからできない」という現状から、「人がいなくても回る」組織へと変革するための、重要な投資です。
優秀な人材を待つのではなく、仕組みが人を成長させ、チームを強くします。
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