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コーポレートサイトリニューアルの進め方8ステップ|作り直すか部分改修かの判断基準も解説Column

2026.11.04

コーポレートサイトリニューアルの進め方8ステップ|作り直すか部分改修かの判断基準も解説

自社のコーポレートサイトが古い。そろそろリニューアルしたいと考えながらも、何から手をつければよいか分からず止まっていないでしょうか。制作会社に問い合わせたら「ご要望をお聞かせください」と言われて答えられなかった、リニューアルで検索順位が落ちないか不安だ、という詰まりもよく聞かれます。

総務省の「令和7年通信利用動向調査」(企業編)によると、自社ホームページを開設している企業は93.3%に上ります(2025年8月末時点、全国の常用雇用者100人以上の企業が対象、有効回答2,489社)。ほぼすべての会社がサイトを持っている今、論点は「持つかどうか」ではなく「持っているものをどうするか」に移っています。

出典:令和7年通信利用動向調査の結果

コーポレートサイトとは、会社概要や事業内容、問い合わせ窓口をまとめた、会社の顔となる公式サイトのことです。この記事では、この「今あるサイトをどうするか」を扱います。

先に結論をお伝えすると、リニューアルの成否は、作り直したかどうかではなく、作り直す前に社内で何を決めたかで決まります。
本記事では、全面的に作り直すか部分改修で済ませるかの自己診断から、進め方の8ステップ、制作会社に渡すRFP(提案依頼書)の項目、公開前後に検索順位を落とさないための手順までを順に解説します。
読み終えたとき、「まず何をするか」を自分の言葉で説明できる状態を目指します。

コーポレートサイトをリニューアルすべきか
作り直しか部分改修かの自己診断チェックリスト

最初に、この記事の中核である「作り直すか、部分改修で済むか」の判断から始めます。サイトリニューアルは「全面作り直し」だけを指す言葉ではありません。今のサイトの数字を見て、チェックリストの該当数で判断すれば、部分改修や「何もしない」も含めた自社の結論を出せます。

リニューアル=全面作り直しとは限らない——選べる道は5つ

「サイトが古いから作り直そう」と考えるとき、多くの方が無意識に全面作り直しを前提にしています。しかし実際に選べる道は1つではありません。次の5つを並べて検討することで、投資の規模を課題に見合ったものにできます。

選択肢 向いているケース 費用・工数(相対)
全面リニューアル サイトの構造(誰に何をどの順で見せるか)から
作り直す必要がある
大
部分改修 構造は保ったまま、特定ページの追加・改善で課題を解消できる 中
サイトを分ける 会社案内と製品・サービス訴求を1つのサイトで兼ねて無理が出ている 中〜大
LPだけ作る 特定の製品・キャンペーンの受け皿づくりが当面の課題 小〜中
何もしない 構造は合っていて、情報の鮮度だけが課題(更新で対応できる) ー

実際に、デザインは古いままでも問い合わせが安定して来ており、部分改修で十分だったというケースがあります。「作り直さない」も、根拠があれば正しい判断です。なお、サイトを分けるべきかどうかは別の判断軸が必要になるため、「サービスサイトを分けるべきかの判断基準」を解説した記事を参照してください。サービスサイト

まず今のサイトの数字を見る - 診断の前提

どの道を選ぶかは、感覚ではなく数字から決めます。まず「先月、自社サイトでいちばん見られたページはどれか」という問いに答えられるかを確認してください。答えられないなら、まだ判断の材料がそろっていない状態です。

見る数字は3つです。GA4(アクセス解析ツール)で確認できる、(1)よく見られているページ、(2)流入経路(検索・広告・直接アクセスなど、どこから来ているか)、(3)問い合わせ・資料請求の件数です。あわせて、CVポイント(問い合わせや資料請求の入口)がサイト内にいくつあるかも数えておきます。入口が1つしかない、あるいは深い階層に埋もれているサイトは珍しくありません。

GA4は導入したものの見ていない、見方が分からないという企業も多くあります。その場合も、まずこの3点だけ確認できれば診断には足ります。

自己診断チェックリスト - 該当数で線を引く

数字がそろったら、次のチェックリストで該当する項目を数えてください。項目は「構造」「技術」「運用」の3つの群に分かれています。どの群に該当が集中しているかで、取るべき道が変わります。

構造リスト 誰に向けたサイトなのか、社内で説明できない
製品・サービスの情報が会社案内の中に埋もれている
問い合わせ・資料請求の入口(CVポイント)が1つ以下
アクセスはあるのに、問い合わせがほとんど来ない

技術リスト スマートフォンで表示が崩れる
CMSやサーバーのサポート終了が近い
SSL対応など、基本的なセキュリティ対応が古いまま

運用リスト 更新が年に数回以下で止まっている
前回リニューアルの目的を、社内の誰も説明できない
ページを継ぎ足し続けた結果、どこに何があるか分からない

判断の目安は次のとおりです。私たちが支援の現場で見てきた限り、構造の群に3つ以上該当するなら全面リニューアルを検討する段階、1〜2つなら部分改修からの検討で十分です。技術の群だけに該当する場合は、サーバー移転やCMS移行といった部分的な対応で足りることがあります。
運用の群だけなら、作り直しよりも先に運用の仕切り直しが必要です。あくまで目安として、単独の項目だけで決めず、群と該当数のセットで判断してください。

なお、構造と技術の両方にまたがる場合など、チェックリストだけでは決めきれないケースもあります。その場合の考え方は記事の最後で触れます。

やるなら、いつか - 予算期・サポート終了・体制から逆算する

「やる」と決めたら、次はいつ始めるかです。私たちの支援経験では、検討から公開までは6〜12ヶ月程度かかることが多く、特にリニューアルでは現状分析と社内調整に時間を要します。

8step2

逆算の起点は3つあります。
1つ目は年度予算のタイミングです。期首(3〜4月)や下期(9〜10月)に合わせて予算を確保する企業が多く、発注時期はそこから逆算されます。
2つ目はサーバーやCMSのサポート終了期限。3つ目は社内体制で、担当者がまとまった時間を割ける時期を選ぶことも現実的な条件になります。

注意したいのは、サポート終了が引き金になっている場合です。期限に追われて「とにかく移行だけ」と発注すると、目的の議論を飛ばしたまま、見た目だけ新しいサイトができあがります。期限がある場合こそ、目的の設定を先に済ませてください。

コーポレートサイトリニューアルの目的と
メリット・デメリット

診断で方向が見えたら、次に固めるのは目的です。リニューアルの目的を「デザインの刷新」に置くと、前回と同じ失敗を繰り返しやすくなります。得られるものは今の課題の裏返しであり、同時に、失いうるもの(検索評価・計測)も先に知っておく必要があります。

リニューアルの目的をデザインの刷新にしない

「デザインが古い」はリニューアルを考える入口として自然ですが、それ自体は目的になりません。見た目を新しくしても、問い合わせにつながらないサイトはつながらないままだからです。

私たちが支援の現場で見てきた限り、成果が出ていないサイトの問題の多くは、デザインの新旧ではなく構造にあります。誰に向けて、何を、どの順で見せるか。この設計が読者の検討プロセスとずれていると、訪問者は必要な情報にたどり着けずに離脱します。BtoB企業のWebサイトの設計の考え方は別記事で詳しく解説しています。 目的は「問い合わせ・資料請求につながる状態をつくる」のように、成果の言葉で書いてください。前回のリニューアルが成果を出さなかったと感じているなら、その原因の多くは、こうした目的が定義されないまま制作が始まったことにあります。

メリットは自社の課題の裏返しで考える

リニューアルのメリットを一般論として列挙しても、自社の判断材料にはなりません。メリットとは、いま困っていることが解消されることです。

いま困っていること リニューアルで変わること
問い合わせが来ない 誰に何をどの順で見せるかの
構造から設計し直せる
取引先や採用候補者に古さを指摘される 会社の信頼を支える器を更新できる
更新が回らない CMSと運用のルールを仕切り直せる
情報が散らかり、
どこに何があるか分からない
全ページを棚卸しして整理できる

裏を返せば、課題を言語化できていないリニューアルには、得るものも定義できません。前章の診断結果が、そのまま自社にとってのメリットの定義になります。

見落とされがちなデメリットとリスク

デメリットも直視しておきます。まず費用と期間、社内工数です。制作費に加えてリニューアル固有の追加費用があり、検討期間中は担当者の確認作業も続きます。本業の合間の限られた時間で回すには、対象範囲の見極めが欠かせません。

そしてリニューアルに固有のリスクが、検索評価と計測の断絶です。URLの変更や計測タグの移行漏れによって、公開の瞬間に検索流入やデータの蓄積が途切れることがあります。ただし、これは正しく準備すれば防げるリスクです。防ぎ方は後半の公開前後の章で、手順として示します。

コーポレートサイトリニューアルの進め方8ステップ
各段階で「誰と何を決めるか」

8step1

全体像を地図として持っておくと、社内への説明も制作会社との会話も進めやすくなります。コーポレートサイトリニューアルの進め方は、次の8ステップです。
重要なのは、ステップの名前よりも、各段階で「誰と何を決めるか」です。ここが曖昧なまま進むと、プロジェクトは途中で止まりやすくなります。

1 現状分析 今のサイトの数字と
ページの棚卸し
Web担当が材料をそろえ、
営業に商談での実感を聞く
2 目的・
KPI設定
何のためにやるか、
何で測るか
役員と目的・予算枠、
指標を誰が月次で見るか
3 要件定義 何を・どこまで作るかを
社内で決める
4つの情報オーナー
(役員・営業・情シス・経営企画/広報)
4 制作会社
選定
RFPを渡して
提案・見積を受ける
役員と発注先・契約範囲
5 設計 サイト構成・
ワイヤーフレーム
既存ページの取捨選択を
各情報オーナーと行う
6 制作 デザイン・原稿・実装 掲載情報の確認を
各情報オーナーと行う
7 公開 移行・リダイレクト・
計測の引き継ぎ
情シスとドメイン・サーバー、
制作会社と移行項目
8 運用 更新と数字の確認 更新の担当者と、
数字を月次で見る人

ステップ1〜2 現状分析と目的・KPI設定

リニューアルと聞くとデザインの話から始めたくなりますが、最初の仕事は数字の確認です。現状分析には、前半の自己診断で見た3つの数字(よく見られているページ・流入経路・問い合わせ件数)がそのまま使えます。

続いて目的とKPIを決めます。KPIに置くのは、問い合わせ・資料請求の件数と、そこから生まれた商談数です。
アクセス数は途中経過にとどめ、あわせて「その数字を誰が月次で見るか」まで決めます。
指標そのものより、見る人が決まっていることのほうが、公開後に放置されないための条件として重要です。
この段階で巻き込むのは、目的に合意してもらう役員と、商談の実感を持っている営業部門です。

ステップ3〜4 要件定義と制作会社選定

制作会社に声をかけるのは、要件定義で社内を固めたあとです。順番が逆になると、「ご要望をお聞かせください」に答えられず、制作会社の提案に流されます。
要件を言えないまま受け取った見積は各社の想定で書かれるため、金額も粒度もばらばらになり、比較のしようがありません。

要件定義は本記事の最重要パートなので、次章で項目リストごと展開します。
制作会社の選定については、相見積を社内ルールにしている企業が多いこと、要件がそろっていれば提案の質を比較できるようになることを、この段階では押さえておけば十分です。

ステップ5〜6 設計・制作

設計の段階では、制作会社がサイト構成やワイヤーフレーム(各ページの設計図)を作ります。ここで発注者側に発生するのが、既存ページの取捨選択という、リニューアル固有の揉めやすい判断です。
どのページを残し、どれを統合・削除するか。この判断は制作会社には代行できず、社内の合意が必要になります。

あわせて「今のサイトに無いページ」の棚卸しもこの段階で行います。
導入事例、料金の目安、FAQ、ダウンロード資料など、BtoBの検討過程で見られるページが今のサイトに無いなら、新設の候補として名前を挙げておきます。

ステップ7〜8 公開・運用

公開は「終わり」ではなく、検索評価と計測を旧サイトから引き継ぐ工程です。
ここではURLの引き継ぎと計測の移行という、順位とデータを守るための作業が集中します。

公開後の運用は、まず作業レベルで固めます。
(1)お知らせ・導入事例の追加、(2)計測数値の月次確認、(3)フォームの動作確認、(4)問い合わせへの対応。

この4つが最低限の運用です。これを誰が担うかまで決めて、リニューアルのプロジェクトは一区切りです。

要件定義とRFP(提案依頼書)の作り方
「ご要望をお聞かせください」に答えるために

8ステップの中で、社内が最初に詰まるのが要件定義です。
ここを固めれば、「ご要望をお聞かせください」という制作会社の問いに、そのまま答えられるようになります。

要件定義とは 制作会社に頼む前に社内で決めること

要件定義とは、何のために・何を・どこまで作るかを、制作会社に頼む前に社内で決めることです。かしこまった言葉に見えますが、中身は「社内の宿題を先に済ませること」に尽きます。

見積依頼とは別物です。見積依頼は金額を聞く行為であり、要件定義は前提を決める行為です。要件のない見積依頼に対して、制作会社は自社の想定で見積を書くしかありません。
3社に依頼して金額が大きくばらついたときは、各社の技量の差ではなく、渡した前提がそろっていないことを疑ってください。
先に社内で要件を固めることが、「制作会社の言い値で決まってしまう」という不安への何よりの備えになります。

  項目 記載内容 情報の保有部門
1 会社概要と事業内容 主要な製品・サービス、顧客層 経営企画・広報
2 リニューアルの背景・目的 診断結果と、成果の言葉で書いた目的 Web担当(役員と合意)
3 KPI 問い合わせ・資料請求の目標と測り方 Web担当・営業
4 現状の課題と数字 GA4の3つの数字、CVポイントの数 Web担当
5 対象範囲 全面か部分か、対象とするページの範囲 Web担当(診断結果)
6 必須ページ・コンテンツ 残すページと、新設したいページの候補 各部門
7 技術要件 CMS、サーバー、セキュリティ、既存システム連携、移行対象データ 情報システム部門
8 公開後の運用条件 誰が・何を・どの頻度で更新するか Web担当・広報
9 体制と役割分担 社内の窓口と、各情報の持ち主 Web担当
10 スケジュール 希望公開時期と、その根拠(予算期・サポート期限) Web担当・役員
11 予算枠と見積に含めてほしい項目 予算の上限と、移行・リダイレクトなどを見積に含める指定 役員・Web担当

全部埋まらなくても構いません。埋まらない箇所が、そのまま「社内で決めるべき残タスク」の一覧になります。

CMSへの要求は運用要件から決める

技術要件の中でも迷いやすいCMS(サイトの更新システム)は、製品名から入らないでください。
WordPressのような具体的な製品の比較は、要件が決まってからで間に合います。

先に決めるのは運用の要件4点です。(1)誰が更新するのか、(2)どのくらいの頻度か、(3)何を更新するのか(お知らせだけか、事例やコラムもか)、(4)誰に編集権限を出すのか。

たとえば更新が月1回のお知らせだけで担当も広報の1名なら、高機能なCMSは過剰です。逆に複数部門で事例やコラムを増やしていくなら、権限管理や承認の仕組みが要件になります。
サポート終了をきっかけに検討している場合も、「同じCMSで作り直すか」はこの4点で判断できます。

社内合意のつくり方
4つの「情報オーナー」を先に押さえる

RFPを書こうとすると、必要な情報が自分の手元にないことに気づきます。
会社概要は広報、サーバーは情シス、事例は営業。サイトの話が社内で進まない原因は、多くの場合、制作会社ではなくここにあります。

役員・営業・情シス・経営企画/広報 関心事はバラバラという前提に立つ

コーポレートサイトには、関心事の異なる4者が関わっています。

役員・社長 投資対効果を見ます。
「それでいくら儲かるのか」が最初の問いです。
営業部門 商談で使えるかを見ます。
一方で、価格や事例の掲載には「顧客に確認が要る」と慎重になることもあります。
情報システム部門 セキュリティ・サーバー・ドメイン・既存システムとの連携を見ます。
リニューアルは既存環境の移行が絡むため、新規制作より情シスの関与が深くなります。
経営企画・広報 会社概要・沿革・IR情報の正確さを見ます。
会社の顔としてのサイトに所有者意識を持つのもこの部門です。

4者は同じサイトの別の面を見ているのですから、関心事が食い違うのは自然なことです。
問題はズレそのものではなく、ズレたまま進めることにあります。
逆に、全員の要望をすべて聞いて盛り込むと、今度はページ数と予算が膨らみ続けます。だからこそ、聞く順番と決め方を先に設計します。

誰に何を確認するか 情報オーナーの一覧

確認の相手と項目を一覧にしました。上から順に押さえていけば、後から「聞いていない」で止まることを防げます。

相手 確認すること タイミング
役員 目的の合意、予算枠、最終決定者の指名 最初
営業部門 導入事例・価格掲載の可否、顧客の声、商談で困っていること 要件定義の前半
情報システム部門 ドメイン・サーバー契約、SSL・セキュリティ要件、既存システム連携、移行対象データ 要件定義の前半
経営企画・広報 会社概要・沿革・役員情報・IR・プレスリリースの扱い 要件定義の後半
役員(再度) 診断結果と要件の承認 RFP完成前

順番のポイントは、最初と最後が役員であることです。
最初に目的と「最終的に誰が決めるか」を握っておくと、途中で意見が衝突したときに裁く場所ができます。

そのページは残してにどう線を引くか

一覧の中で最も揉めるのが、既存ページの残す・捨てるの判断です。
取捨選択を始めると、「そのページは残してほしい」という声が各部署から上がります。社長の思い入れがある長文の挨拶ページをどうするか、といった判断に迷う場面も出てきます。

8step3

感情の綱引きにしないために、判断軸を2つに絞ります。アクセス数(GA4で見る)と、商談への貢献(営業の実感・問い合わせの経路)です。両方が高いページは残して磨き、どちらか一方が高いページは直して活かし、両方とも低いページは統合・削除の候補にします。削除するページのURLの扱いは公開前の作業に関わるため、候補の一覧は捨てずに残しておいてください。

そして、この線引きを最終的に決める人を、事前に役員に指名してもらいます。
判断軸と最終決定者。この2つがあれば、「残せ」の応酬は議論に変わります。

役員への説明の型

8step4

社内合意の最後の関門は役員への説明です。「で、いくら儲かるの?」に正面から答えようとして、根拠のない数字を約束する必要はありません。話す順番の型を持てば足ります。

1 2 3 4
自己診断の結果なぜ手を入れる必要があるのか 現状の数字GA4の3点 自己診断の結果部分改修と比較したうえでの結論と理由 費用の枠と、稟議に向けた残タスク

「なぜ今か」には、序文で挙げた総務省の調査のような外部データと、サポート終了などの期限が使えます。
「前回と同じにならないのか」には、目的とKPI、公開後に数字を見る担当が決まっていることを示します。
前回との違いを説明できるのは、作り直す前に決めごとを済ませた場合だけです。

リニューアルならではの追加費用
見積で確認したい4つの項目

役員への説明でまず聞かれる費用について、この記事ではリニューアルだからこそ発生する費用に絞って整理します。

新規制作には無い4つの費用項目

既存サイトがあるからこそ発生する費用が4つあります。
いずれも見積に入っていないと、後から追加請求や社内の追加作業として表面化します。

項目 なぜ発生するか 見積で確認すること
既存コンテンツの棚卸し 全ページを一覧化し、残す・捨てるを整理する工数 棚卸しの作業がどちらの担当か、費用に含まれるか
データ移行 記事・事例・PDFなどを新サイトへ移し替える 移行対象の範囲と件数、件数が増えた場合の扱い
301リダイレクトの設定 旧URLから新URLへの転送設定 設定の範囲(全ページか主要ページか)と担当
並行運用 旧サイトを公開したまま新サイトを作る期間の二重コスト サーバー・保守が二重になる期間はいつからいつまでか

見積書にこれらの行が見当たらない場合、「含まれている」のか「自社の作業になる」のかを発注前に確認してください。
確認を怠ると、公開直前の追加請求や、稟議のやり直しにつながります。

なお、公開後もサーバー・保守などの費用は毎年かかり続けます。年間コストの考え方も、上記の費用相場の記事で扱っています。

稟議の前に洗い出しておく情報

稟議で聞かれることは、おおむね決まっています。次の5点を洗い出しておけば、その場で答えに詰まる場面を減らせます。

現状の数字と診断結果(なぜやるのか)
選んだ選択肢と理由(なぜ全面か、なぜ部分改修か)
概算の費用枠(相見積で確定させる前提で、追加費用4項目込みかどうか)
スケジュール(予算期との整合)
公開後の運用と担当(前回と同じにならない根拠)

投資回収の計算の仕方や稟議書の書き方そのものは、費用相場の記事で扱う範囲です。
ここでは「何を用意すれば、聞かれたときに答えられるか」まで押さえておけば十分です。

公開前後のSEO対策
検索順位とアクセスを落とさないために

最後の関門が公開です。サイトリニューアルで検索順位やアクセスが落ちるのではないか。
これは、リニューアルを検討する多くの担当者が抱える不安です。結論から言えば、順位が落ちるかどうかは運ではありません。
URL変更の処理と計測の引き継ぎを正しく行ったかどうかに大きく左右されます。

なぜリニューアルで検索順位・アクセスが落ちるのか

落ちる原因は主に3つです。

1 URLが変わったのに転送設定が無いことです。ページのURLが変わると、旧URLに蓄積された検索エンジンからの評価や、外部サイトから張られたリンクが新URLに引き継がれません。
なお、SEO(検索エンジン最適化)の仕組みそのものは本記事では扱いません。「SEOの仕組みと、検索順位が決まる仕組み」は別記事で解説しています。> SEOとは
2 サイトの構造や内容が変わることで、検索エンジンの評価が再計算されることです。
この場合、一時的な順位の変動は起こりえます。
3 計測タグ(GA4)の移行漏れです。
これは順位そのものではなく、「落ちたかどうかすら分からない」状態を招きます。

裏を返せば、3つとも防げる原因です。
Google検索セントラルの「URLの変更を伴うサイト移転」に関する公式ドキュメント(2026年8月参照)でも、301リダイレクトなどの恒久的なリダイレクトを正しく設定すれば、ページの評価が失われることはないと明言されています。

公開前にやること URL設計と301リダイレクトの準備

公開前の準備は3つです。いずれも制作会社任せにせず、発注者側が完了を確認します。

新旧URL対応表を作ります。旧サイトの全ページについて、新サイトでの行き先を一覧にしたものです。棚卸しで削除・統合と決めたページも、「どこに転送するか」を必ず決めます。 301リダイレクト(旧URLから新URLへの恒久的な転送設定)の方針を決めます。前述のGoogleのドキュメントでは、リダイレクトを少なくとも1年以上維持することが推奨されています。公開時だけ設定して早々に外す運用では不十分だということです。 計測の引き継ぎです。GA4とGoogle Search Console(検索での表示状況を確認するツール)の管理権限が自社にあるか、新サイトに計測タグを入れる計画になっているかを確認します。

なお、そもそもURLをなるべく変えない設計にすることが、最も安全な選択です。設計の段階で、制作会社に「URLを変えない前提にできないか」を先に聞いてみてください。

公開直後と1ヶ月後にやること

公開したら、時期を分けて確認します。

公開直後に確認すること 主要ページで旧URLにアクセスし、新URLへ転送されるか確かめる
Search Consoleで404(リンク切れ)などのエラーを確認する
GA4の計測が動いているか確認する
サイトマップ(検索エンジンに伝えるページ一覧)を送信する
公開1ヶ月後に確認すること 検索流入と主要キーワードの順位の推移を確認する
404の追加検出と対応
フォームの到達確認と問い合わせ件数の確認

公開直後に順位が多少動くこと自体は、評価の再計算に伴う一時的な変動の可能性があります。
私たちの支援経験では、数週間程度は推移を見てよいと考えていますが、下がったまま戻る気配がない場合は、リダイレクトの漏れを疑って対応表と突き合わせてください。

制作会社に確認すべき移行項目リスト

ここまでの移行作業を誰がやるのかは、契約によって異なります。発注前に、次の項目が見積と工程に含まれているかを制作会社に確認してください。
含まれていない項目は、自社の作業になります。

確認項目 確認する内容
新旧URL対応表 作成の担当はどちらか
301リダイレクト 設定の範囲・維持期間と担当
計測タグ GA4などの移行が工程に入っているか
Search Console サイトマップ送信などの初期対応を行うか
meta情報 各ページのタイトル・説明文を引き継ぐ方針か
公開後の動作確認 何を・いつ確認するプロセスか
モニタリング 公開後の観測期間と報告の有無
切り戻し トラブル時に旧サイトへ戻す手順があるか

このリストは、RFPの「見積に含めてほしい項目」とセットで使えます。
発注前に確認しておけば、公開間際になって「それは対応範囲外です」と判明する事態を避けられます。

コーポレートサイトリニューアルに関する
よくある質問

Q1.コーポレートサイトは何年ごとにリニューアルすべきですか?

年数だけでは決まりません。
一般に、公開から年数が経つほどスマートフォン対応やCMSのサポートなど技術面の限界は来やすくなりますが、判断は経過年数ではなく、本文の自己診断チェックリストのようにサイトの状態と課題で行うことをおすすめします。

Q2.ドメインは変えないほうがよいですか?

特別な理由がなければ、変えないことをおすすめします。
ドメインを変えると、URLの引き継ぎに加えてドメイン自体の評価の引き継ぎも必要になり、作業とリスクが増えます。
社名変更などで変える場合は、その旨をRFPに明記し、移行対応を見積に含めてもらってください。

Q3.リニューアル中、今のサイトはどうなりますか?

ホームページのリニューアルでは通常、旧サイトを公開したまま並行して新サイトを構築します。
旧サイトが見られなくなる期間は基本的にありませんが、並行期間中はサーバーなどの二重コストが発生します(本文の追加費用の章を参照してください)

まとめ
リニューアルの成否は、作り直す前に
社内で何を決めたかで決まる

コーポレートサイトのリニューアルについて、作り直すか部分改修かの判断から、進め方の8ステップ、要件定義とRFP、社内合意のつくり方、追加費用、公開前後のSEO対策までを解説しました。

1 自己診断チェックリスト(全面か部分改修かの判断)
2 FPの項目リスト(制作会社に渡す前の社内整理)
3 情報オーナーの一覧(誰に何を確認するか)
4 移行の確認リスト(公開前後に順位とデータを守る)

リニューアルの成否は、作り直したかどうかではなく、作り直す前に社内で何を決めたかで決まります。デザインが新しくなること自体は、成果を生みません。

最初の一歩はシンプルです。まずGA4を開いて、先月いちばん見られたページを確認してください。
そこから診断、情報オーナーの書き出し、RFPの作成へと順に進めば、制作会社に「ご要望をお聞かせください」と言われても、もう困らないはずです。

ただし、全面か部分改修かの線引きは、今のサイトの状態と社内の体制によって変わります。
チェックリストで決めきれない場合は、外部の視点を入れて判断を整理するのも一つの方法です。

リニューアルを決める前に、判断の壁打ちをしませんか

全面的に作り直すべきか、部分改修で足りるのかは、今のサイトの状態と社内の体制によって変わります。
ビズブーストは、集客から成約までを一貫して支援する立場から、「作り直さない」選択肢も含めて、発注前の判断材料を一緒に整理します。

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著者情報 高尾 将寛(たかお まさひろ)

ビズブースト株式会社 クリエイティブディレクター
転職や自動車業界を中心にWEB・広告施策に従事。ビジュアル制作から訴求文言、中長期の成果改善まで幅広く手掛けるマルチ媒体対応のディレクター。新規ビジネスの代表取締役としてサービスを黒字化させた経験を持つ。看護師転職事業や郵便アプリなど「0から創り出す新規事業」の立ち上げ実績も多数。現在はビズブーストにて、制作・プランニング・ディレクションの多角的な視点を活かして活躍中。